生きる!生きる!心の叫び

「泳ぎ続けるは、もがき続けるということなのか。」 生きる!生きる!心の叫び vol.11

スポーツ

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生きる!生きる!心の叫び vol.11 <毎月30日連載>

メドレーリレー。
3番泳者のバタフライ担当だ。
相手がいる。仲間もいる。
だから盛り上がるし、やる気もでる。
介護者に支えられながらプールサイドで構える。
この日のためにやってきたんだ。

仲間の泳者が近づいてきた。
平泳ぎで繋いでくる。
みんな必死だ。フライングするわけにはいかない。
震えそうになる身体を固めて、プールサイドにタッチするのを慎重に見守る。
そこは慎重にいく。
飛び込んだ。
健常者だったころの、フワリと浮くような感覚とは大きく違う。
それでもいい。飛び込めた。
1ストローク、2キック、力任せではなく、リズムを刻む。
スムーズな出だしで、悪くない。
スピードに乗ってくると、腰の動きで身体が浮き、両手が広がった。

気持ちがいい。いけるじゃないか。
そう思ったのは束の間だった。
身体は思うように動かない。
リズムが崩れ出す、まだ、先は長いのに。
諦めるわけにはいかない、やめるわけにはいない。
懸命に部位毎のテンポを合わせる。
残り15m。
もはやサイクルはかみ合わず、腕が水面を飛ぶことはなかった。
それでも、あと少しだ、負けてられるか。
力ずくでも進んでやる。
あと5m。
ここまで散々水を飲んでしまったのに、息継ぎもままならない。
苦しい。頭なんか働かない。
仲間に何としてでも繋ぐ。
もう、その気持ちだけで、なんとか、なんとかプールサイドにタッチした。。。

正直、今大会限りで水泳はやめようと何度も考えた。
もう無理だよ。限界だ。
泳いでいても、水は飲むし、本当に溺れそうになる。
恐怖、苛立ち、やるせなさ。
一人では、そろそろ着替える事も出来なくなるだろう。
弱音を吐き始めたら、いくらでも出るし、止まらなくなる。
モチベーションを失う理由は、永遠に尽きることがないだろう。本当に。

それでも、練習では全く泳げていないバタフライで、タスキを届けることができた。

2019年11月23日・24日
地元千葉県で日本パラ水泳選手権大会が行われた。国内で最大のパラ水泳大会だ。
結果は、メドレーリレーが3位の銅メダル。
フリーリレーでは予選時アンカー、決勝は2番泳者で、銀メダル。
仲間と共に日本で3位と2位になれた。誇って良いと思う。

それでも、まだテッペンには立てていない。
ここまで来たら、テッペンからの景色を眺めて、仲間と喜びを分かち合ってみたい。
強くそう思った。
簡単なことではない。人の助けを今以上に借りる事にもなるだろう。
いや、病気とか関係なく、手軽に日本1になんかは成れるもんじゃない。
そう思うと、まだまだ練習が足りない。
身体が動かなくても、頭を使って泳ぎのコツを見つけよう。
スムーズに力が発揮できなければ、それを補う体力をつけていこう。
進行する病状に合わせて、練習方法も考えなくてはいけない。
ここが限界とは決めたくない。
そう思い返せる大会だった。

楽しい事を続けるって、その倍以上の苦しみや大変な事が持ち受けているんだな。
前から分かってはいたけど。やっぱり大変なんだけれど。それでも続けるから続く。
っという事で来年ももがきます。

たまには見てみてね。
2019年11月23日(土) 28Pメドレーリレー3泳者 バタフライ


佐久間 勇人

佐久間 勇人

私は『脊髄小脳変性症』というだんだんと運動神経が失われていく進行性の神経難病です。今じゃ何をするのも命懸け。それでも大好きな水泳を続けています。溺れているんだか泳いでいるんだかわからなくなる時も増えてきました。心が折れそうにもなります。もう折れているかも知れません。
それでも水泳を通して色々な人と出会いたい。全力で笑いたい。皆で繋がり笑いたい。それが活力。HUG&PEACE

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