今しておきたいベーシックインカムの話(期待編)~想定されるメリット
暮らし◀過去の記事:今しておきたいベーシックインカムの話(基礎編)~用語の基礎・年金や生活保護との違い
全国民に無条件で一定額を支給するのが特徴とされる「ベーシックインカム」。この単語が時々挙がるのは、導入によってもたらされるであろう恩恵への期待があるからです。一方、現状は実験止まりで本格的な導入は行われていない為、実際にどのような効果があるのかは未知数です。それゆえに懸念事項も山ほどあります。
暴力的な言い方をすれば、メリットもデメリットも予想に過ぎません。しかし、既存の社会保障をすべて廃して成り代わるのがベーシックインカム導入の前提となっている以上、実行はどうしても賭けになってしまいます。予想を止めることは出来ませんし、先んじて実験を行ったフィンランド政府などのデータは貴重にして偉大です。
膨大な予想図の中から、今回はベーシックインカムに対する期待や楽観的な評価を中心に集めてみたいと思います。あくまで予想に過ぎませんが。
生存権が“平等に”保障される
最大のメリットとして期待されるのは「とりあえず飢え死にしない」という点でしょう。具体的な額はともかく人間ひとりが最低限生きていけるぐらいの金額は支給される構想があり、生活苦による犯罪の抑制が期待されています。(ホームレスの住居など生活拠点をどうするかの問題はありますが、ここでは考慮しないことにします。)
また、ベーシックインカムの特徴である「無差別かつ平等な支給」にも注目です。例えば生活保護の受給には羞恥心や罪悪感を抱かせるような風潮がありますが、ベーシックインカムは誰にでも支給されるイーブンな状態なので、貰う事への負い目を感じにくくなるとされています。学生には奨学金の上位互換となり、新生児にも支給されることで出生率も上がる等、申請も審査もいらない平等な支給には多大な期待が寄せられています。夢とも言います。
セーフティネットがより強く生まれ変わる
生存できるほどの金額が全国民へあまねく無条件で支給されるため、セーフティネットがより強力で漏れも少なく生まれ変わるという期待もあります。転じて、起業したり芸術家を目指したりするのがリスキーな選択ではなくなります。売れなくても生活は出来るからですね。額は全国で一律なので、地方出身者が故郷に住み続けることも可能になるかもしれません。
ベーシックインカム導入によって既存の社会保障に関する業務が失われると大量の失職者が出るでしょう。それを強固なセーフティネットでカバーしようとするわけです。もちろん転職活動も気軽に行えますし、就職活動に苦戦していても余裕は残されるでしょう。楽観的な予測に過ぎませんが。
仕事や雇用にまつわる問題が解消する
仕事や雇用のスタイルに大きな変化を与えるという予測もあり、ベーシックインカムと雇用体制の因果関係には注目が集まっています。特に期待されているのがブラック企業の矯正で、「条件は悪いが生活のため仕方なく」という社員が条件の悪い企業に勤める理由を消失することで解放されるという筋書きです。
ワークシェアリングと組み合わせれば正規と非正規の格差が縮まるだけでなく、企業側にとっても無茶な雇用継続をしなくて済むメリットがあり、雇用の流動性が高まっていくとも予想されています。業務の無駄が大幅に削減されることで余暇の充実も狙えることでしょう。楽観的な予測ですが。
予想されるデメリットもまた多い
主に生存権・雇用体制・セーフティネットの面でベーシックインカムは良い効果をもたらすであろうと期待されています。しかし、社会保障とのすげ替えや前例のなさ、何よりほとんど賭けといってもいいブラックボックスであることから多くの不安や懸念も噴出しています。
今回はベーシックインカムについて楽観的な予測を紹介しましたが、次回は逆に悲観的な予測を取り上げます。社会保障の構造を根本的に作り変えてしまう分、懸念される事項は非常に多いです。
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参考文献
ベーシックインカム - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org
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