触法者の再犯予防を実践する大阪府地域生活定着支援センターの取り組み

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触法者支援を行っている大阪府地域生活定着支援センターの相談員の三分一直瑠(さんぶいちなおる)さんへインタビューしました。法に触れた人間の社会復帰を支援する同センターは、福祉と司法の両面で物事を考えています。

地域への輪を繋ぎ直す

大阪府地域生活定着支援センターでは、日々の個別支援をベースにしながら、「なんでRing」というワークショップなどセミナーや勉強会を積極的に行っています。先進的な支援活動を行っている方などをゲストに迎えてお話を聞き、情報共有や意見交換を行っています。

──「なんでRing」の名前の由来を説明してください
「なぜ犯罪に至ってしまったのか、事例を通して突き詰めていくところから『なんで』と、輪を意味する『Ring』を組み合わせました」

──チームを作るきっかけとなるワークショップという感じですか
「そうですね、当事者を刑務所から地域へ繋いでいく役割でもあるので、地域の方々の協力がどうしても欠かせません。我々はあくまでも繋ぎに過ぎないので、いつまでも関わらない方がいい場合があります。そうなると地域の受け容れ環境も必要なので、チーム作りの目的はありますね」

──触法者への支援という意味では高齢者や障害者の括りはつけずにやっていますか
「再犯に至る人には理由があるので、再犯を未然に防ぐため支援に繋げています。中にはグレーゾーンの方もおり、高齢者でも要介護認定の方は少なく要支援に留まる方、知的障害でもB1に留まる方が結構いらっしゃる印象がありますね」
「書類を見るだけではなく、実際に会って話さないと分からないところは多いですね。診断名や障害名だけでは分かりません」

司法と福祉の橋渡し

──普段はどのような活動をされていますか
「地域生活定着支援センターとしての活動が大部分を占めており、その業務は大きく分けて3つあります。ひとつは特別調整で、出口支援とも言っているのですが、満期で出所して矯正施設に入っている方を福祉に繋いでいきます。保護観察所からの依頼を受けて面談を重ね、その方に合った場所を調整して引き継いでいきます。その後のフォローアップもやっています」
「ふたつは、出口と逆に、入口支援と呼んでいるものです。被疑者や被告人の段階で行う支援で、不起訴や執行猶予で刑務所に入らなそうな方を福祉に繋げます。基本的にやることは出口支援と一緒です」
「最後は相談業務です。日常的に電話などで色々な相談が舞い込んできます。そうした相談に答えていく業務です」

──特別調整と一般調整の違いは何ですか
「特別調整というのは、引受人がいなくて出所後の行き場がない人が対象で、刑務所で選定されます。一般調整は帰る家はあるけれど福祉的な調整が必要な人への調整です。一般調整の件数は少なく、原則は特別調整になります」

──司法関係との繋がりが強いように感じます
「よく言われるのが、司法と福祉の橋渡しです。原理は別ですが、それでもお互いを調整したり理解を深めたりする必要があります」

本人もまた困っている

──今後の展望や役割や課題について教えてください
「私たちの目標は地域とのつながりを深めることです。そのため、地域の理解をさらに深める必要があります。私たちは繋ぐことを基本として考えており、繋いだ先の関係性を築くためにも、各所とのネットワークの構築が重要だと考えています」

──専門職でさえ触法者は難しいという偏見はありますか
「そういう偏見もあるので、実際に再犯に至ることもあり難しいですが、基本は触法に関わらず本人もまた困っている前提に立つことです。触法行為だけを取り上げるのではなく、そこまでの経過や背景にも目を向けるのが大事ではないでしょうか」

──地域生活支援センターの周知度は低いですが、その辺りについてどう考えていますか
「出口支援や入口支援に関して言えば、独自に開拓するのではなく刑務所や保護観察所から依頼が来るので、私たちに出来るのは理解を広げることだけではないかと思います」

──再犯率を下げるために意識していることはありますか
「再犯の問題は誰もが解決を望むものですが、繰り返してしまう人もいるという現実を受け止める必要があります。ただ、それだけで人を『ダメな奴』と判断するのは短絡的であり、適切な理解と対応が求められます。数字や再犯率を重視することも大切ですが、その背景や原因を深く理解し、短絡思考に陥らず対応することが大切だと考えています」

──再犯すると他人にも影響が出ますし、難しいですよね
「だからこそ福祉と司法の両輪ではないかと考えています。司法の視点からしても、再犯を防ぎたい。福祉の視点からすれば、加害者も困っている人である。その両面の思考が大切ではないでしょうか」

──最後に何か伝えたい思いやメッセージはありますか
「『なぜ加害者を支援するのか』とよく言われます。被害者支援に比べると丁寧に伝えないと分かりにくい部分はありますね。加害者は初めから加害者ではなく、色々な背景が積み重なっています。再犯を抑止するには、単純に触法者だからと指弾するのではなく、支援していくことが重要ではないかと思います」

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、障害・病気をもつ方の仕事や暮らしに関する最新ニュースやコラムなどを発信していきます。
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