生活保護~困窮している人は全て救われるのか?
暮らし出典:Photo by Birmingham Museums Trust on Unsplash
2021年1月27日の参院予算委員会で菅義偉内閣総理大臣は、立憲民主党の石橋通宏議員の質問で新型コロナの感染拡大によって生活に苦しむ人たちへの対応を求められた際「政府には最終的には生活保護という仕組みがある」と答弁しました。この発言がさまざまな物議をかもしたのも記憶に新しいです。
憲法第25条
「セーフティーネットの最終手段である生活保護があるから経済的に困窮している人達は大丈夫」とも受け取れる発言ですが、そんなに簡単に生活保護を受けられるものなのでしょうか?
生活保護を受けるための要件及び生活保護の内容について、厚生労働省のHPから生活保護を受給する要件が書かれています。その紹介の前にそれに関係する憲法第二十五条を紹介させていただきます。
生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務
憲法第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
これは、国民の社会福祉と社会保障及び公衆衛生を保証し向上することを国に義務付けています。
また以下は、厚生労働省のHPから引用になりますが生活保護の概要になります。
保護の要件等
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。資産の活用とは
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充ててください。
能力の活用とは
働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください。
あらゆるものの活用とは
年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。
上記のように生活保護は、あらゆる支援制度を活用し尽くしても、どうしようもない状況になって初めて受給できるということになります。車や土地家屋、預貯金もほぼ無い状態にならなければ受給できないのです。そこまで困窮しないと公的支援の網にかからないという現実を不思議に思うのは筆者だけでしょうか?
生活保護を受けると扶養照会という名で親族に問い合わせやハガキが届きます。照会を受けた親族は、金銭的に余裕がない場合、援助を断ることができます。この日本特有の「扶養照会」が受給を満たす人でも生活保護を受けることにためらう理由のひとつであるといわれています。
その一方で、厚生労働省は「扶養義務の履行が期待できない者」に対しては、扶養照会をしなくてよいと通知を出しています。この矛盾した通知は生活保護支給を判断する福祉事務所を混乱させるだけではないでしょうか?
また、たびたびニュースになっていることですが、福祉事務所に生活保護を申請しても、窓口で追い返されてしまう現実があります。
もし仕事を失ったら、失業保険がありますが、失業保険がきれたら再就職できなければ預貯金を切り崩し、それが無くなれば生活保護を受けろと言われても、行政が受け付けてもらわなければ意味がありません。申請しても窓口で追い返してしまうのなら、失業保険から生活保護までの間に何かしらの公助があるべきです。
参考文献
【ヤフーニュース 菅首相「最終的には生活保護がある」は何が問題か あまりに受けにくく自死に追い込む日本の生活保護制度】
https://news.yahoo.co.jp/
【厚生労働省 生活保護制度】
https://www.mhlw.go.jp/
【衆議院 日本国憲法 第三章 国民の権利及び義務】
http://www.shugiin.go.jp