ショコラ事業とレストラン事業で障害者就労を支える!クロフーディング&FUKUROの黒岩功代表にインタビューしました
暮らし 仕事多機能型障害者就労支援施設「ル・クロラボ(京都市下京区:B型)」と「バリューラボFUKURO(大阪市中央区:移行+A型)」は、プロのフレンチ料理人が監修する本格的な手作りチョコレート菓子とレストランを中心とした事業を行っています。両事業所の経営にあたる黒岩功代表にインタビューを行いました。
両事業所の経営にあたる、株式会社クロフーディングの黒岩功代表は、フランスの三ツ星レストランで修業を積んだフレンチ料理人という立場から福祉事業を立ち上げた異色の経歴を持っています。周りの同業者に不思議がられながらも福祉事業所を始めたのは、障害者の雇用促進と賃金向上を自分たちから体現しようとする思いからでした。そんな黒岩代表にインタビューを伺う機会が得られましたので、今回お伝えします。
工夫したこと、苦労したこと
──今までやってきた福祉事業で苦労したことはありますか?
最初に立ち上げた頃は、スタッフは勿論サビ管も高齢者介護の出身だったため皆が障害者福祉について未経験でした。色々ゼロからスタートする中で土台作りをしたのですが、詳しい方や機関が教えてくださいました。
──接客にあたって工夫したことはありますか?
お客様と直接対面するにあたって、どの辺りに入って何をお願いするかは今でも気を配っています。オーダーひとつとりましてもお願いする部分やシェフに伝える部分などを一人ひとり見ていって、ドカンと負荷がかかることのないよう調整しています。もちろんロールプレイでの練習なども行っておりますが、実際にお客様と接する部分は調整して、成功体験を積み上げられる環境作りに努めております。
※:以上は黒岩代表が到着されるまでの間に、小山田マネージャーへ質問した内容になります。
就労支援とは人材育成、人材育成には広い視野を
──力を入れている部分や伸ばしたり発展させたりしたい部分はありますか。
飲食から初めて福祉に入ったのですが、両者は経営スキーム(計画や仕組み)が全然違っており、福祉では損益決算書に反映されない価値も存在します。経営面では利益を出して存続させていくもので、福祉事業所においてもそれは変わらない筈なのですが、ボランティア精神で利益を求めずにいると行き詰まってしまいます。
まず事業経営から始め、その中に福祉を取り入れていくというスタイルです。自分たちがその証明役になれたらいいなと思っています。
東京に比べると大阪の福祉は意外と能動性に欠け、遅れが生じています。遅れが広がる前に大阪発を自分たちから発信していき、関西中に広げていくのが目標です。
──配慮しつつも個人目標を掲げるなどをしている感じですか。モチベーション管理など……
その時出来なかったことが将来できるように目標として設定することはあります。モチベーション管理については働く場所と思ってもらう環境づくりと共通、つまり自分が成長できることと「こうなりたい、ああなりたい」の見通しが現場にあることが大事だと考えています。
例えば、スタッフが成功体験によって「出来るんだ」と思ってくれることですね。こうして働くこと自体に憧れるスタッフは自立性も上がっていき、比例して売り上げの貢献度も上がっていきます。モチベーションなど数字に見えない要素ですね。
福祉事業の根底には人材育成があると思っておりまして、一人ひとりを見ず職務として一緒くたに淡々と決めていくのは不十分と感じています。福祉でやっている以上支援員から「昨晩夜更かししていて眠い」など様々な情報が挙がってくるので、その背景に興味を示すことが重要です。業務さえ回ればいいという態度では長期雇用に堪え得る人材に育ちません。様々なことに関心を持つ寛容性が人材育成に繋がるのです。
商品の売れる事業所となるには
──上手くいく事業所とそうでない事業所の二極化についてどう思われますか。
社会福祉法人ならよほど悪い商売でない限り機能しますが、株式会社や一般社団法人だと確実に事業として回ることが求められ、その中で収益を残していくイメージが必要ではないかと思います。「こうすれば利益が上がる」というイメージを持たず日々漠然と過ごしていては事業としては立ち行かないでしょう。
事業所の経営はすぐには改善されませんし、事業内容やA型B型などでアドバイスも違ってきます。ただ、「この事業で経営が成り立つ」という仕組みを先に持ってから福祉を入れていく流れは大切です。主力商品ができてから、そこに福祉で出来ることを入れていくような感じです。
売り込む際も「これを作りました、買ってください」ではなく、売らせてもらう相手の望みに合わせて商品を作る柔軟な姿勢が不可欠です。福祉事業が良く考える「その子の時間のために」というよりも、売り場を貸してくださる相手に主導権を持たせたほうが結果的にはよく売れます。
──どうしても上から「障害者の作った商品だぞ、買え」という態度になりがちですが、それでは上手くいかないということですね。
そうですね。最近は福祉事業所にプロのアドバイザーや職人が入って販売も変わってきており、市場形態も変わっていくのではないかと予想しています。プロが販売に協力するだけでも販売環境は大きく変わるのですが、民間だけではどうしても限界がありますので、行政による「官」ならではの支援も求められてくるのでしょう。そうした連携が広がっていけば事業所の商売は広がっていくはずです。
黒岩代表ならびに小山田マネージャー、インタビューにお答えいただきありがとうございました。
株式会社クロフーディング・一般社団法人FUKURO
http://www.fooding.co.jp
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