「農福連携」について考える体験会、富山で実施

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Photo by Uday kiran on Unsplash

「農福連携」は読んで字のごとく農業と福祉を連携させる取り組みで、主に障害者施設が農業に従事することを指します。なかなか就労に結びつかない障害者と後継者不足にあえぐ農業従事者、両側にとって画期的な取り組みとして取り上げられています。

この農福連携について考える体験会が、11月19日に富山県富山市で障害者施設の職員や利用者を対象に実施されました。未だ机上論に過ぎない農福連携ですが、富山県自ら即売会を各地で開くなど力を入れている所もある分野です。

農業に取り組む施設で体験会

NPO法人「愛和報恩会」(富山市八尾町)は、実際に農作業を行う「FUNFARMのづみ野(以下、のづみ野)」という就労継続支援事業所(A型・B型とも)を運営しています。体験会も同事業所で行われ、県内の他事業所から訪れた職員や利用者は作物の収穫を体験するなどしました。

参加者らは農業分野への意識が高く、別のNPO法人代表は「農作物の加工などを実際に見て参考になる点が多かった」と体験を振り返っています。

のづみ野さんは農業だけでなく、収穫物を団子などに加工して販売するなどの作業もしています。施設長は「農作業の内容は多種多様で、障害の軽重に関わらず出来る作業は必ずあります」と農業中心の作業スタイルを選んだ理由を語ります。

農作業自体は有機栽培を中心とする、いわゆる「オーガニック」で行っています。また、土地の管理が体力的に困難な高齢者から水田を借り受けることで稲作にも従事しており、管理が行き届かない農地の保全にも貢献しています。

土地を借りることについても、「土地を守ることが地域を守ることに繋がります。力仕事ですが挑戦する価値はあるでしょう」と語っており、地域の高齢者にとってもありがたい存在であることは間違いなさそうです。

貸農園ビジネスとは違う

障害者を農業に従事させるとなると、どうしても「貸農園ビジネス」が頭をよぎってしまいます。貸農園ビジネスとは、ビニールハウス農園を作業する障害者ごと企業へ貸して法定雇用率の達成を手伝うものですが、借りた企業の業種に関わらず障害者の仕事は養液栽培における簡単な作業だけとなっており、障害者就労としては数字だけの代物です。

農園の管理や障害者の確保など難しいことは貸企業が引き受けており、借りる企業は障害者を本業に関わらせることなく法定雇用率を簡単に満たすことが出来ます。共生とはほど遠いシステムですが、この「裏技」を自治体ぐるみで積極的に受け入れる所もあるぐらい評価は高いです。

正直、貸農園ビジネスの存在がちらつくので農福連携には疑いの目を向けている訳ですが、のづみ野さんに限っては貸農園ビジネスとは決定的な違いがあるとみていいでしょう。

大きな違いは作物の行き先です。のづみ野さんでは作物の収穫に留まらず、団子や味噌やジャムなどへの加工も行って販売もしています。対して貸農園は、作物は本人か借りた企業へ無償で配られ市場へ出回ることはなく、やろうと思えば秘密裏に処分することも出来ます。両者の目的が異なっているのは、この点から分かると思います。

貸農園が採用する養液栽培には病毒に弱いという欠点があるのですが、市場に出さないのであれば気にすることも無いでしょう。しかし、のづみ野さんの農業は市場へ出すうえ、より難易度の高い有機栽培・減農薬栽培に挑戦しています。入所者で役割分担しているとはいえ、農家にとってハードルの高い方法へ挑んでいるのは、農業への意識が高いことの表れといえます。

農業に対する目線も障害者に対する目線も、大きく異なっています。どちらが「農福連携」を真剣に考えて取り組んでいるかはあえて語るまでもないでしょう。

単純作業から農作業のその先へ

これまで「障害者」というだけで思慮なく単純作業が割り振られていたのが、農業という数段も高度な仕事へ変わるかもしれません。勿論、障害者=単純作業から脱却できるのは喜ばしいことですが、障害者就労の観点では農作業のそのまた先が必要になります。

もし「農福連携」で終わってしまえば「農業は障害者にでもやらせておけばいい」という認識の蔓延にも繋がります。障害者に対し一種でも多くの職種を展開しなければ、単なる「厄介払い」の手段で終わってしまうでしょう。障害者を厄介払いしたい意識は既に貸農園ビジネスという形で顕現しています。

昔、「引きこもりは限界集落の住宅に住まわせればいい」という旨のコラムがネットで出回り、各方面から突っ込みを受ける事案がありました。恐らく筆者は「この方法なら引きこもりでも地域保全の役には立つだろう」などと人間を駒としてしか考えていなかったのでしょう。あの時は見事な総スカンでした。

「農福連携」に抱いている一抹の不信感は、あれに似たことが起こるかもしれないという危惧から出ています。障害者就労と農業従事者確保を同時に果たせるとして持ち上げられていますが、「農家が少ない?障害者にでもやらせておけ!」となってしまえば、それは職業選択の自由の敗北です。決して障害者の厄介払いで終わらせてはいけません。

参考サイト

障害者の就労広がれ 施設利用者、事業所向け体験会
https://www.chunichi.co.jp

NPO法人 愛和報恩会
http://www.cty8.com

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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