ASDの私が持っている感覚過敏
発達障害出典:Photo by Roberto Canedo on Unsplash
発達障害のある人のなかには、生活の上で「感覚過敏」による困りごとを抱えている人も多くいます。しかし一方でこの感覚過敏というものを当事者以外の人が理解するのはとても難しいです。個人の感覚は他者と共有できないものですし、当事者本人も自身の困りごとが感覚過敏によるものだと自覚していない場合があるからです。
このコラムでは「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の当事者である私の感覚体験をいくつかご紹介します。感覚過敏の一例として理解を深める助けになれば幸いです。
感覚過敏とは
感覚過敏とは発達障害のある人にしばしば見られる特性で、特定の感覚の刺激を過剰に強く感じ、苦痛と感じるような状態のことをいいます。たとえば聴覚過敏なら「泣き声や電子音など特定の音が苦手」視覚過敏なら「強い光やチカチカした光が苦手」などが挙げられます。
「どの感覚への刺激」をつらいと感じるか「どんな種類の刺激」がつらいと感じるかは人によって様々なため、その人に合わせた個別の対応が必要となってきます。
私の聴覚過敏
私には2種類の「聴覚過敏」があります。
1つめは「特定の音がとても苦手」です。たとえば歯医者で使われるバキュームの音が耐えがたく苦手です。歯を削るなどの痛みには平気で耐えられるのですが、あのバキュームの音を聞くと思わず体が硬直してしまうほどです。
また、キンキン響くような人の声も苦手で、大学生のころ苦手な声の講師の授業で耳をふさいでしまったことがあります。そのとき私は教室の一番前の席に座っていたので、講師の目の前で耳をふさぐ形になってしまいました。客観的に見ればとても失礼な行動をとっていたことになります。
2つめは「複数の人が同時に話しているときの聞き取りが苦手」なことです。大通りで友達と会話するような場面では、友達の声と周囲の人の声が同列に聞こえてしまって、目当ての音だけを聞き取ることができなくなるのです。この聞き取りづらさは雑踏の声だけでなくテレビやラジオから流れる音声でも同じで、車の中で会話するときはカーラジオの音声をオフにして話をしています。
環境音や英語の楽曲なら同時に聞こえていても問題なく会話できるので、どうやら日本語が重なって聞こえる時だけに起こるようです。
私の触覚過敏
私はどちらかといえば聴覚過敏よりも「触覚過敏」による困り感のほうが強く、数も多くあります。では1つずつあげていきます。
まずは服についているタグの感触が苦手です。これは同じ悩みを持っている人も多くいるかと思います。私の場合どうしても気になるときはタグを切り取ってしまいます。
続いてあげるのは首元への刺激が苦手なことです。たとえば私が現在通っている就労移行支援事業所では首からヒモで名札をかけているのですが、私はこのヒモの感触が苦手なので、襟付きの服を着て首に直接当たらないようにしています。
寝るときに体にかける掛け布団にも困っていて、これの端が首元にかかっていると気になって眠れません。そのため胸まで下げるか、あるいは顔まで上げるかして使っています。また、寝具に関しては材質にも苦手なものがあります。毛布やタオルケットのような起毛素材のものはざらざら感が気になってしまうので、肌に接触するのは「つるつるさらさら」としたシーツだけになるような形で寝具をセッティングしています。
最後にあげるのは耳の触覚過敏です。私は耳への刺激がとても苦手で、イヤホンなども耳に入れこむタイプのイヤホンはまったく使用できません。ではヘッドホンはどうかといえば、こちらは30分ほど使っていると蒸れるためか、耳の中がかゆくなってきて使用を中断せざるをえなくなります。そのため私はイヤホンを使う必要のあるときはパッドのついた耳掛け式のものを使っています。
おわりに
ここまで私が持っている感覚過敏をご紹介してきましたが、あらためて書き出してみると自分で考えていた以上にたくさんあるものです。細かいものも含めればまだまだあるかと思います。
また、コラムを書くにあたって自分の感覚過敏について思い返してみると、苦手な刺激に対しての対処もおこなっていたことに気がつきました。多くは子供のころから自然と身についていたことです。自分の苦手な刺激をコントロールする方法を身につけることが、感覚過敏を和らげるのに有効な手段だということでしょう。
参考文献
【発達障害のある人の感覚の問題】
http://www.rehab.go.jp/ri
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自閉症スペクトラム障害(ASD)