薬との付き合い方~服薬する勇気
その他の障害・病気 うつ病 暮らし出典:Photo by National Cancer Institute on Unspl
僕は、この3年間で6回の「うつ」を経験しています。引きこもるぐらいで済むうつもあれば、自傷行為を繰り返し、親に「死なせてくれ」と泣き叫ぶほどの重いうつもありました。僕はうつ病と、それを抑える薬と、うまく付き合うために様々な模索を重ねながら、この3年間を生きてきました。
はじめてのうつ
僕が初めてうつになったのは大学に入って1ヵ月ほど経った頃でした。当時の僕は診断こそされていなかったものの社会不安障害を抱えていました。人と目を合わせることが怖い、大勢の場所に行くと緊張で動悸がする、息苦しくなる。それでもなんとか大学に通っていたころ、「グループになって創作物を作り、それを発表する」という授業がありました。僕はそこで何人もの人と初めて話し、仲良くなりました。
しかし、家に帰った時、ある恐怖心に苛まれたのです。「ああ、どうしよう。明日からは今日話した人たちみんなに、挨拶をして仲良く話さなければいけないんだ…!」当時の僕は、皆に好かれたい、嫌われたくないという思いが強いあまり、苦手な人付き合いを無理に頑張って、家に帰ってへたり込む、そんな日々を過ごしていました。
「ただでさえ、今のコミュニケーションでいっぱいいっぱいなのに、明日からさらに増えるなんて……」次の日から恐怖で学校に行けなくなってしまいまったのです。
毎日のように学校での人付き合いに対する恐怖心とストレスを抱えて過ごしていました。ある日、ついに張り詰めた糸がプツンと切れるような感覚に陥ったのです。「どうせ死ぬのに、なんで人付き合いをしなければならないんだろう。どうせ死ぬのになんで今頑張っているんだろう」何をしてもどうせいつかは死ぬ。という気持ちが完全に僕の生きる気力を奪い去っていきました。
こうして僕はうつ病になり、大学を中退してしまったのです。
薬との付き合い方
それから僕は抗うつ薬、抗不安薬を服薬しながら生活する日々が始まりました。やがて薬は効き始め、うつ病も回復していき、外に出て友達と話せるほど元気になりました。
しかし僕はそこで、「もう大丈夫だ」と思い薬を飲むことを止めてしまいました。あとで調べて分かったことですが、向精神薬は徐々に量を減らしていくものだそうで、急にやめると、「リバウンド効果」といって前の症状以上の苦しみが襲ってくるのです。その苦しみとバイト先でのトラブルがきっかけで、僕はすぐにうつ病を再発してしまいました。
そこからの生活は、薬との付き合い方を手探りで見つけていく時間でした。うつになっては服薬し、回復しては徐々に量を減らす。それでもまたうつ病が再発して、を繰り返す。そんな日々でした。
なかでも辛かったのはお酒と抗うつ薬を一緒に飲んでしまったときです。夜中にそれらを同時に飲んで外に飛び出したら、ふらふらで歩くこともまともに出来ず、何度も転倒する始末。しだいに自分が情けなくなり、路上で「死ね死ね」と泣き叫びながらコンクリートの地面や電柱に血まみれになるまで頭を打ち付けたり、帰るなり家のガラスを頭で打ちつけて割り、終には親に「死なせてください」と泣き叫びました。その時に僕を慰めながらも苦しそうにしていた母親の顔は今でも忘れられません。
そんなこともあり、僕は薬を飲み続けていないと、うつになってしまう。そういう身体になっていました。
薬を飲み続ける決意
それから気付けば、一年以上僕は薬を飲み続ける生活を過ごしていました。おかげで半年以上うつにならない生活です。しかし、薬には副作用があります。顔も当時よりむくみ、体重も10キロ以上増えました。「半年以上安定しているし、そろそろ薬を止めてもいいんじゃないか」そう思っていました。
そんな中、胃炎にかかってしまい、胃腸薬を飲むために向精神薬を服用することが出来なくなりました。しかし、不思議とすぐにうつになる事はありませんでした。それどころか身体が楽に感じるのです。恐らくは、薬の成分が体の中に残っていたためでしょう。僕は、「ついに薬を飲まなくてもいい身体になったんだ!」と思いました。
しかし、そんな時間も長くは続きませんでした。やがて薬の効果が切れ、重いうつがやってきました。しかもコロナの自粛期間と重なったため、友達に直接会って辛いということを相談出来ませんでした。けれど、「今回は薬を使わずにうつを治して見せる!それで薬とはおさらばだ!」と頑なに薬に手を出しませんでした。しかし、うつの症状はどんどん重くなるばかり。次第にベッドからも出られなくなり、昼夜逆転も2周3周し、毎日のように物に当たり散らすようになりました。友達が心配のメッセージをくれても応える元気もなく、心配して家に来てくれたときも玄関まで体を引きづっていっても、結局怖くて出ることもでませんでした。そんな暮らしが2ヵ月続きました。
ついに僕は諦めて、服薬を再開する決意をしました。そこからの回復はあっという間でした。
僕は現段階で薬を飲まないということを「諦め」たのです。この「諦め」は一見ネガティブなイメージがあるかもしれませんが、それによって今僕はとても元気に生活を過ごしています。「諦め」る勇気も時には必要であることを学びました。
おわりに
薬との付き合い方は非常に難しい問題です。できることなら誰もが薬を飲まずに過ごしたいでしょう。しかし、薬を飲まずに苦しい、辛い生活を送るぐらいなら、僕は薬を飲んで安定した精神状態で生活した方がいいと思います。もちろん、飲みすぎるのはよくありません。主治医の方と相談し、今の自分に適した量を服薬し、薬とうまく付き合いながら健全な生活を送ることが大切なのです。僕も、いずれ服薬をしなくて済む生活が送れればと思っています。そのためにも、今はしっかり薬との向き合い方を考えていこうと思っています。
みなさんも、薬と上手な付き合い方を心がけて、人生を大切にしてください。
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