うつ病と休職~休職した私と、休職をしなかったAさん
仕事出典:Photo by Usman Yousaf on Unsplash
みなさんは、うつ病になったことはありますか?私は、病院で勤務していたときにうつ病を発症しました。主な原因は、複数の医師や看護師からパワハラに近い罵声を浴びせられたことと、周囲に助けを求められなかった私自身にあります。
休職した私
入社して1年目の終わりくらいから、やや大きな仕事を任されました。わからないことだらけのその仕事が始まってから、残業や休日出勤、生活リズムの乱れ、さらに食事も適当になり、体調が崩れてしまいました。それでも半年後にその仕事を仕上げることができたのです。しかしその間に、心も身体もボロボロになってしまいました。いつも普通にやっていた仕事でのミスの連発から、物忘れの増加、動悸、息切れ、涙が勝手に出てくる、とそれまでに経験したことのない症状が現れ始めました。
見かねた上司に医療機関の受診を勧められ、家の近所の診療所に行きました。そこでの診察で「あなたはうつ病です。休職してください」と言われ、情けない、つらい、怖いなどいろいろな感情が混ざって号泣してしまいました。しかし、同時に少しほっとしたのです。私自身は「自分が職場にいないほうが迷惑をかけないし、同僚は仕事がしやすいのでは」と思い、また「うつ病が早く治るかも」と考え、医師の言うとおり休職することにしました。
休職したものの、最初は思ったように状態は良くならず、半年が経ちさらに一年と休職期間が伸びてしまいました。情けない、怖い、死にたいというマイナスな感情が、うつ病からの回復を邪魔しているみたいでした。
休職が始まって一年半ほどが経過したころ、ようやく近所のスーパーへの買い物や、犬の散歩など仕事と関係ない外出ならできる様になりました。積極的に外に出ると気分も晴れてきて「仕事に復帰したいと」自然に考えられるようになりました。そして二年半ほど経過して、復職が叶ったのです。落ち着いて仕事できるようにと、上司が部署を異動させてくれました。しかし、そこには私とは全く違う価値観を持った人がいたのです。
休職しなかったAさん
私が異動した先の部署には、私より一年後輩のAさんがいました。Aさんも入社時は、かつて私がうつ病を発症した部署に配属されていたのですが、諸事情で私が復職した部署に異動していました。残念なことに、この新しい部署にもパワハラをしてくる上司がいたのです
Aさんは入社時、40歳過ぎのベテランから仕事を引き継いでいました。A4用紙に5行ぐらい書かれた仕事の種類しかわからない、形だけの引き継ぎだったようです。当然わからないことだらけで、毎日上司にミスを指摘されて苦しい状態でした。私と休職と前後して、Aさんも心身のバランスを崩し精神科を受診しました。薬を出してもらい、少し楽になったそうです。
Aさんは、苦手な上司に怒られると、その苦しさから逃れるために、精神安定剤を規定の量より飲みボロボロになっていったのです。ある時、電車に乗ったら、いつの間にか知らない場所に着いていたこともあったそうです。状態の悪さから、医師に休職を勧められたAさんですが、意地や、仕事は休んではいけない、穴をあけてはいけない、お金がないなどの理由で休職をかたくなに拒否します。何度も医師が「診断書を書く」と言っても聞かず、出勤し続けました。
Aさんはその後、仕事の負担を軽くするために部署を変わりましたが、怒られたり、つらいことがあると薬を飲んでの現実逃避を続けていました。その影響で、まっすぐ歩けず壁に当たりながら歩いたり、自分の席に座ろうとして椅子から落ちたりと周りを心配させていました。同僚がタクシーで帰宅させたこともありました。それでも、Aさんは休職するとは言いませんでした。絶対に出勤すると言い張っていたのです。Aさんしかできない仕事もあったので、助かることもありますが、心配のほうが多かったです。
こんな状態でAさんは、二年間一度も休職せず仕事を続けました。3年目に入って、パワハラをする上司が異動したおかげで、人間関係が良くなってきたためかAさんの状態が上向きだします。そして、とうとう薬の要らないところまで治り、Aさんの執念が勝ったのです。
まとめ
Aさん自身は、うつ病と真正面からたたかいを挑み、勝利を収めました。この記事を読んで「休職しなくてもいける」と思われた方もいるかもしれません。しかし、周りの人間は毎日フラフラで仕事をしている姿をみるのは辛く、心配にもなります。実際にAさんのご両親はかなりつらい思いをされたそうです。そのことを考えると、もっと良い方法はなかったのでしょうか?
私自身の経験から、1度仕事を離れて静かに過ごす時間を持つことが大切だと思います。なぜなら、本当に自分のことを心配してくれる人に、これ以上心配かけたくないですから……。表に出さなくても、あなたのことを心配している人はきっといます。だから安心して休職してください。うつ病で休職することは恥ずかしいことではありません。うつ病とのたたかいを一時休戦にしませんか?