大阪・北新地ビル火災について、精神障害・発達障害者の私が思うこと
発達障害この度の火災により、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。
事件のあった12月17日の朝、家で家事をしていた私に代表である夫から電話がありました。「北新地で火事!ヘリコプター飛んでる!」「またー?この前あったとこやのに!近いの?煙危ないからすぐに逃げや!離れて!」先月も、この辺りで大きな火事があり、仕事と心療内科クリニックに行った帰りに食事をして家に帰ろうとしたら、出くわしてしまい大量の煙を吸ったので、火事がトラウマになっていました。心配なのでテレビをつけると、速報で北新地が火事で心肺停止の方がたくさんいると流れていました。火元は心療内科だと知り…驚きました。向かいにある大好きなロンドンティールームは、金曜日の朝によくテレワークで利用するカフェです。近くの書店も最近行ったばかりです。必ず何度も通る、大好きな場所でした。心療内科で火なんて使うかな?父が心配して、すぐに連絡をくれました。「私と夫は大丈夫です。」夫は、次の仕事のためここを離れました。ニュースでは逃げ遅れた方がたくさんいると。気になって、ずっとテレビを見ていました。放火の可能性?精神疾患の方を狙ったのかな?うちの会社にも来たらどうしよう…300メートルも離れてないから来るかもしれない。物凄く恐怖でした。次は自分かもと思いました…。ニュースを知って、連絡してくださった方もありました。近いので巻き込まれた方はいないのか心配をされる方もありました。もう、他人事ではありませんでした。心療内科って、皆、不安や恐怖を感じやすい方々なのに…怖かったやろうな…大丈夫かな…。
次の日の朝、うちの会社の利用者さんが巻き込まれた事を知りました。ショックで愕然とする夫と私。なんでこんなひどい事をするのか、悲しみと怒りが込み上げてきました。あの楽しかったたくさんの想い出の詰まった場所が、もう二度とワクワクして行けない場所になってしまいました。近くには、とても綺麗なイルミネーションがあり、美味しいお店もたくさんあり、この辺りが本当に大好きでした。大阪市北区曽根崎新地。ここで障害者ドットコムを夫と設立したのは、事件があった日と同じ12月17日でした。なんという偶然なのか。なかなか怖くて現場にも行けません。先月の火事でもトラウマになって体調不良になるのを治療したばかりなのに、またか…。私も夫も近くのメンタルクリニックに通っています。同じように、働く人のために土日の夜でも診察してもらえて、発達障害のプログラムもあってビルの中にある、とてもよく似た所です。ものすごい恐怖が襲ってくる。クリニックへ行くのが怖い。このように、怖くてクリニックへ通うことができなくなる人もたくさんいるそうです。本当は、その恐怖を主治医に話せば良くなるのに、なんということだろう…それでも行かないといけないので、頑張って行ってみると、出入口付近に座る人が多かったのです。もちろん私も。待合室の奥の方は、皆避けているようでした。
日曜日の夜、やっと現場に手を合わせに行けました。事件から2日経っていました。喉が苦しかっただろうと思い、お水をお供えしました。「こんな世の中、絶対変えてみせる。頑張るから!」と誓いました。帰ろうとしたら、記者から話しかけられ関係者が巻き込まれた事がわかると、あっという間に多勢の報道陣に囲まれました。「ご遺族が名前を公表されていないので一切話しません。」と言っているのに、どんな人だったか生きた証を伝えたいと、聞き出そうとしてくるので、「ご遺族の気持ちが一番大事なので、絶対話しません!」と大声で叫んだ。夫は私の事を「強くなったね。普通に人前で話せていたよ」と言いました。名前が一部報道されたら、次の日も、たくさんの記者から連絡がありました。「悲しみのところすみません…お話し頂けませんでしょうか?」そんな中、「福祉の仕事がよくわからないので教えてください。亡くなられた方の話はいいので。」と仰ってくださった記者がいました。それが今回、産経新聞の記事を書いてくださった方です。熱心に仕事の話を聞いてくださいました。やはり事件が中心に書かれますが、仕方のないことかもしれません。夫が話したように書かれている言葉に、私の話した言葉がたくさん使われていて、気持ちを伝えていただけました。「もしも犯人が、相模原の事件のように精神障害者を狙ったのなら、自分のところにもくるかもしれないと思って、めちゃくちゃ怖かったです。」と話したら、涙ぐまれました。大変優しい方でした。
今回は、メディアの方々といろんな話をしました。NHKのニュースでもクリニックに通院されている方への今後の支援について取り上げていただきました。差別や偏見について、報道について、どうしたらこのような事件を無くせるかなど、改めて考えるきっかけにもなりました。記者さん達も、葛藤の中、記事を書いたり報道をしている事がわかりました。私が、話さない!とあまりにも怒るので、「悪い事をしていると思っている」「申し訳なく思う」など、気持ちを話してくださる方もいました。私達も、この事件を意味のあるものにするために、こんな悲しい事が二度と起こらないように、どうしていったら良いのか、これからも考えながら行動していきます。孤立を無くしたい。差別や偏見を無くしたい。そんな社会になるように、少しでも変えていきますから。どうか、安らかに…