「第2回生きづらさダヨ!全員集合」レポート①プリティ太田編~いじりのさじ加減は対話で解決

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Choose Life ProjectとGet in touchのコラボ企画、「生きづらさだヨ!全員集合」(以下、生き全)が前回好評につき、第2弾が10月22日にYouTubeで配信されました。現在もアーカイブとして視聴できます。

司会進行の東ちづるさんと手話通訳の森本行雄さん・樋口真弓さん以外は全く新しいメンバーとなっています。今回のコメンテーターは時事YouTuberのたかまつななさん、メインで生きづらさを語ってくれるスピーカーはプリティ太田さん・佐藤ひらりさん・小林りょう子さん・磯部弥一良さんの4人です。

最初に語るのは、ミゼットプロレスラー(動画内では小人プロレスラー)兼俳優のプリティ太田さんです。オファーがないことも大変ですが、「いじり」に関して「いじられることが生命線の芸人もいる」という新たな視点を提供してくださいました。

オファーが欲しい

太田「何十年か前までは当たり前のように放送されていた小人プロレスですが、いつの間にか日の目を見なくなりました。いつもそれが疑問で、私としてはもっとメディアに出たいのですが、何かの力が働いているのかオファーがかかりません。
また、最近は女性芸人の間でも『容姿いじり』がタブー視されているようですが、正直『容姿いじりを削ったら何をすればいいの?』と思っておりまして、彼女らが駄目なら自分は何なのだろうと。そこまでテレビの自主規制は厳しいのでしょうか。どうにかオファーが欲しくてSNSで広報はしていますが、賛同する方こそあれ、オファーには結びついておりません。
現役は私含め2人しかおりませんので、どちらかが引退すれば存続しなくなります。アピールが必要なのでそろそろ何か、特に生放送のオファーが欲しいです。アメリカでは低身長症の一流俳優が結構いらっしゃいます。何の力が働いているのか知りませんが、規制尽くしでは何の面白みも無く、業界は先細りして潰れていくでしょう。とりあえず民放でテレビ出演がしたいですね」

プリティ太田さんの切実な訴えは、マイクパフォーマンスもあるプロレスラーらしく迫力があり、オファーの無さに対する危機感は本気です。

「『小人』というのはテレビ業界で自粛用語となっており、『低身長症』『ミゼットプロレス』などと呼ばれております。ただ本人は『小人』を自称しておりますので、そう呼ばせて頂きます。
小人プロレスの選手たちは、プロレス中継やバラエティ番組で昔は放送されておりましたが、『障害者を笑い物にするのか!』というクレームが出たそうですね。しかし彼らは『笑いを取っている』わけで、実際のプロレス中継を見ると非常に面白いんですよ」
太田「全盛期の頃はそうですね。今は2人しかいないので難しいのですが、全盛期では笑いも取れて、前座でなくメインイベントとして扱われていました」
「そのもう一人のレスラーが、ミスター・ブッタマンさんです。ここまでの話を聞いて、ななさんはどう思いました?」

たかまつ「『出せよ!』というのはまさに魂の叫びでしたね。私も不勉強で、そういった興行があるとも知らなかったです。きっと今でも面白いと思います」

東さん主催の公演「月夜のからくりハウス」において、プリティ太田さんはダンプ松本さんと競演されていました。それ以外の興行は残念ながら熱心なプロレスファンでもなければ把握しづらいでしょう。プロレスそのもののマイナーさも原因の一つと言えます。

「海外では小人のプロダクションもありますし、小人の俳優なしにはハリウッド映画も撮れない程です。スター・ウォーズなどでテキパキ動く画を撮るには、小人プロダクションの俳優が必要になってきます。日本でもプリティさん以外に小人の俳優は沢山いらっしゃいますけれども」
たかまつ「正直、一人も思い浮かびません…」
「マメ山田さん、後藤仁美さん、他にもいらっしゃいます。ところで、女性芸人の容姿いじりに関してどう思われますか?」

ここまで色々な人名が出ましたが、彼らについての補足は後ほど触れたいと思います。話題はプリティ太田さんが出したもう一つの問題、「いじり全否定でいいのか」へと移ります。

いじりの加減

たかまつ「容姿いじりの是非について別の機会で話し込んだことはあります。芸人がいじりを受け容れることで『いじってもいいんだ!』という認知を世間に与えるリスクと、容姿いじりを笑いに昇華して救われる人も居るのではないかという希望、どちらの意見も正しくてそこに正解はないと思います。
ただ、何でも駄目だと規制していては“生きづらい”でしょうし、それをメインとする人にとってはテレビの自主規制がそのまま権利の剥奪に繋がるでしょう」
「慣れてない人に対する不安がそうさせるのではないかと思います。小人に限らず車椅子・視覚障害・聴覚障害の役者もいらっしゃいます。以前、全盲の芸人が『R-1ぐらんぷり』で優勝しましたよね」
たかまつ「優勝はしたのですが、その後が全く続かなかったんですよね。とても面白かったのに」
「とても面白いです。『迷ったら笑ってください』というスタンスでね」

R-1ぐらんぷりで優勝した芸人とは「濱田祐太郎」さんのことですが、「慣れてない人に対する不安」からかオファーに恵まれなかったようです。実は所属する吉本興業など関連のYouTubeチャンネルなどに現在進行形で出演されているのですが。

本人と対話をしよう

参加者たちのシンキングタイムを挟み、オーディエンスが話す番となりました。ここで話題はミゼットプロレスへと戻ります。

―低身長症の方がなかなかテレビに出られないとか、障害者の芸人が功績を上げても売れないとか、僕の経験上『偉い人』が決めているのではないかと思います。確かに『偉い人』は当事者の話を聞いて決めたのかもしれませんが、一部の当事者意見が全てだと決めつけてしまって…。
僕も障害者施設に十何年と通っていて今“ようやく”出られたのですが、『こういう人がいるから、合わせないと駄目だよ』とか『世の中はもっと厳しいんだよ』とか色々言われて生きづらかったですね。確かに世の中、仕事はともかく人付き合いはそうでもなくて、寧ろ厳しいのは施設のほうです。
それで、小人プロレスの露出が少ないのは、圧力をかけているのが障害者団体のお偉いさんではないかと思っています。

「なるほど、障害者を笑い物にするな働かせるなと言っている側が、障害者に関する団体かもしれないというわけですね。団体にも色々ありますし、プリティ太田さんも小人の代表ではなくプリティ太田“個人”として生きづらさを語っているだけです。それでも、28年間活動していった中で『障害者は守らねばならない』『弱者だから晒し者にしてはならない』と考える人や団体にも沢山会ってきました。
色々な考えがあるのは結構ですが、大切なのは“本人が”どう考えているかです。当事者抜きで力のある偉い人だけが一方的に決めるのは如何なものでしょう」
たかまつ「誰でも自分の正義を押し付けてしまうことがあります。今回プリティさんの話であったようにテレビ出演を増やすべきだとも言えますし、多く取り上げることで却って傷つく人も居ます。何を正義とするかは人によって違ってくるから難しいですよね」

「正解が出ないからこそ、こうして考えるきっかけが大切だと思います。ただ、『番組で傷つく人がいる』という懸念に関しては、番組製作者の力量が関わってくるのは確かです。私もプリティさんと最初に会った時は演出などで大いに悩みましたが、それを解決したのが互いの話し合いです」
太田「話し合いして決めていけば自分としても大丈夫です」
「(ネタを披露しても)笑うのに躊躇する人も多いですよね」
たかまつ「狼狽えますよ。笑っていいのかなって」
「笑ってもらえないと、スベったことになります。
たかまつ「それはそうですが、笑ってもいい保証がないと安心して笑えませんね」
「なので、私たちは効果音でクスクス笑いを入れます。段々笑いを大きくしていくと、実際の笑いも大きくなっていきます」
太田「(あの時は)爆笑でしたよね」
「大ウケでしたよね。子どもから大人まで」
たかまつ「笑う見立てを提示してもらうのも大事かもしれませんね」

いじりの境界線は自己開示

ここで話題は「いじりの境界線」へ戻ります。

たかまつ「逆に嫌ないじられ方というのはありますか?ここまでは良いけど、これ以上はダメとか」
太田「どうなんでしょうね。自分はオールオッケーのつもりなんですが」
たかまつ「凄いですね。関係性のない人から『いじり』を受けるのは、私なら嫌です」
太田「さすがにそれは嫌がって当然ですが、原則それを商売として成り立たせていますからね」
「大事なのは作る側との対話ですよね。対話しながら突き詰めていく。いきなり踏み込んだ『いじり』は…」
太田「意味が違ってきますよね」
「女性芸人いじりにしても同じですね。どこまでいじっていいかに限らず。そういう意味では『迷ったら笑ってください』というのは合理的と言えますね」
たかまつ「(いじりの許容範囲を)自己開示するのが大事かもしれません」
「これは難しい問題で、同じ悩みを抱えるパフォーマーやアーティストは多いです。またこうして考える機会があるといいですね」

「いじり」に関しては許容範囲を自己開示し、事前に打ち合わせをしておくことが大事だという風に締められました。スタジオの中でだけはそれで問題ありませんが、番組を見た人が真似するようになるとどうでしょう。そればかりは視聴者側の問題で、番組側に面倒を見る義理はないだろうと私は思います。

人物補足

話の中で示唆された人物や名指しされた人物について補足いたします。

ミスター・ポーン
ミゼットプロレス全盛期を象徴するレスラーの一人です。バラエティ番組に出演し、クレームを頂戴したミゼットレスラーといえば彼が該当します。
ミスター・ブッタマン
「もう一人の小人プロレスラー」です。ミゼットプロレス全盛期の過ぎた時期にデビューされており、プリティ太田さんのデビューまで長い間試合を組めず休止状態となっていました。
ワーウィック・デイヴィス
「小人の芸能プロダクション」とは恐らくこの人であると思われます。自身も低身長症の俳優として「スター・ウォーズ」や「ハリー・ポッター」に出演し、後に低身長症専門の芸能プロダクションを立ち上げています。
ケニー・ベイカー
「スター・ウォーズ」のR2-D2を演じた事で知られる俳優(故人)で、低身長症の俳優と聞かれれば真っ先に挙げられるであろう存在です。「ジェダイの帰還」ではイウォーク族(身長1メートル程の異星人)も演じていました。
マメ山田
自他ともに認める「日本一小さなマジシャン」です。マジシャンの他にも様々な活動を行っておられたほか、東さんの別企画にも出演されています。 後藤仁美(ちびた)
情報不足で確証がないのですが、恐らくこの人であろうと思われます。本人のアメブロによれば、身長115cmで女優・モデル・イラストレーターを兼業しておられます。「ちびた」名義で活動されることもあります。
濱田祐太郎
「R-1ぐらんぷり」で優勝した視覚障害のピン芸人で、ネタ始めに「迷ったら笑ってください」と観客を和らげる語りを特徴としています。芸人として大きな功績を立てたにもかかわらず、その後のテレビ出演などは極めて少なかったそうです。

▶次の記事:「第2回生きづらさダヨ!全員集合」レポート②佐藤ひらり編~不自由ではないが、不便ではある

動画URL

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障害者ドットコム編集部

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