「生きづらさダヨ!全員集合」オンラインイベントレポート①~孤独と孤立の違い
暮らしChoose Life ProjectのYouTubeチャンネルにて8月30日から配信されている「生きづらさダヨ!全員集合」の動画を何回かに分けてレポートしていきます。動画はGet in touch公式ホームページでも視聴できます。
4人のメインスピーカーによる生きづらさ発表を軸とした番組構成となっており、「否定しない」「比較しない」「指導しない」をモットーに100人の一般オーディエンスもZoomを介して参加しています。
「生きづらさダヨ!全員集合」は語り合うことで何かを解決するというものではありません。もしかしたら「モヤモヤ」を持って帰るかもしれませんが、その「モヤモヤ」こそが大切となります。
出演者紹介
100分弱の動画で生きづらさを主題に語ってくれる方々などをご紹介します。
まずメインスピーカーは、ダンサーのDancing Lucky Boy,Soushin想真(そうしん)さん、コラムニストの伊是名夏子さん、日本ダウン症協会理事の水戸川真由美さん、アートディレクターの五十嵐LINDA渉さんの4名です。
そして、進行役をGet in touch代表の東ちづるさん、解説役を臨床心理士のみたらし加奈さんが務めます。手話通訳は森本行雄さんと樋口真弓さんが交代で行っています。
孤独と孤立
生きづらさ発表のトップバッターはダンサーの想真さんです。彼が語るのは「孤独と孤立」についてです。
想真「孤独や孤立について話します。色々な場所へ出向きダンスを披露していましたが、4月のステイホーム期間では『ひとり』を実感しました。自分から連絡することはあっても、連絡が来ることは無いのです。それでもリモート企画への参加を通して『一人だけれども、みな一緒』『よろけても皆で支えていける』『この孤独は良い孤独だ』と実感できました。
5月、6月で元通り外へ出歩くようになると、自分は『戻る所がない』と感じはじめ、これは孤独でなく孤立だなと直感しました。それでも結果的に今は幸せで、ネットで知り合った人と仲良くなったり、リモートレッスンを受けたりと、開かれたドアへ勇気を出して飛び込むような体験に繋がりましたが…」
想真さんは「孤独」と「孤立」を別々のものとして捉えていました。質疑応答が進むにつれ、その想真さんなりの解釈がハッキリと浮かび上がってきます。
みたらし「孤独や孤立について話せる範囲で伺わせて下さい。事情というか、決まった場所に住まない理由は?」(想真さんは定住先がなく、収録時に住んでいたシェアハウスも残り3週間という状態でした)
想真「自分から選んだわけではなく、気付いたらそうなっていたに過ぎません。孤独については、自分はポジティブなものと捉えています。」
東「表現者として孤独は大切というのはわかりますが、生きづらさが伝わらない気もしますけど」
想真「生きづらさと言われても分からなかったので、今思っていることを話そうと思いました。悩んでいるかと言えば違いますし、孤独はいいものです。決まった住居が無いのも悩みの範疇ではありません。ただ『孤立』はよくないです。」
「孤立」が駄目だとハッキリ言いきる想真さん。オーディエンスからも住む場所を心配する声があがりましたが、そちらは解決策や勝算があるのか多く言及はしませんでした。一方、孤立についての解釈はどんどん語られていきます。
孤立とは支援の穴である
想真「孤独にはまだ暖かみがあるので、孤立について話します。世の中多くの支援がありますが、そのいずれにも入れずに孤立する人がいるのです。自分も支援の申請が通らず、知り合いの子ども食堂や配給などで食いつないでいます」
東「同じ命なのに、支援してもらえる人としてもらえない人がいるということですか」
想真「支援の幅を広げてほしいですね。ただ新たな支援を増やすにしても間に異物が入るかもしれないので、既存の支援を広げる方向でいけばいいなと思います」
孤独はただ一人でいるというだけで、時には自分を内省し研ぎ澄ましていくチャンスにもなります。対して孤立は既存の支援や制度からことごとくこぼれ落ちていることを意味し、成長どころかその日の生活さえ危ういです。イメージとしては、一人で山籠もりするのが「孤独」で、その山が土砂崩れで行き来不能になるのが「孤立」です。
例えば、障害者年金ひとつとっても、手帳が3級では厚生年金のみが対象のため就労経験がないと受けられません。3級の障害でも満足に就職できず賃金も安いままです。しかし、今の障害者年金制度では安月給で働く障害者が孤立しています。
みたらし「現在の支援は民間が『自力でやろう』として動いているところが多いですが、想真さんとしては国に求めるものはありますか」
想真「その支援を広げて少しでも多くの人をキャッチしてほしいですね」
想真さんに言わせれば、孤立とはすなわちセーフティネットの不行き届きであり福祉の敗北です。東さんも、同じ命がセーフティネットの条件で、支援してもらえる人と支援してもらえない人が区別されていると指摘しました。そして、人との繋がりがなく居場所がない「孤立」を放置することは、巡り巡って自らの首を絞めることになるのです。
今後も「生き全」のレポートを続けます
今後数回にわたって、こうして「生き全」の動画レビューを続けていくつもりです。想真さんはこの企画に出るのが3回目とのことで、発表を4分間でしっかりまとめられていました。
次に発表するのはコラムニストの伊是名夏子さんです。障害者と健常者の間に作られた溝や、障害者の限界を低く見積もる世間の目が克明に語られています。
▶次の記事:「生きづらさダヨ!全員集合」オンラインイベントレポート②~チャレンジド・ディバイド
参考サイト
「生きづらさダヨ!全員集合」動画アーカイブ
https://www.youtube.com
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