オンライン授業が与える学生への影響~ADHDである私の視点から
暮らし出典:Photo by Annie Spratt on Unsplash
新型コロナウィルスの影響によりオンライン授業が増えました。ADHDである私の視点から、教育面や生活面におけるメリットやデメリット、その対処法について考えていきます。
教育面におけるメリット
まずメリットとして挙げられるのは、オンラインという環境により落ち着いて授業を受けることができる点です。学校で受ける授業の風景というものは、自分の座席の周りに同級生がいたり、他の学年やクラスの声や音といったいわゆる環境音が溢れています。それが時折ストレスになっていて集中できなかったこともあります。オンライン授業では、受ける場所は大抵自宅の自分の部屋になると思います。自分の部屋ならば学校よりも馴染みがあるので、環境音を気にすることなく授業を受けることができます。
教育面におけるデメリット
先ほどのメリットにはデメリットも内包している可能性があります。家で宿題をしていた人なら分かると思いますが、自分の部屋というものは、さまざまな誘惑があります。例えば漫画や本、ゲーム機などがちらついてしまい、集中することができないことがあります。私自身、部屋で宿題をするときは、どうしても本やゲーム機に手を伸ばしてしまいがちでした。
ところで、オンライン授業というものは授業を行う教師によって、授業のスピードが極端に変化します。相手の反応をネットを通じてしか確認することができないため、自分のペースで授業を進めがちになってしまうことは十分にあり得えます。その結果、問題になるのは、質問するタイミングを逃がしてしまいやすくなることです。いつどのタイミングで話しかけるべきか判断できない、話しかけるタイミングを間違ってしまうというのは、ADHDの方によくある傾向です。私自身そうでした。疑問に思ったことをすぐに訊くことができず、オンラインのせいで進みが早いときには、結果として授業についていくことができなくなってしまいます。
生活面におけるデメリット
次は生活面についてです。まず先にデメリットについてですが、起床・就寝時間のズレが発生し、生活リズムが崩れてしまいます。家で過ごす時間が増えますが、家族から「朝からずっとゲームするのは禁止、家でもちゃんと勉強しなさい」と言われるご家庭は多いと思います。それはもちろんごもっともでしょうし、自粛中だからといって勉強を全くしないままですと教養が大変遅れてしまいます。しかしながら当の本人にとっては(私もそうでしたが)、勉強ばかりしていてもつまらなくなって寝てしまい、結果として生活リズムが崩れてしまう可能性があります。
生活面におけるメリット
ですがうまく対処することにより、生活リズムを崩さなければメリットもあります。空いた時間を無理やり勉強に充てるのではなく、違うアクションに充てるのです。例えば親の代わりに昼食や夕食を担当したり、手芸に手を出してみたり、新しいことに挑戦してみたりなど、興味のあっても時間がなくてできなかったことをしてみると、有意義な時間を過ごすことができます。もしかすると新たな才能が開花するかもしれません。ただし、ADHDの方は特に過集中になりやすいため注意が必要ではあります。
デメリットに対してどう向き合えばよいのか
教育面、生活面におけるデメリットは、ADHDの方にとっては非常に深刻なものです。
授業で訊くタイミングを逃してしまったり、授業に追いつけなくなってしまったりする教育面におけるデメリットは、後で先生に質問する時間を設けることで対処することが可能です。分からないことがあった場合は、とりあえずメモをし、授業後に先生に時間を取ってもらいます。これにより、確実に分からないことについて尋ねることができます。先生に時間がなかった場合は親や友達に訊いてみるのもアリでしょう。大事なのはすぐその場で訊かずに後で訊く時間を設けてもらうということです。これは授業に限ったことではなく、どんな場面でも大事です。私も最近はすぐ尋ねるのではなく、後で「今お時間よろしいですか?」と伺ってから尋ねるようにしています。
生活リズムが崩れてしまうデメリットについては、一番大事なのは、起床・就寝時間は必ず守るように心がけることです。しかし朝起きても勉強をしたくないしゲームしかやりたくないと言う人もいることでしょう。ここで注意してほしいのは、「ゲームを禁止して抑え込み、勉強を強いる」ことは絶対と言っていいほどダメです。これは私の体験から言えることですが、禁止と強制は、より強いストレスを与えます。「朝の起床時間を守らせるためにゲームを許可する」ことはゲームをするために起床時間を守ってくれます。ただ、ゲームの開始時間と終了時間は本人が納得するまで話し合い、きちんと認識させることが必要です。しっかり決めないとだらけてしまいますから。
2020年6月3日に公開された文部科学省の発表によると6月1日の時点では、全国の小中学校は99%、高等学校は96%が授業を再開し、全体の44%の学校が短縮授業か分散授業を実施しています。さらにその中でも多くの学校は6月中には全面再開を見込まれています。6月5日には大学に関しても発表されましたが、およそ6割が遠隔授業、つまりオンライン授業を実施しているようです。
オンライン授業を実施しているところはもちろん、今現在、全面再開しているところでも、今後再び外出自粛によりオンライン授業になる可能性もあります。その時、改めて問題に向き合う際にこのコラムが参考になれば幸いです。
参考文献
【文部科学省 新型コロナウイルス感染症に関する学校の再開状況について】
https://www.mext.go.jp
【文部科学省 新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた大学等の授業の実施状況】
https://www.mext.go.jp
その他の障害・病気 注意欠陥多動性障害(ADHD)