「アンビバレンス」大好き!!
暮らし その他の障害・病気出典:https://www.photo-ac.com
今回は、私がとても面白いと思った「アンビバレンス」についてお話させていただきます。
アンビバレンスって何?
アンビバレント(ambivalent)とは、「両価的な、相反する感情を持つ、あいまいな」という意味です。英英辞書では、"having mixed feelings or contradictory ideas about something or someone"とあります。アンビバレントは形容詞、アンビバレンスは名詞です。
心理学では、アンビバレンスとは、ある対象に対して両価的な感情を持ったり、そのような態度を取ることを言います。例えば、ある人物に対して、愛情と憎悪を持ったり、尊敬と軽蔑の気持ちを持つ場合です。この二つの感情を共存するものとして認識できず、どちらか一方を無意識に抑圧して見ないようにしてしまうことで、葛藤が起こって神経症の原因になるケースもあるとされます。今から「曖昧なものは、曖昧なものとして認識する」という考え方を見ていきます。
精神科医が語る「アンビバレンス」
精神科医の春日武彦さんは、「心はモノトーンではない」と言います。アンビバレントであることは、人にとって至極当然のことで、それを無理やりに白黒つけようとすると、心に負担が掛かると言います。数学のように人の心理を理解できるわけがないと仰いますし、また、世間での精神障害者への偏見も、内面を単一の色で理解しようとする点に問題があると仰います。
このように、精神科医でも心というのは簡単に分かるものではないそうで、私は永遠に分からないものであるべきではないかとも思います。「分かると言う人ほど分かっていないものは?」なんて、なぞなぞが作れそうですね。ちなみに、春日先生は、元々産婦人科医で、そこで問題を抱えた親達を見て、精神科医になることを決めたそうです。先生の著書は、大変フランクで面白いので、おすすめです。
臨床心理学者が語る「アンビバレンス」
ユング心理学を勉強したことがある方なら、必ずご存知であろう臨床心理学者の河合隼雄先生も、人間の心は不可解だと言いました。人間の心は不可解であるために、心理療法は、知識や技術によって成功が約束されるような仕事ではないと仰いました。心理療法家の心構えとして、「自分はだめじゃないか」という思いがしなくなったら終わりだとも仰いました。それほど、人間の心理というのは分からないものなのでしょうね。
河合先生は、スイスのユング研究所に留学をされ、日本人で初めてユング派分析家の資格を取り、ユング派の心理分析を日本に広められました。著書の『子どもと悪』では、子どもが「悪い事」をするのは、決してダメなことではなく、成長の過程で必要な事であると説いたり、『影の現象学』では、人間にとって切り離せない「影の部分」に焦点を当てたり、人間の心を本当に多角的に見ておられました。
最後に、自分の感情が分からない、人の行動が分からない、そんなこともわりとたくさんあるんじゃないでしょうか。でも、それも当然なのかもしれません。なぜなら、人の心は「アンビバレント」なものだから…。白黒じゃなくて、グレーでもなく、もっともっと色彩豊かなのかもしれませんね。
参考文献
weblio辞書 "ambivalent"
http://ejje.weblio.jp
Dictionary.com "ambivalent"
http://www.dictionary.com
wikipedia "アンビバレンス"
https://ja.wikipedia.org
春日武彦著『精神科医は腹の底で何を考えているか』幻冬舎/2009年
河合隼雄著『人の心はどこまでわかるか』講談社/2000年
その他の障害・病気