当事者が思う新たな制度~精神障害者の雇用窓口拡大
仕事昨年12月22日、厚生労働省は2018年4月より、企業の精神障害者雇用を行いやすくする特例措置を設けると発表しました。
参考記事:精神障害者、雇いやすくする特例措置 厚労省、来春から (朝日新聞 2017年12月24日)
今回はこの記事を読んで、編集部の当事者であるメンバーがどう感じたかを、それぞれの視点から述べさせていただきます。
自分に合った仕事を長く続けられることが大事
職に就くということは、進学や結婚など、人生の分岐点の1つだと考えます。これらは1度決まるとそこから抜け出すのは大きな負担となります。仕事も同じです。「飽きたからやめる」ということはできなくはないですが、決まったところから抜け出し新たな道を探るのは決して容易ではありません。
そういう意味では、いち従業員に長く働いてもらうという考えのもと、このような特例措置を設けることに何ら不思議な事はありません。こちらがギブアップしそうなときでも、企業の配慮により、当事者や上司の配置転換が行われる可能性があります。定年まで働き続けることが全てではない世の中ですが、1つの企業で長く勤める選択の方が、企業側、雇用者側双方にとって良いものだと考えます。
いち精神障害者として思うこと
わたし自身、精神障害者(統合失調症患者)と言うこともあり、今回のニュースは大変喜ばしいものだと考えます。これを差別だと言う方もいますが、慢性的な人手不足の現状に加え、働ける身体障害者の方の多くがすでに就労済みであるため、精神障害者から雇える人を少しでも増やそうという企業の努力は間違ったものではなく、むしろ正常なあり方なのではないでしょうか。
わたしが所属していた会社では、あまりこういった点に配慮が無く、車椅子の方や精神障害の方は見受けられず、その点では残念だと思います。このニュースを読んで、近い将来、どんな会社にも精神障害のある人たちが当たり前のように存在する。そんな未来が間近に迫っているのかもしれないと思いました。
みんな1になろう
短時間労働者、すなわち20時間以上30時間未満/週の労働者を0.5カウントとして障害者の雇用率を算出する方法が、実務に即していないように思われます。管理する側の負担は短時間でも長時間でもさほど変わりないためです。私自身、アルバイトの方を管理する業務をしたことがありますが、シフトが月1時間でも100時間でも処理は1人分です。すくなくとも100倍の手間にはなりません。
精神障害者は特に短時間労働者の割合が高く、その雇用を促進するための時限特例と思いますが(下表参照)、将来的には、精神障害者だけでなく、身体・知的障害者の方に対しても、20時間以上ならば1カウントとするのが望ましいと考えます。
表:民間企業における雇用状況
障害の分類 | 週30時間以上 | 週20~30時間未満 | 短時間の割合 |
---|---|---|---|
身体 | 217,691 | 25,242 | 10.4% |
知的 | 75,938 | 18,379 | 19.5% |
精神 | 34,700 | 14,656 | 29.7% |
* 厚生労働省「平成28年障害者雇用状況の集計結果」より算出
おわりに
障害者白書によると、精神障害者は392万人、数字の上では身体障害者とほぼ同程度となっています。現状の雇用の偏在を埋める措置としては、今回の特例は妥当と考える人が多いようです。みなさんはどう思われますか?
参考文献
精神障害者、雇いやすくする特例措置 厚労省、来春から(朝日新聞 2017年12月24日)
https://www.asahi.com/
平成28年障害者雇用状況の集計結果 – 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/
平成29年版 障害者白書(全体版) – 内閣府
http://www.cao.go.jp/