発達障害児を支援する「プレイン」が利用者とヤングケアラーに有馬温泉街の旅館を貸切り、宿泊イべントを開催

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ヤングケアラーの問題解消に取り組む「プレイン」

2021年(令和3年)3月厚生労働省により、ヤングケアラーの実態に関する調査結果が公表されました。「ヤングケアラー」とは通学や仕事のかたわら、障害や病気のある親や祖父母、きょうだいなどの介護や世話をしている18歳未満の子どもを指します。

この調査結果によると、ヤングケアラーの社会的認知度が低く、支援が必要な子どもがいても、子ども自身や周囲の大人が気付くことができないことが大きな課題としてあり、さらにヤングケアラー自身がきょうだいや家族を気遣い、子どもらしく家族に甘えることができていないという現状が明らかになりました。

「株式会社プレイン」は、発達障害児に対して脳の機能回復トレーニングを提供している通所支援事業所を運営されています。実際にプレインに通所しているお子さんの家族にもヤングケアラーが数多くおられ、代表の福島有二さん自身も、幼少期にヤングケアラーとして過ごし、介護の負担を身をもって感じてきた生い立ちがあります。

プレインは、開所当初からケアラー問題に着目して、ヤングケアラーとそのきょうだいが一緒に参加できるスクール活動など様々な取り組みを行い、ケアラー問題の解消に向けて試行錯誤を続けられています。

その一環として、ヤングケアラーや家族の問題の解消に向けて、日々のトレーニング環境ではできないことを大学の研究者とともに新たな環境で提供するために、親交のある企業の協力を得て今回の宿泊イべントを開催されました。

ヤングケアラーに安らぎと子どもらしさを

今回実施された宿泊イベントは「いつも障害児を優先し、我慢して、子どもらしく親に甘えられないヤングケアラーのために、保護者が一緒に過ごしてあげられる時間や空間を提供する」ことを目的として、兵庫県の有馬温泉街にある「自家源泉の宿 有馬街道ゆうわ」を一部貸切りにして開催されました。

一泊二日で行われたこのイベントでは、プレインの施設を利用されているお子さんとそのご家族(いずれもヤングケアラーがおられるご家族)を対象として進められました。そして、障害のあるお子さんには客室や会議室、娯楽室など館内において、プレインのスタッフによるトレーニングが提供され、その間、ご家族には温泉街にて観光を楽しんでいただき、ヤングケアラーのために心置きなく時間を過ごしてもらえる内容となっていました。

宿泊イベントでのお子さんとケアラーの様子

①普段と違う環境でトレーニング

発達障害児は一般的に、初めての場所や物など「いつもと違う」ことを捉えて、見通しを立てることが苦手です。実際、今回参加されたお子さんの中には、居室では隅っこで動けずに固まり、あたりをキョロキョロ見渡したり、テレビや机などを見て、「テレビがあるね」と見通しを立てる発言を繰り返す様子が見られました。

今回のトレーニングは、通所事業所で行う認知トレーニングだけでなく、館内全体の見通しを立ててもらうために館内を歩行して回るプログラムや、普段のトレーニングではできない卓球などの体を動かすプログラムが取り入れられました。

初めてで慣れない環境の中、4時間に及ぶトレーニングは発達障害児にとって大変大きな負荷となります。そのため、トレーニングの最後は、家族が安心してお子さんを迎えることができるように過度な刺激を与えずに、安定した状態を作れるように締めくくられていました。

こういった計画的なトレーニングの提供により、お子さんは「初めての場所」に対しての見通しを立てることができ、トレーニング後はご家族で温泉や食事を楽しまれていました。

②ケアラーは温泉街を観光

お子さんがトレーニングを行っている間、保護者は「せっかくこういった貴重な機会をくださったので、楽しんできます」とヤングケアラーを連れ、温泉街に出かけて行かれ、観光を楽しまれました。

③参加された保護者の感想

宿泊イベント実施後、参加された保護者からこのようなお話がありました。
「娘(ヤングケアラー)が体育でバドミントンをしていると知って、日曜日の帰宅後に父親らしいことをと思い、一緒にやってみました。上手くできない娘を見て、そういえば、娘と公園でボールや道具を使って遊ぶことをしてこなかったな。息子(障害児)の学校、病院、療育などのことや娘自身の習い事に時間がとられ『よく見られる家族の休日の過ごし方』のようなことをしたことがなかったなと、今回の取り組みに参加させてもらって思い返しました。」

また、別のご家族からは、「食事中は、毎回のように離席することや飛び跳ねることがあり、それを防ぐために手を繋ぎながら食事をしています。だけど、今回は手を繋がなくても家族で食事ができました。」といった感想もありました。

参加されたご家族が口を揃えて、「宿泊イベントを通して子ども(ヤングケアラー)との時間を作れた」「こんなに普通に過ごせると思わなかった」と話されていました。

今回の企画を通して、代表の福島有二さんは「障害児とその家族が安心して宿泊できる施設と発達障害児に対してのトレーニングを提供する事業所が存在することで、ヤングケアラーとその家族に余暇を提供することが可能だとわかった。今後もケアラー問題の解消に向けた取り組みを進めながら、大学の研究者とともに、さらなるトレーニング品質向上に向けた臨床研究を繰り返し行っていきたい。」と話しています。

近い将来、全国の観光地においてこのような取り組みが見られることを期待したいと思います。

障害者ドットコムニュース編集部

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