自然に子供が学びだす環境づくりvol.9 学習以前に必要なこと(『発達障がい~神からの贈り物~』第73回)
発達障害『発達障がい ~神からの贈り物~』 第73回 <毎月10日連載>
今年も残すところ3週間ほど。慌ただしさの中でただただ時間だけが過ぎてゆく、そんな年末がやってきましたね。
私の塾では相変わらずのんびりと子供たちと楽しい時間を過ごしていますが、先日、またあることを子供たちから教わったのでシェアしようと思います。
小学高学年の支援学校の生徒と動物カードで遊ぶ中で動物を英語で、発音もカタカナ英語でなく、しっかりとした発音で教えてあげると短時間の間で覚えていった、そんなことがありました。彼は1年ほど前までひらがなもカタカナも書けなかった、現在も繰上げの足し算は厳しい、そんな子が。
ただし、アルファベットは使わず、もちろんカタカナも。聞き取りづらい発音はゆっくりと何度でも、口移しで伝えてみた。10分も経たない間に20単語以上、正確に覚えられた。
もちろんこれは私と彼の1年以上かけて育んだ信頼関係の上に成り立っているので誰にでも通用するわけではない。その点は理解して於いてくださいね。
皆さんが幼少の頃を思い出してみてください。もしくは子供がいる方はご自身の子供の幼少期を。人は文字を覚える以前に音声としての言葉を覚えるはずです。最初は犬やネコ、好き、嫌い、食べる、食べない、といった単語から徐々に文章になっていき、その後に文字を学ぶ、これが一般的な学習方法だと思われます。
しかし、残念なことに発達障害の有無に関わらず上記のようにしっかり言葉を学べていない子供が一定数存在します。言葉がしっかり入り切っていないところに文字を学習させてしまうと…、足し算がおぼろげな状態のまま掛け算割り算へと進むことと近いと思いませんか?
余談ですが日本の英語教育もアルファベット、単語、そして発音の順に学ぶのが一般的ですが、だから効果が出づらいのだと私は感じています。
さて、前述したように言語習得は音声としての言葉の次に文字としての言葉を学ぶ方が効果的だと述べましたが、実際にどのようにすればよいのかについて述べます。
幼児は2,3歳頃から言葉が発達しだすと思われますが、できるだけその時期に多くの対話を持つことで言語野が大きく育つのではないでしょうか?ただし、前述の通りそれらの経験値が極端に低いと思われる子供が多数存在します。そこで、冒頭の話しを思い出していただきたい。10分ほどで20以上の英単語、彼は既に小学高学年、だけど2,3歳の子供がするようなことでも真剣やれば効果が発揮される。
まさに対話による学習は学校教育以前にとても大切なものだと言えないでしょうか?
付け加えて説明すると、私が彼に発音を口移しする際にほとんど日本語を使わなかった。This is Zebra. Say it again! What is this?など、彼にとっては全く意味の分からない言葉の羅列に違いないはず。しかし、私の表情を読み取って私が何を言わんとしているかを一所懸命感じながらついてきてくれた。これはコミュニケーションのトレーニングとしても大きな意味を持つものではないでしょうか?
発達障害≒コミュニケーション障害のように思われがちであるが、上記のようにしっかりとした対話の経験の有無が要因の一つとは考えられないだろうか?
以上のような経験から私自身も子供たちとの接し方を考え直すよい機会となり、以前よりも対話を大切にするようになりました。気がつけば最近は子供たちがたくさん駆けつけ定員オーバーの時間帯が増えつつあります。皆それぞれにそれぞれの学習を楽しんでいるように私には映ります。本当にありがたいことです。
さてさて~、言っている間に年末年始。今年も私にとっては良い一年でした。皆さんはどうでしたか?来年が今年以上に良い年になるように、『対話』をテーマに過ごしてみませんか?
発達障害