映画で感じる障害の世界.#1「こんな夜更けにバナナかよ」

出典:Photo by Felix Mooneeram on Unsplash

わたしの書くコラムの新しい試みとして、色々な障害にまつわる映画を見て、感じたことなどを伝えていこうと思います。なお、映画の内容についても触れる部分が多いため、ネタバレが気になる方はタイトルをAmazonプライムなどで検索してみてください。

こういった話を相談員さんに話したところ、オススメの映画の1本として挙げていただいたのが「こんな夜更けにバナナかよ」というノンフィクション映画です。なんとも不思議なタイトルですね。

難病を抱えた障害者と、多くのボランティア

この映画の主演は、今や押しも押されぬ人気俳優となった大泉洋さんです。筋ジストロフィーという難病の患者を演じ、頭や手しか動かせない、24時間介助が必要な状態をリアルに演じ切っています。

大泉洋さんが演じる「鹿野靖明」さんは、北海道札幌市に在住していた実在の男性です。

自身の力では寝返りを打つことも難しい生活ですが、多くのボランティアスタッフに支えられています。

しかし彼には病気だけではない大きな問題があり、それは「傲慢さ」です。

身の回りのことを全て他人に助けてもらうことが当たり前であり、むしろそのおかげでボランティアが成長できている、と豪語します。

タイトルの「こんな夜更けにバナナかよ」というものも、鹿野が夜中に「バナナを食べたい」とワガママを言うことから来ています。

そして、そうしたワガママに反発する形になるのが、ボランティアの一員である安堂美咲(高畑充希)です。

ものすごく簡単に言うと「そこまで王様気分の障害者って、そんなに偉いのかよ!」という感じです。このあたりの表現にはとても驚きました。障害にかかわることが少ない健常者の方や、介助者の方でも心に浮かぶことがあってもなかなか言えることではないと思います。

これは自分自身でもハッとさせられたというか、精神障害があっても「助けてもらって当たり前」という考えになってしまってはいけないなと感じました。

明るく楽しい、切ない話

大泉洋さんの演技力もあり、要所にコメディタッチ的な空気が流れたり、軽やかなBGMの使い方があるのが特徴的です。

その楽し気な演出とは裏腹に、それぞれがリアリティを持った演技であったり、ドアの構造や壁にかけられた小道具などが、かなり実際の現場を参考にしているのではないかなと思いました。

全体的に明るい空気の映画ですが、障害者を中心とした人間関係、恋愛、性的描写など、様々な部分が表現されています。

わたし自身、今後は介護関係の資格を取得し、そちらの道に進もうかと思っていたところなので、介助者の目線を映画という形からでも感じられたことは大きいです。

まとめ

わたしのように双極性障害やパニック障害などの精神障害だけを抱えていたり、そもそも健常者だけで過ごしていると筋ジストロフィーの方に接する機会は無いと思います。

今回このような形で映画を見ましたが、映画やドラマ、また24時間テレビのようなものでさえ、どこか少し目を背けるような、障害者は直視してはいけない空気があると思います。

ですが、この「こんな夜更けにバナナかよ」は、そんな障害に触れることが少ない方にこそ、障害に触れる入り口として、見てほしいと思える1本でした。


こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 - 映画 - 松竹

https://www.shochiku.co.jp/cinema/lineup/banana/

新井 一生

新井 一生

社会人になってからパニック障害、統合失調症などを患った精神障害者。
精神病になってからも沢山の失敗を経験しながら、なんとか生きている。
好きなものはゲーム。

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