ヒトが冬眠状態に?「六甲山遭難事故」が教える本当の個性

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Photo by Thomas Bonometti on Unsplash

「障害は個性」とたまに言う人がいます。本人が言えば現実逃避、他人が言えば合理的配慮をしない言い訳となり、どちらにせよ「逃げ口上」でしかありません。有難がる文言ではないです。

「個性」と呼ぶに値するものは、それがプラスに働いたときだけです。山岳事故の中でも不思議な理由で生還したという「六甲山遭難事故」は、常識的には死亡したであろう状態を「個性」だけで覆した最たる事例といえるでしょう。

2006年10月、神戸の六甲山でバーベキューをした帰りのことです。遭難男性は失くしたケーブルカー切符の買い直しをケチって、自力での下山を強行しました。麓まで1.7kmと短いうえ、地元の小学生すら気軽に立ち寄る場所だったので、自力で下りられると判断したのでしょう。しかし遭難男性は、酔っていたのもあってか途中で足を踏み外して10mも滑落し、骨盤を折って歩けなくなってしまいました。

遭難男性は24日後に発見され、辛うじて生きてはいたものの体温は22度にまで低下していました。搬送直後に心肺停止となるも、懸命な救急活動の甲斐あって遭難男性は一命を取り留め、目立った後遺症も無かったそうです。

遭難男性の荷物からは焼肉のタレと飲料水が残っており、これを食いつないだものと見られていました。しかし、後の記者会見で「タレを舐めてはみたが塩辛いので諦めた」とこれを否定。遭難の翌日に低体温症で意識を失ったことも判明し、識者らは騒然とします。山中で20日以上意識を失った末に生還するというのは前代未聞でした。そもそも低体温症だと30分程度で脳に不可逆のダメージを負います。

この不可思議な現象をどうにか説明しようとしたのが「冬眠」の二文字でした。動物の冬眠状態は、体温と心拍数を低めて極限までエネルギー代謝を抑え、低温にも耐えられるようにします。こうした体や細胞の動きを出来るのが、クマやシマリスのような「冬眠する動物」です。

山中で20日以上も意識を失いながら、救命が間に合い後遺症もなしに生還できたのは、冬眠に近い状態になっていたからではないかと結論付けられました。ヒトにも「HP」という冬眠ホルモンに“似たもの”があるそうで、体質的に冬眠状態になれる人間も存在するかもしれないという訳です。クマのような冬眠はさすがに無理だとは思いますが。

最後に関係者はこう語りました。「ヒトにも冬眠できる個体とそうでない個体があるのだろう。シマリスにも冬眠のできない個体がいるように」冬眠をする動物にも冬眠のできない個体がいるという方が個人的には気になりました。これがクマだと「穴持たず」となり、気性が荒く冬でも歩き回る危険な状態となります。プラスに向く「個性」を持てるかどうかは、ヒトもクマもシマリスも重要なファクターであることに変わりなさそうですね。


参考サイト

遭難24日間の男性、ありえないが「本当に冬眠かも」
https://kuma-3.hatenadiary.org

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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