自分の障害に気づくための選択~障害の受容と自認
発達障害皆様初めまして、発達障害(ADHD)と診断されて2年目のあなろぐです。 さて、皆様はご自身の障害についてどのようにお考えでしょうか。私は今でこそ自身の障害を認識するようにはなりましたが、診断当初はまるで他人事のように実感がなく、それ以降も実感に乏しい日々が続いていました。今回はそんな自分がどのようにして障害を自認するまでに至ったのかをお話ししたいと思います。
診断時
診断当時、私は適応障害の発症後、療養のため休職を経て職場復帰する直前の状態でした。そんな折、心療内科にて検査を受けることになったのですが、そこで発達障害(ADHD)という診断結果が帰ってきました。さて、そんな診断を受けた時の自分ですが、いまいち実感が無く、自分にはそういう傾向もあるのだな、という程度の認識でした。発達障害についてはチラシなどである程度は知っていましたが、当てはまる点もあれば当てはまらない点もあり、直接的にその症状で困っていたという感覚はありませんでした。症状としては比較的軽いという診断もあり、服薬をしておけばまあ今まで通り働いても大丈夫だろうと考え、結局予定通りに復職しました。
2度目の休職と退職
予定通り復職はしたものの、当時勤めていたのは派遣会社という事もあって、元の現場ではなく別の現場に配属されることとなりました。前の現場とは違う仕事内容でしたが、それなりに見様見真似で仕事を覚えていき、新しい現場にも馴染み始めていました。自身の障害についても、目立った困り事もなかった為、特に考えることや意識することもなく過ごしていました。しかし、またしても休職が必要な状態になってしまいます。気付いた時には抑うつ状態になってしまっていたのです。 “何故こうなってしまうのか”療養中、時折この問いが頭に浮かびます。自身の障害特性の関係上、どうしても不得手となる仕事内容を無理に捌いていた状態だったことに加え、仕事自体のストレスが合わさった結果ダウンしてしまった、という認識は今でこそ出来るようになりましたが、当時は症状や特性についてあまり把握しておらず、うまく事態を受け止められない状態でした。 ある程度精神状態も上向き、いよいよ復職か退職かを決める時期が来ました。この時、“復職してもまた同じことを繰り返してしまうのでは”という不安がありました。周囲からの勧めもあり、結局退職を選択します。晴れて求職者の身となった訳ですが、“果たしてこのまま就職活動を進めても良いものか”私の中にはそんな思いがありました。そうしてひと月ほど経った後、私は就労移行支援事業所の門を叩くことになります。
就職活動か、就労移行か
就労移行支援事業所というものの存在については、2度目の休職後に耳にしていました。“障害を持つ人達が就職を目指し、通う場所”とのことで、自分も障害の診断があった訳だし折角なら活用してみよう、という訳でまずは説明を聞いてみることにしました。ちなみにこの時、既に障害者手帳の申請とハローワークへの登録は済んでおり、今からでも障害者枠での就職活動は開始出来る状態でした。そうした折、事業所の所長さんと話をすることになり、こんな質問を受けます。 「今お持ちの障害で、お困りのことは何ですか?」 今まであまり実感の無かった、否、“ある意味では無意識のうちに目を背けてきたもの”を眼前に突き付けられたかのようでした。自分の障害についてまるで何も知らない自分と、確かに何かに困ってきた感覚はあるがそれを上手く説明できない自分がそこには居ました。結局、何度か体験通所として事業所へと通うこととなり、実際に事業所を利用するかはその後に決めるといった形となりました。 正直悩みました。早いうちに一人暮らしを始めたいということもあり、出来ることなら今すぐにでも就職活動を始めて早期に就職したい、しかしこのまま就職出来たとしてまた不意に心身の不調に襲われるのではないか、ただ事業所に通うことで確実に時間は過ぎていく・・・まさしく逡巡の真っ只中です。そんな葛藤を抱えつつ、事業所の体験通所を行う日々が続きました。
自分の障害に気づくための選択
転機になったのは、事業所で受講したあるプログラムでした。障害者雇用について知る、という内容のプログラムでしたが、その中で「合理的配慮」というキーワードに目を引かれました。(※合理的配慮については下記参考文献を参照)障害者雇用では一般の雇用以上に自分を知り、それを相手に伝える必要があったのです。考えてみればそれも当然のことで、一般の雇用では相手に伝えることのない“自分の困り事”を開示し、求職者と雇用側が双方合意の下で対処法を決めていく、ということが障害者雇用では重要となってきます。相手に困り事を伝える以上、自分のことについて尚のこと詳しく知っておかねばなりません。 “自分のことを知っておかねば、一般の雇用では心身の不調が再発するかもしれないし、障害者雇用ではそもそもスタートラインに立てない。”この時、自分がこれからまず何をすべきかが決まりました。 事業所への体験通所期間が終わった後、本利用を行う旨を伝えました。今すぐに就職活動を行うよりも、自分自身について、障害を含め見つめ直すために就労移行支援事業所に通う、という選択です。本利用を開始してからは、事業所でのプログラム受講や各種訓練を行う日々が続きました。ある時期から生活リズムを崩し通所が覚束なくなったことや、企業実習に参加できるほどに持ち直したこと等々、決して平坦な日々ではありませんでした。それらの日々を、“自分にはどんな特徴があるだろう”という問いを忘れずに過ごしてきたことで、多少なりとも自分自身のことや障害について、実感を持って受容出来るようになったかと思います。
おわりに
とはいえ、たった数ヶ月の観察で自分自身を把握しきるほど物事は簡単には出来ていません。何せ自分について知ろうとすること自体が初めてなのです。障害についても、最近になってようやく気付いたこともありました。とりあえずは目前に迫った就職活動のため、自分の困り事や特性を発掘する日々が続きそうです。
参考文献
障害者ドットコム 合理的配慮とは?障害があっても配慮があれば働ける!
注意欠陥多動性障害(ADHD)