「さぁ、ここからだ」(セコラム!第14回)
『セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜』 vol.14 <毎月25日連載>
「もう終わってしまうんだ。」
11月11日、尼崎市の橘公園で開催した「ミーツザ福祉2017」が終焉した瞬間、僕の口からこの言葉が自然とこぼれました。焦燥感と後悔が入り混じった、何ともいえない感情でした。もっと続いてほしかった。もっと良いものにしたかった。
ミーツザ福祉の説明は下記の通り。
「尼崎ではハンディキャップを持つ方と一般の方で交流できる「市民福祉のつどい」というイベントが、1982年より続いています。2017年度からは、初めてそのイベントについてみんなで考えよう!もっと素敵なものにするアイデアを出そう!ということで実行委員会をオープンな形式で進めています。福祉に関心がある方もない方も、障害を持つ方もそうでない方も、尼崎に住んでいる方もそうでない方も、どなたでもお越しいただくことができます。ワークショップに参加いただき、関心が深まった方は、実行委員会メンバーとして継続的に関わっていただくことができます。みんなで企画を磨いていって、11月11日には本番を行います。みんなでつくりあげるみんなのイベントになれば、福祉の風景も変わるのではと考えています。」(ミーツザ福祉FBページより引用)
僕はコア実行委員として、ステージチームリーダーとして、4月から11月まで8ヶ月間ミーツザ福祉に関わりました。
このイベントの特徴の1つは、オープンということ。毎月1回の話し合いはオープンミーティング方式で、参加したい人が参加することができました。そこからさらに関わりたい人は、ステージチームやみんなで体験チーム、出展チームなどのどこかのチームに所属し、一緒にイベントのことを考え、一緒につくりあげていきます。
この場が非常に面白かったです。1人ひとり考え方は違うし、1人の「快」と「不快」のポイントは違います。全員が完璧な「快」を得ることは難しいけれども、全員がほどほどの「快」を得ることは工夫次第で可能です。その工夫を試行錯誤し、全員がその場を共有できるようにしました。例えば、目が見えない人が話し合いのグループにいらっしゃれば、指示代名詞を使わず、具体的に意見を伝えるようにルールを決めたり、耳が聞こえない人が話し合いのグループにいらっしゃれば、口を大きく広げ、丁寧に話したり、模造紙に意見を書きながら伝えたりしました。でも毎回「これで本当に意心地が良かったのかな」と何とも言えないモヤモヤが募りました。
僕は以前障害者福祉の仕事に従事していました。様々な障害特性を持った人たちと過ごし、彼らの生活に伴走していきました。その経験のなかで、障害特性や接し方をカテゴライズしていきました。それらをベースに個人に合わせたサポート方法を模索し、実行していました。
ミーツザ福祉では、仕事から得た方法は通用しませんでした。対個人ではなく、個人を含めた対集団だからこそ、普段の工夫だけではうまくできなかったのだと思います。でも、ミーツザ福祉を進めていく過程で分かったことが1つありました。それは「わたしとあなたの違い」です。当たり前なことですが、わたしとあなたは考え方も顔も何もかも違う。まずはそこを意識していく。そこを起点とし、わたしとは違うあなたが一緒にいて、気持ちの良い空間にするにはどうしたらいいのだろうかを想像していくことができます。
これは障害があるからではなく、わたしとは違う誰かと一緒に何かをしていくときの大前提となります。わたしと対峙していくことが、福祉のはじまり。わたしをくっきりすることで、誰かのことをきちんと意識することができる。誰かが抱く「不快」に気づき、ほどほどの「快」を得る工夫を考える。ミーツザ福祉に関わることで、そのように考えるようになりました。
また、障害福祉というニッチでマイノリティな分野が、この界隈より離れたところに及んだことも「ミーツザ福祉」の功績でしょう。良い意味でも悪い意味でも、障害福祉の敷居が低くなりました。さぁ、ここからだ。来年も再来年も開催します。ぼくも関わり続けていきます。さぁ、ここからだ。