北杜夫と双極性障害〜家族とともに歩んだ日々
双極性障害(躁うつ病)出典:https://www.pakutaso.com/
自身の船医としての体験を綴った「どくとるマンボウ航海記」の大ヒットにより、マンボウ先生と呼ばれるようになった北杜夫さん。2011年に亡くなった彼は自身の「躁」「鬱」のエピソードを著書にたくさん残しました。
その親しみやすくユーモア溢れるエッセイから、双極性障害を持ったご本人の気持ちや、ご家族の苦労などをご紹介したいと思います。
双極性障害(躁鬱病)の分類
双極性障害は大きく分けて、双極性障害Ⅰ型、双極性障害Ⅱ型、気分循環性障害があります。古くから躁鬱病と呼ばれ、現在の診断名は、より患者さんの症状に沿った治療を進めるため、「双極性障害」として前述した3型に分けられることが多くなりました。
精神科医でもあった北杜夫さんは、著書「マンボウ恐妻記」の中で自身を「躁鬱病」と診断されていますが、彼は双極性障害Ⅰ型と思われるエピソードを数々したためられました。
北杜夫さんの「躁」「鬱」エピソード
北杜夫さんは双極性障害のことを「世間にもっと知ってもらいたい」、「躁鬱を持っていても生活できる」という信念から自身の体験談を読みやすく書かれています。以下、北さんの著書「マンボウ恐妻記」から北さんの経験談をまとめます。
躁状態
・株にのめりこみ、親戚、友人、出版社から合計1,000万以上の借金をする
・衝動的に高額な買い物を繰り返してしまう
・奇抜なアイデアで起業を起こそうとする
・普段穏やかなのに、家族に「バカ野郎」「ノロマ」などの暴言を吐く
・原稿を普段の5倍程の速度で書ける
鬱状態
・外の世界に興味がなく、絶望感にとらわれる
・一日中着替えられず、布団で過ごす
・原稿を書くのが遅く、完成度が低い
・死ぬほど辛い気持ちになる
・過去を振り返って後悔ばかりしてしまう
ご家族の反応
エッセイの中では妻喜美子さん、娘由香さんが度々登場します。
北杜夫さんは結婚された後、躁状態が顕著に現れるようになり、喜美子さんは夫の横暴に耐えられず、実家に戻ったこともあるそうです。
そして鬱状態になると、当初喜美子さんは「病気が治った」と安心していたそうですが、またやってくる躁状態に対し、戸惑いながら徐々に夫を叱り飛ばし始めます。
この夫婦の攻防戦は大変おもしろく、喜美子さんは億することなく言い返し、正論や一般論を交えて諭します。自己主張もしっかりされ、夫の性格や生活に合わせるのではなく、服を買ったり友達と出かけたりご自分の生活をしっかり持っていらっしゃったことが印象的でした。
娘由香さんは、喜美子さんの味方をすることもあれば、時には杜夫さんの一風変わったアイデアにご協力されたりしていました。
ご家庭を持たれた後も近所に住んでご両親を支え、今はエッセイストとしてご活躍されています。
筆者は「双極性障害を患っている当事者のエピソードを知りたい」と思って北杜夫さんの本を読んでみました。難しいのかと覚悟していたのですが、とても読みやすくおもしろいのですぐに読むことができました。
同じ障害を持った方のお話は共感できたり、自身の病気との付き合い方の参考になります。
また、ご家族もご本人の病状や辛さ、接し方のヒントが得られると思います。
最近は芸能人や著名人が病気や障害を公表し、執筆されている方も多いですね。ご興味が湧いたら、是非気軽に読んでみてください。
参考文献
北杜夫(2005)『マンボウ恐妻記』 新潮文庫.
双極性障害(躁うつ病)