1月の最終日曜日は「世界ハンセン病の日」です
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「ハンセン病」って知っていますか?毎年1月の最終日曜日は「世界ハンセン病の日(世界ハンセン病デー)」です。ハンセン病の正しい知識を広めるため、フランスの社会運動家、ラウル・フォレローが提唱した記念日が「世界ハンセン病の日」です。
ハンセン病ってどんな病気?
ハンセン病は、らい菌が皮膚や神経を侵す感染症です。らい菌は、増えていくのがとてもゆっくりで、10年以上かけて症状が進んでいくこともあります。 初期症状としては、皮膚に白や赤などの斑紋ができます。進行していくと、皮膚が触れる感覚や温度や痛みの感覚が無くなっていきます。
また、麻痺など運動の障害が起こることもあります。治療が遅れてしまうと、手や足などが変形してしまうこともあります。
筆者がハンセン病について知ったのは、遠藤周作さんの作品「わたしが・棄てた・女」がきっかけです。約20年も前ですが、とても衝撃を受けたのを覚えています。この小説にはハンセン病と診断された「森田ミツ」が病院に入り、後に誤診であるとわかった後も、病院に残り奉仕活動を続けた姿が描かれています。
また、映画「もののけ姫」もハンセン病のことを題材にされているそうです。登場人物「エボシ」が病を持つ人たちも人として働いて生きていけるようにと「タタラ場」を作ります。その中で、ハンセン病の患者を描いたことを、監督の宮崎駿さんは2016年に公表しています。
ハンセン病の感染と治療
ハンセン病の原因であるらい菌が感染する経路は、まだはっきりとはわかっていません。 感染力はとても弱く、発病することはめったにありません。乳幼児期に治療していない患者との接触を何度もし、大量のらい菌を飛沫などで吸い込むといったことがない限り、まず発病しないと考えられています。
ハンセン病に対してほとんどの人は自然の免疫があります。現代では抗生剤をつかうことで完治する病気であり、初期に治療を行えば後遺症を残すこともありません。
ハンセン病の歴史と偏見
ハンセン病は完治する病気です。 感染力は非常に弱いので、ハンセン病から回復した人や現在治療中の人から感染することはありません。しかし昔、治療法がなかったころには変形など後遺症の残った人も多く、そういった外見や感染に対する恐れから、患者たちは何世紀にもわたって、隔離されたり偏見を受け、差別されてきました。
近年、治療方法が確立され、世界の登録患者数もこの30年間で約540万人から18万人まで劇的に減少し、世界の新規患者数は年間約20万人にとどまっています。しかし、治療方法がわかってからも、日本では「らい予防法」という法律によって、廃止される1996年まではハンセン病患者の隔離が行われ、回復した人たちの自由が奪われていました。
また、らい予防法の廃止から20年以上経った今でも、偏見・差別が残っています。ハンセン病が怖いものではなくなった現代でも病気の知識がないための誤解や、無関心な人による偏見は残っています。ハンセン病から回復しても、平均83歳以上と高齢の方が多いため、療養所の外で暮らすことに不安があり、そのまま療養所で生活を続けざるを得ず、いまだに苦しんでいる人が多いのが現状です。
ハンセン病への取り組み
ハンセン病の病気と差別をなくすために、ハンセン病の治療法の開発や、ハンセン病をゼロにしようという医療の取り組みが続けられています。また、回復者の自立の為の支援、偏見・差別をなくす活動が様々なNPOやボランティア団体などによって行われています。
日本財団では、らい予防法から20年となった2016年にはハンセン病に対する知識の啓発を目指し「THINK NOW ハンセン病」キャンペーンを展開し、多彩なイベントが開催されました。ハンセン病文学をテーマにビブリオバトルと呼ばれる知的書評合戦や「ハンセン病を考えることは、人間を考えること」と題した写真展などが行われました。
ハンセン病はまずなにより「知る」ことが第1歩になります。 ハンセン病と闘った人々の歴史や記憶が次第に失われつつなる中で、暗闇の中での生活を強いられた患者・回復者の言葉に耳を傾け、ハンセン病に関わる悲劇の歴史や記憶を風化させないために、若い世代にもしっかりと受け継いでいくことが求められています。