私が広汎性発達障害と診断される前と後
暮らし 発達障害出典:Photo by Erik van Dijk on Unsplash
発達障害と診断されたとき、反応は2種類のタイプに分かれるのではないかと思います。1つは、これまでの生きづらさが発達障害の特性によるものと知り、自分のせいではなかったのだと安心する人。もう1つは、自分はダメな人間なんだとふさぎ込んでしまう人。私は後者のタイプの人間でした。
このコラムでは、私が広汎性発達障害と診断される前と診断された後で、どう変化してきたかについてご紹介します。
学生時代の私
「注意力散漫でミスが多い」「コミュニケーションが苦手」「こだわりが強く融通が利かない」それが学生時代の私でした。特にミスの多さ、コミュニケーションの苦手さで生きづらさを感じることが多かったです。
例えば、ミスの多さに関しては、ひとりで飲食店に行ったとき、かばんに財布がないことに気付く、同じ月に2回連続で定期券を落とすなど、散々なものでした。
コミュニケーションについては、雑談が苦手で主体的に人間関係を築くことが苦手でした。この特性のため、高校時代は周囲の環境になじめず、3年間孤立していました。その結果うつ病を発症してしまいます。
就職活動
大学時代、文系だった私は、文系出身だと営業系の求人がほとんどだと知って愕然としました。先述の通り、コミュニケーションの苦手さを自覚していたからです。困った私は何とかならないかと、いろいろと調べ、IT系の企業の技術職にたどり着きました。技術職なら営業ほどコミュニケーションスキルは求められないのでは、と当時の私は安易に考えてしまったのです。
当時、私はITスキルはなかったのですが、幸いIT業界は人手不足だったこともあり、内定をもらうことができました。
就職してから
就職してからの私は、研修の内容が理解できず、ついていくことができなくなっていました。原因は私がITスキルを持っていなかったこともありますが、口頭指示が苦手であるという障害特性もあったように思います。なぜなら、他の同期の中には私と同じ文系出身者もおり、彼らは研修についていくことができていたからです。
ついていけない私は思い悩み、夜眠れないようになってしまいました。そして寝不足になり、頭がぼーとして集中できなくなったり、ミスが増えました。そしてとうとう体調を崩し、休職をすることになってしまったのです。
発達障害の診断
休職中、ひとりになって今までの自分を省みる時間が増え、自分と同じような人がいないかネット検索していました。すると「発達障害」という言葉が出てきたのです。
もしかしたら自分も発達障害かもしれないと思い、受診していた精神科の先生にお願いして検査を受けました。そうすると予想通り「広汎性発達障害」との診断。
自分から検査をお願いしたので、ある程度は覚悟していたつもりでしたが、いざ診断を受けるとショックでした。自分はなんてダメな人間なんだと自己否定をしたり、これからの人生はどうなっていくんだという不安にかられてしまいました。
職場復帰、しかし……
休職が開けた私は人事部付で職場復帰しました。技術系の部署は難しいだろうという会社の判断からです。 私は人事部の中で、書類整理、簡単な窓口受付対応、社内規定の作成などに携わっていました。しかし、基本的には時間を持て余していました。なぜなら、その会社では新入社員が人事部に配属された前例はなく、仕事の切り出しが難しかったからです。
会社の人たちはいろいろと手を尽くしてくれましたが、将来に対して不安を感じた私は会社を辞めてしまいました。
離職後
離職後、1か月間、寝たきりのような状態になっていました。昼夜逆転し、生活リズムはめちゃくちゃでした。さすがにこのままではまずいと感じた私はインターネットで情報収集を始めます。その結果「就労移行支援所」という施設を見つけました。
就労移行支援は障害福祉サービスの1つで、就職に向けて必要な知識や能力を身につけるための支援を受けられます。私は複数の就労移行支援所に見学に行き、そのうちの1つに通うことを決めました。
就労移行支援所
施設では、自己理解を深めたり、その結果出てきた困りごとに対して対策を考える、といったことをしています。例えば、誤字脱字などのミスは二重、三重チェックを行うこと、スケジュール忘れについては、スマホアプリのリマインド機能を使う、などです。
施設で学んで最も役に立っているものとして「コントロールフォーカス」という技法が挙げられます。これは簡単にいうと、自分がコントロール可能なものにのみ意識を向けるという技法です。これにより、自分ではどうにもならないものに対してある程度、割り切れるようになり、ストレス処理ができるようになったと感じています。
終わりに
私は現在も就労移行支援所に通っています。通う前と比べれば、前向きに物事を考えられるようになりました。ただ、今でも物事がうまく行かず、落ち込むこともあります。それでも、就職して経済的に自立するという目標のために、今後も努力を続けていくつもりです。
広汎性発達障害