相談件数激増?「こもりびと」とは
暮らし「引きこもり」のイメージはどんなものですか?ポジティブ?ネガティブ?
世間が言葉に預けている価値評価はメディア等の報道が大きな影響を与えます。ネガティブなレッテルを張られた「引きこもり」当事者はやたらめったに表に出てくることはないでしょう。「8050問題」や老々介護等、社会から孤立する前に公的機関は何ができるのでしょう。神奈川県の自治体が一風変わった切り口から支援の道を拓きました。
「こもりびと」とは
以前から「引きこもり」という名称は社会不適合者・犯罪者予備軍のレッテルとして、言われない偏見に繋がるとの批判があり、イメージを変えるポジティブな名称に変えたいという議論がありました。2019年10月から、 神奈川県大和市は、「引きこもり(籠り)」を「こもりびと」という名称に変更し相談窓口を設けたところ、一ヶ月で28件の相談がありました。
11月現在、大和市の相談窓口には22件、電話相談は17件と順調に増えてきています。相談者は親が一番多く、次いで本人、兄弟姉妹や親族などです。相談者からは「(引きこもりかわからなかったので)こういう窓口があって良かった」「(どこへ相談していいかわからなかったから)話を聞いてくれるだけでもうれしい」 などと声が上がっています。
大和市では、折角繋がった相談者をきちんと支援できるよう
・生活困窮者自立支援窓口
・精神保健福祉センター
・サポートステーション等の就労支援
・介護(デイケア)などを行う地域包括支援センター
などを用意し、本人の希望に寄り添う様々な支援につなげています。
名称変更の転機
5月末に起こった川崎の通り魔事件、その後の一連の事件以降、各報道機関による関心の高まりを受け、市議会において「引きこもり」に関する質問が相次ぎました。また、内閣府が公表した実態調査の結果から、全国で推計61万3000人の中高年者が「引きこもり状態」にあると判明しました。これらを受けて、渦中にいる当事者やその家族が抱える課題に対応する必要がありました。
大和市の行動
「引きこもり」という名称だとネガティブなイメージに捉える人も少なからずいます。前述のように「ひきこもり」と呼ばれる人が事件を起こすたびに、よりマイナスイメージが固着、強化されていきます。そこで「一人の人」として寄り添いたい思いを込め、温かみを感じる「こもりびと」という名称を市長である大木哲(おおき さとる)が命名しました。その後「引きこもり」の相談窓口改め「こもりびと支援」窓口を開設しました。
所感
筆者はこのニュースを目にしたときにこれも一つのリフレーミング(※1)だなと感じました。自己評価は存外大事なもので、ネガティブな評価によって決定されたくないという気持ちを生みます。また自己評価に込められた意味は世間が言葉に預けているイメージに左右されるのも問題です。そのイメージを改めるより、新しい言葉をリセットするのは前向きな試みだと思います。
(※1)リフレーミングとは、とある出来事や事物を今の見方とは違った見方をすることにより、それらの意味を変化させ、感情や内心を変えることです。例えば、業務でミスをした際に「なんてことをしてしまったんだ」と責めるのではなく、「今回はミスをしてしまったけども、次に活かせる経験ができた」とみるかで、気持ちが変わります。これは心理療法、大学の講義などでも活用されています。
参考文献
【神奈川県大和市HP-こもりびと支援窓口-】
http://www.city.yamato.lg.jp/index.html
【朝日新聞DIGITAL-神奈川)「こもりびと」に寄り添う 大和市が相談窓口-】
https://www.asahi.com/?iref=com_gnavi_top
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