就労移行支援、根強い「アンチ」とその言い分

暮らし 仕事

unsplash-logo Dylan Mullins

Twitter上で就労移行支援について恨み言や陰謀論ばかり吐いているアカウントを見たことがあります。移行支援は2年間という期限がありますので、就職が決まらずに「拗らせて」しまった人かと思っていました。(もし違っていたらすみません。)

言っていることの是非は兎も角、移行支援でも就職できず継続支援B型に移される痛みには一定の理解を示すことが出来ます。2年の期間を使い果たした以上、その人が持つ「移行支援は悪だ!」という固定観念は覆らないでしょう。しかし、その主張は往々にして客観的な間違いを孕んでいるものです。

私とてB型事業所に対し「就労に結びつかないなら辞めてしまえばいい」という考えを持っておりますが、工賃や作業内容などで凡百の作業所に差をつけている“ごく一部の”存在は否定していませんし信用しています。ただ、「移行支援アンチ」は就職した利用者の多い大手にすらも「悪の手先」と言わんばかりに噛みついているのです。

アンチの言い分

就労移行支援を「無意味」と言い切る人たちが根拠として挙げているのは、主に「僕が就職できなかった」「訓練のレベルが低い」「職員の質が悪い」といった点です。

まず職員の質についてです。移行支援の利用者は精神障害が身体や知的と比べ多い傾向があるようですが、職員は必ずしも福祉や精神医学など専門分野からの出身ばかりではありません。作業療法士など専門の資格を持つ職員が働く施設は現実に存在(そうでない施設に比べ就労率は高い)するのですが、大抵は障害からくる困りごとなどは自力で折り合いをつけるよう求められます。「汲み取ってもらえる」「察してもらえる」という受け身の態度では、仮に移行支援が無期限であろうとも就職に結びつくことは無いと思います。

つぎに訓練の内容です。初歩的なビジネスマナーや手先を使う軽作業の訓練がよく採用されており、特に社会人経験のある利用者から不満を抱かれることが多いです。そもそも事業所に通う人の障害程度や社会経験などは様々で、せめて平日は休まず通所する生活リズム形成が第一目標となっているので、人によっては物足りないプログラムが組まれています。また、事業所によっては利用者の経験値次第で比較的早く実習や求職へ進める所もあります。要するに「短気は損気」ということです。

あとは国からの補助金があるということで「金儲け目的だ!」と言われることもあります。しかし、就労移行支援事業所への補助金は、「国や自治体がサービスの料金を肩代わりしている」という意味合いのほうが強いです。しかも実績について厳しく精査されているので、ほとんどの事業所は真面目に仕事をしています。ちなみに、利用者に自己負担額が発生するのは利用者の家族の収入が一定以上の場合だけです。

悪いのは利用者か事業所か時期か

移行支援に対する否定的な声で代表的なのは、「通っても就職できない」すなわち就職に結びつかなかったことです。確かに就労移行支援事業所全体で一般企業への就労率は約22.4%というデータがあり、お世辞にも高い数字とは言えません。しかし継続支援A型では4%台、B型は1%台と更に低く、支援学校から一般企業への就職すらも3割弱なので、障害者の就労そのものが滞っているといった方が正しいかもしれません。

移行支援に最大3年通っても就職できない原因は何でしょう。確かに粗悪な事業所は利用者を施設に繋ぎ止めようとするでしょう。そうした事業所は、毎日通所出来て企業実習も行ける利用者にすら「就活はまだ早い」と止めてくるそうです。国からの評価基準には就職できた利用者の数も含まれますが、それでも悪辣な所は今いる利用者の2年を食い尽くすことを優先します。

(ただし、通所が不安定だったり遅刻早退が多かったり等の理由で止められる場合は、本気で就活には早いと判断されています。拙速に進めるよりも日々の通所を安定させるべきです。)

真剣な事業所へ安定して通い企業実習を受けたとしても、就活の段階で行き詰まり期限を迎えてしまう利用者さえ存在します。時期・世相・経済状況によっては2年でも足りなくなるかもしれません。

事業所や採用側の他にも、利用者側に就活失敗の原因が潜んでいることもあります。就労移行支援とは就労し職場に定着する力を養うためのサービスであり、職業を斡旋してくれる場所ではありません。つまり、自分から行動することが大前提であり、受け身の姿勢で職が決まる筈がないのです。

例えば、就活前に障害者として求める配慮事項を絞り込むよう言われることがあるかと思います。(無ければごめんなさい。)これは、企業に合理的配慮が求められているとはいえ配慮できることには限界があるためです。あれもこれも配慮して欲しいという態度ではまず採用されないでしょう。

「障害者だから入れてもらえるだろう」「障害者だから全部配慮しろ」などという甘い見通しでは絶対に就労へは結びつきません。そもそも、そのような態度では何のサービスを受けてもいい結果は出ないと思います。

実績ある大手にも噛みつく

移行支援アンチの心中を考察するには限界があります。なぜならば、実績も明確な支援計画もある大手の就労移行支援事業所にすら陰謀論などの悪口を書き連ねるアカウントが世の中にはあるからです。あのレベルになると、もはや考察の余地はありません。例えば「俺は○○事業所の△△に騙された!」とかです。

精神・発達障害の当事者としてはあまり認めたくないのですが、精神疾患でマイナス思考になりやすい利用者が、嬉しかったことはすぐ忘れて不満だけ覚えていったからアンチ意見が書き込まれていったのではないかとも考えております。寛解して就労支援を受けたら疲弊してぶり返したというケースもあり得るでしょう。

結局悪口を言う当人の事情など知りようがありません。しかし、根も葉もない悪口や陰謀論に対しては反論の余地が十分にあります。事業所がピンキリであることは覆しようのない事実ですが。

参考サイト

就労移行支援サポートの利用は意味ないという声は本当?|就労移行支援事業所チャレンジド・アソウ
https://challenged.ahc-net.co.jp

就労移行支援を利用して就職できない原因は、利用者か?それとも事業所か?|病弱男子
https://tou-tou-tou.com

【なぜ?】就労移行支援で就職できない人、原因を元就労移行スタッフが考える|就労移行案内所
https://job-link.tokyo

約3割が「就労率0%」の衝撃 障がい者就労移行支援施設の現実 アーネストキャリア 水野聰氏に聞く|ビジネス+IT
https://www.sbbit.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

その他の障害・病気

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

最近見た施設

閲覧履歴がありません。

TOP

しばらくお待ちください