相模原「やまゆり園事件」から5年、慰霊碑に7人の実名が刻まれる
暮らし その他の障害・病気7月26日、相模原市の「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害されてから5年の節目を迎えます。それに先がけて、7月20日に追悼式が行われました。感染症対策により昨年は中止となり、今年は再建された新園舎へと場所を変えています。
慰霊碑に7人の実名
今年、慰霊碑としてモニュメントが公開されました。直径1.8メートルの皿型のモニュメントで、月命日である毎月26日には水を満たし、縁から19本の筋の水が流れ落ちるようになっています。このようなモニュメントにした理由は「事件を風化させず、未来を切り開いていく想い」からだそうです。
また、ヤマユリの絵が彫られた献花台には、犠牲者のうち7人の実名が刻まれました。初公判から下の名前だけ公開に踏み切った「美帆さん」の親族に加え、6組の家庭が「実名を出す判断をした」ということでしょう。
慰霊碑には名前を刻むためのスペースが確保されており、今後も遺族の希望があれば追加で刻む可能性を示唆しています。黒岩祐治神奈川県知事は「強制はしないもののスペースは空けてある。永遠に残る碑として焦らず長期的に見守っていきたい」と刻銘について述べました。
追悼式は知事と関係者のみで行われましたが、献花は原則13時から17時までの間であれば受け付けられるそうです。
植松の呪い
事件から5年が経ち、風化を防ぐ努力が毎年報じられている一方、事件を引き起こした植松聖死刑囚は「障害者差別の象徴」としての影響力がひとりでに増しています。植松の名前が一人歩きしているような感じです。
障害者施設でクラスターが発生すれば「植松の望んだ世界」、差別発言で盛り上がれば「これには植松も高笑い」と、まるで専門家のような扱いです。「息子は植松の名前を聞いただけでパニックになる」「知人が『どうせなら植松にはうちのバカガキを殺してほしかった』と言っていた!」などと、偶像崇拝にまでなっている所もありました。
死刑確定後、篠田さん(月刊「創」編集長)は最後になるかもしれない接見で、植松死刑囚から「餃子に大葉を入れると美味い」という呑気な一言を残されました。これの読者の中には「大葉の餃子を食べるたびに植松の一言を思い出す。これは呪いだ」と、却って戦慄する声があったのです。
昔のとあるゲームの考察で「登場人物の目的は自分の行動や思考パターンを『プレイヤー(読者)』に憶えてもらうこと。『プレイヤー』の記憶に残れば、たとえ肉体を失おうとも『存在』し続けられる」というものがありました。
植松死刑囚は裁判が終わるまで持論(少なくとも本人にとっては)を説くことに注力し、自らの思考回路を開けっぴろげにしていました。他の死刑囚に比べると自己アピールがとても多い印象があり、思考パターンまで憶えてもらおうという努力すら感じられます。「児童性愛の象徴」とされている宮崎勤ですら、実際の犯行動機は分からず仕舞いで児童性愛かどうか自体も分かりませんでした。
一方は事件が忘れ去られないよう必死になって努力し、一方は障害者差別の象徴として労せず記憶に残っています。皮肉な構図ではありますが、嘆いてばかりではいられません。7組の遺族が実名を出す決断をしたのも、知事が実名にこだわるのも「負けてたまるか」という抵抗に思えてきます。
参考サイト
「決して忘れない」津久井やまゆり園、新園舎で追悼式 やまゆり園事件5年|カナロコ
https://www.kanaloco.jp
やまゆり園追悼式 亡き19人に鎮魂の祈り 慰霊碑に住民ら献花|東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp