話題の新SNS「Clubhouse」、障害者ならどう使いどう向き合う
エンタメ 暮らし最近にわかにその名が広まり始めた音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」、現在はベータ版をiOSのみ配信している状態ですが、それでもなお飛ぶ鳥を落とす勢いで知名度を上げています。
Clubhouseは既存のSNSや音声通話アプリなどとどう違うのでしょうか。また、障害者とSNSの関わりに新たな風を吹き込む存在となれるのでしょうか。
音声に特化したSNS
Clubhouseの特徴は何といっても音声に特化したSNSだという点です。テキストチャットの類は一切用意されておらず、専ら音声でコミュニケーションをとるようになっています。フォローやフォロワーは「招待」によって増やしていくことになります。
詳しい操作についての説明は省きますが、「その場限りの会話」であることを重んじたシステムにもなっており、同じルーム内のアカウント全てが許可しないと録音や記録は出来ないことになっています。ルーム設定によっては話された内容をClubhouse内ですら持ち出せない「オフレコ化」もあります。要するに「魚拓はとれない」仕組みです。
ルーム内は原則入退室自由で、雑談ルームだけでなく話し手と聞き手に分かれた講習会のようなルームも存在します。しかも、ルーム主催者の裁量によっては聞き手が話し手になることも珍しくはありません。会話そのものも「Zoom」に比べるとラグが少なく、リアルタイムに近いコミュニケーションが取れます。
海外のベータ版アプリなので、言葉が全て英語という「壁」は存在します。日本語化の予定も未定なので、既存の使用レポートを説明書代わりにするといいでしょう。また、実名での登録や電話番号との紐づけが義務付けられているため、その辺りに抵抗があると使いにくいと思います。
既存アプリとの違い
一期一会の音声会話アプリとしては既に国内で「斉藤さん」というアプリが存在します。「斉藤さん」は同時にアプリを起動している人どうしを繋いでテレビ電話(映像なしでもOK)するアプリです。一時期バーチャルYouTuberなどが取り上げており、名前は知っているという方も居るのではないでしょうか。Clubhouseと斉藤さんの主な違いを以下に列挙していきましょう。
会話人数
Clubhouseは同じルーム内にいる人数だけ会話が可能です。斉藤さんは一対一。
マッチング
Clubhouseは「招待」によってフォロー・フォロワーを増やします。斉藤さんは無作為にマッチングされ、再通話や再マッチングは原則できません。
音声以外の交流
Clubhouseにはテキストチャットの類が一切ありません。斉藤さんはプロフィールやメッセージのやり取りが一応できます。
個人情報
Clubhouseは実名のみで、電話番号や他SNSアカウントとも紐づけされるため、芋づる式に個人情報を引き抜かれるリスクがあります。斉藤さんは通話中に聞き出すケースもありますが、本来やろうと思えば一切個人情報を出さなくて済みます。
どのような障害者に向いているか
さて、Clubhouseが障害者にとって新たなSNSたりえるかという話題ですが、情報を俯瞰(ふかん)した限りでは「視覚障害者向けと言い張るには課題がある」という印象です。課題は当然、完全英語という「言語の壁」です。
視覚障害者がiPhoneを使う際は、「VoiceOver」機能や外部の入力機器などでユニバーサルデザイン化させており、人によってはYouTubeやNETFLIXさえも楽しんでいますしメールのやり取りもしています。それでも、視覚障害者向けのバリアフリー機能をClubhouseなりに盛り込んでいけば既存のテキストSNSよりは楽に思ってもらえるかもしれません。
とはいえ、視覚障害の有名人がテキスト読み上げ機能を用いてTwitterなどを利用するケースもあります。日本語対応すらしていない現状では強豪SNSに名を連ねるのは難しいでしょう。
逆に聴覚障害者や吃音症はどうするのでしょうか。音声だけでやり取りをするには極度に不利といえるでしょう。吃音症は勿論、聴覚障害者も自分の発声が分からないので滑舌は悪くなりがちです。音声でしかやり取りできないなら敢えてClubhouseを採用する理由もないと判断されるでしょう。
また、これはSNS全体における宿痾(しゅくあ)なのですが、「バズモク(バズる=閲覧数目的)」による過激投稿が横行するかもしれません。例えば「皆が言いたいけど言えないことを言う!」として差別発言を連発するなどです。
それ以外にも「マルチ商法や疑似科学の温床になっている。無知な人が狙われやすい」という報告まで挙がっています。ルームの特性も催眠商法に向いているかもしれません。気軽に退出できる仕組みにはなっているのですが。
まとめ
SNSと名乗るからにはSNS自体が抱える問題も全て受け継いでいると思うので、結局はSNSとの向き合い方そのものに左右されるのではないでしょうか。
障害者が利用する上ではハードルが高いと思います。吃音症や緘黙症、ASDにとってもきつそうな感じです。そもそも英語版しかないというユニバーサルデザイン以前の現状なので、今どうこう騒いでも仕方がないのですが。
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