パニック障害の薬をやめて80日経ちました。辛い闘病生活を支えてくれた本を紹介します!
『病気のデパート 放浪記』 第九話 <毎月1日・15日連載>
化学物質過敏症、電磁波過敏症を発症して、日常生活がまともに送れなくなった時、辛い症状と孤独を癒してくれたのは、本と音楽でした。今日は、励まされた小説を紹介します。小説は楽しくて読んでいると現実を忘れて夢中になっているので、本当に助かりました。
まず、本屋さんで気になった、「コーヒーが冷めないうちに」川口俊和。
過去に戻れるという噂の喫茶店での物語は泣けました。私は「過去に戻りたい。あの時こうしとけばよかった。」と思うことがよくあります。登場人物がそれぞれ過去に戻り、後悔の思いを抱えながらも、心に変化が起こり、現在を爽やかに生きている姿にとても感動しました。
記憶が消えていく男と看護師の話や、心臓の病を抱えたこの喫茶店で働く女性の話など、病気を抱えながらも日々愛に溢れている様子が愛おしいと思いました。生きている限り、別れは必ず訪れるので、この本を思い出しては後悔をしないように毎日を生きたいと思います。
それから食事の風景がとても素敵でおいしそうな小説、「あつあつを召し上がれ」小川糸。
この味を忘れることは、決してないだろうー。と思う大切な食卓をめぐる7つの物語が感動で、とても心が温まりました。幼い頃に今は亡き母から伝授されたおいしいおみそ汁の作り方や、天然水で作った富士山みたいなかき氷をおばあちゃんに食べさせたくて自転車で走る「バーバのかき氷」など、食べ物がとても心に染み込むシーンがたくさんあり、食欲がわいてくる作品でした。食べ物や食事の時間を日々もっと大切にしようと改めて思いました。
それから、架空の妹と昔話に興じ、そんな記憶で日常を満たしている、五十代にして高齢者向きのマンションに住む主人公を描く、「ちょうちんそで」江國香織。
私は江國香織の本が大好きで、その世界に浸っているのが心地よくて幸せなのですが、主人公の雛子がビスケットをミルク紅茶に浸して食べるところがとても好きです。
死んだ母親が好んだビスケットの食べ方で、姉妹が離れてもいつでもそうやって食べていました。育った家庭のそういうずっと大切にしたいようななにげないシーンが温かくてほのぼのしてて、切なくて大好きです。
最後は、深夜0時の都会のファミレスで熱心に本を読んでいた女性の一夜の行動と心の動きを時系列で描く、「アフターダーク」村上春樹。
今はあんまり関係がうまくいっていない、眠り続ける美しい姉への気持ちが描かれていて、姉妹がまた元気に元の仲良しだった頃の二人に戻れたらいいのになぁと思いながら読んでいました。深夜の都会の夜が明けるまでの登場人物の様子に引き込まれてあっという間に読んでしまいました。
塗り立てのペンキや動物の毛や、たくさんのアレルギーと心に闇を抱える姉との関係も気になるし、いろんな人物が描かれているのもおもしろかったです。
小説って現実ではないので、それぞれの作家の世界に惹き込まれて楽しめるので、読んだ後はストレスも解消されて気分も前向きになるのでよいですね。また本屋さんに行きたくなりました。