苦手意識と発達障害~現在から未来へ
発達障害 仕事出典:Photo by Quino Al on Unsplash
大学の授業で発達障害について学んだことがきっかけで病院へ行き、自分も障害特性を持っていることが分かりました。主に視覚認知力が低いことや、空間認知力が弱いことが特性です。自閉スペクトラムの傾向もありますが、日常生活では特に困っていません。診断を受けてからの悩み事、就労移行支援事業所に通うようになってからの心境の変化について書いていきます。
発達障害と診断されて
私が精神発達遅滞、自閉スペクトラム症と診断されたのは、大学四年生の五月頃です。
大学内では就活ムードが高まり、友人たちの間でも就職にまつわる話題が溢れていた時期でした。
当時の私は、自分に向いていることが分からず、一人で悩んでいました。就職セミナーに参加しても、インターンシップに参加しても、結局自信を失うだけでした。正社員として働く自分を想像することが出来なかったのです。そんな中、突如自分に下った診断が発達障害でした。
元々、人と比べて苦手なことが多く、劣等感を抱いていた私にとって、発達障害の診断は、安心材料のような不安要素のような、何とも言えない結果でした。しかしこれは、その後約一年間続く「悩みのスパイラル」への入り口だったのです。周りが就活モード一色に染まる中、私は現実を受け入れることに必死でした。就職と障害との板挟みとなった私は、この大きな悩みを抱えたまま大学四年生のスタートを迎えたのです。
今まで何となく抱いてきた違和感。何となく感じてきたコンプレックス。そこに診断名がつくことで、「自分は出来ない人間だ」という自覚が確信へと変わりました。私の場合、理解しにくい分野があること、視覚認知力が極端に低かったことにより、自分が思っていたよりも検査結果が酷く、かなりショックを受けました。自閉スペクトラムの特性もあると言われましたが、全体的には当てはまっておらず、集団行動が苦手な一面や、全体を見て判断することの苦手さから、一部傾向があるというレベルです。なので最近は、あまり診断名にとらわれず、自分と向き合うようになりました。
診断のきっかけ
発達障害を疑うきっかけとしてよく聞くのは、周りに指摘されて発覚するというパターンです。
しかし私の場合は、自分自身で発達障害を疑い、病院へ行ったことで診断へと繋がりました。
きっかけは大学の授業でした。私は大学で心理学を専攻していたので、発達障害について勉強する機会も多くありました。現代では、大人になってから発達障害が発覚する人も増えています。その多くは、職場で不適応を起こした結果、うつ病などの二次障害を発症したことにより、発達障害だと診断されるケースです。ストレス社会と言われていますが、一日のほとんどを会社で過ごす社会人にとって、人間関係、職場環境、仕事内容に上手く適応出来ないとなると、悩むのも当然です。
私も、アルバイトで転職を繰り返していたので、この先就職をしてから順調に働き続けられるかどうかを考えると、不安になったことを今でも覚えています。授業で学んだ障害特性と自分の感じてきた苦手感がリンクし、「もしかしたら自分も発達障害なのではないか?」と疑いました。
大学四年生になって、就職活動に踏み込むことが出来なかった私は、発達障害専門の教授に相談することを決めました。人と比べて理解力が乏しいこと、覚えるのが遅いこと、応用があまり利かないこと、視覚だけで状況判断することが苦手なこと等、疑問点をすべて伝えて、病院を紹介してもらいました。
苦手感
この「苦手感」について、もう少し具体的に見ていきます。
まず、私が一番苦手なことは、「視空間認知力」が必要な作業です。私は「見て盗む」ということが苦手です。もちろん、作業を理解する過程の中で、視覚から入ってくる情報は大きく役に立ちます。しかし、「手本を見てそのまま再現する」ということが、昔からどうしても苦手でした。
その為、「今から手本を見せるから、この通りにやってみてね」と教えてもらっても、映像として記憶にとどめておくことが苦手です。しかし、視覚情報と聴覚情報を複合的に捉えることで、理解力の促進につながるので、手本と言葉での詳しい説明が必要です。また、抽象的な指示で意図を察することも苦手なので、言葉での具体的な説明があると、とても助かります。
アルバイト先では、目で見て物を探すことが苦手なため、商品の在庫を探す作業がとても苦痛でした。たとえ単純作業でも、どこに何が置いてあるかをきちんと把握できていない場所で、正しい在庫を見つけることは、私にとって一番向いていない作業でした。
思い返せば、小学生の時から、国語の教科書に段落をつける課題で見落としがあったり、表やグラフ、地図の読み取りも苦手でした。技術家庭科では、図面を見て作品を制作しようと思っても、そもそも図面が理解できなかったため、いつも友人に手伝ってもらっていました。助けてくれた友人には、とても感謝しています。
このように情報を整理してみると、私の苦手感は、「視空間認知力」の低さからくるものだと分かります。私の場合は、この分野の能力が他の能力に比べて著しく低いため、能力の凹凸が激しく、結果的に生きづらさへと変化しました。
自分を受け入れることの大切さ
自力で一般就職を考えて、内定も決まりましたが、雇用前実習でつまずき自信を失い、かねてより病院に勧められていた「就労移行支援事業所」というものに通うことを決めました。
就労移行支援事業所に通うようになってから、自分の苦手なことや難しいことを受け入れることの大切さを教えてもらいました。今までの自分は、上手くできないことがあると、「もっと頑張らないといけない」「このままでは恥ずかしい」「人におかしいと思われるのではないか」という、極端な考え方をしていました。
これは、自己肯定感の低さからくる気持ちだったと思います。しかし最近になって、苦手なことを気にしすぎない方が、自分にとっては楽なのだと気付くことが出来ました。
人には得意なこともあれば、苦手なこともあります。誰にだって個性があるように、特性も自分自身の一部だと思います。自分を受け入れることで、以前より希望を持つことが出来ました。悩みを一人で抱えることもなくなり、自分らしさを大切にしようと思いました。
私はこれから就職を目指していきます。就職後も、日常の中に小さな幸せを見つけられる人でありたいです。壁にぶつかったとしても、仕事の中にやりがいを見つけられる人でありたいです。そして、これからも周りの人に感謝できる人であり続けたいと思っています。
おわりに
自分の苦手感や、発達障害の診断に至ったきっかけについて書きました。私は見た目で分かりづらいところに苦手感があるため、ずっと「人にどう思われるか」を気にして生きていました。
生まれ持った特性は変えられませんが、物事の考え方は変えることが出来ます。
少しずつ。一歩ずつ。その積み重ねを大切にしたいと思っています。
自閉症スペクトラム障害(ASD)