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統合失調症とは?けっして「怖い」病気ではありません
出典:http://www.photo-ac.com/main/detail/134029?title=男性と影7
統合失調症は、幻覚や妄想、被害妄想といった症状が見られ、脳内の精神機能のネットワークがうまく働かなくなる障害です。新薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初発患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになりました。統合失調症の人は、日本には約100万人程度いると考えらています。発症は、思春期から青年期から30歳代に多い病気です。
統合失調症の症状と病型の分類
統合失調症の症状は主に次の4つのような症状があります。
・あるはずでもないものが現れる幻覚や幻聴(陽性症状)
・感情表現が乏しくなる、意欲が低下する(陰性症状)
・日常生活の会話や行動に困難をもたらす(生活のしづらさ)
・自分が病気であるという自覚がない(病識の欠如)
統合失調症は大きく3つのタイプに分けられます。
破爪(はか)型(解体型)
思春期から青年期にかけて発病することが多いために破爪型と呼ばれます。
最初に、感情の起伏がなくなったり、意欲が減退するなどの陰性症状が現れ、その後、徐々に陽性症状が出てきます。
症状は慢性化することが多く、人柄が変わってしまうなど予後はあまりよくないとされています。
緊張型
青年期に急に発病します。
大声で叫んだり、奇妙な姿勢をとるなどの緊張病症候群や行動の異常などがみられます。
多くは数カ月で消失しますが、再発もまれではなく、再発するたびに破爪型に似た病像に変化していく場合があります。
ただし、人柄が変わってしまうことは少なく、破爪型よりは予後はよいとされています。
妄想型
破爪型や緊張型よりも発病年齢が遅く、多くは30歳前後に発病します。
幻覚や妄想が中心で、陰性症状はそれほど現れません。
対人コミュニケーションは比較的良好に保たれていることが多く、人柄の変化もあまり目立ちません。
予後はよいとされています。
統合失調症がもたらす、生きづらさ
統合失調症の症状は人によってさまざま。急性期に多くみられる幻覚や幻聴(普通の人には見えないものが見えたり、聞こえるはずのない声が聞こえたりすること)のほか、「根気や集中力が続かない」「意欲がわかない」「元気そうなのに、なぜか仕事や家事が億劫」といった症状は病気としては認知されにくく、他者には「怠けているだけ」「努力不足」とみられる場合があり、本人も病気と気付かないことも少なくありません。
そして脳の働きにも不具合が起こり、集中力、記憶力、整理能力、計画能力が著しく低下した結果「注意力散漫」「抽象的に考える能力の欠如」「問題解決能力の欠如」といった症状が現れることもあります。例えば、本が読めなくなったり、映画やTV番組のストーリーが途中でわからなくなったり、意思決定が必要な仕事ができなくなったり。言語、動作、運動などのあらゆる面において正確な把握が難しくなると、日常生活のみならず社会生活にも大きな支障をきたします。また、他者との協調性も取りにくくなり、意思の疎通ができないため、会社や学校でも一人だけ浮いてしまうこともあります。
発症の原因は?キーワードは「ドーパミン」
統合失調症の原因は、まだはっきり分かっていませんが、脳の機能に障害が起こり、働きが阻害され発症することが明らかにされつつあります。通常、脳の中では「神経伝達物質」という化学物質を介して、神経細胞間でさまざまな情報が伝達されています。しかし、この神経伝達物質が過剰に働いてしまうと、情報伝達に混乱をきたしてしまい、幻覚・幻聴といった症状が出現すると考えられています。統合失調症で注目されているのは「ドーパミン」とよばれる神経伝達物質で、そのため治療時はこのドーパミンの活動異常を抑える薬を用います。
そのほか日常生活において、脳は身体の内外からいろいろな影響を受けています。怪我をした痛みといった身体的刺激、学校生活・社会生活から生じるストレスなども少なからず統合失調症の引き金といわれています。
統合失調症の診断チェック・治療法
下記の統合失調症チェックリストで病気の可能性をチェックしてみましょう。
・自分を責めたり命令してくる、正体不明の声が聞こえる
・極度の不安や緊張を感じるようになった
・自分は誰かに操られていると感じる
・みんなが自分の悪口を言ったり、嫌がらせをすると感じる
・「楽しい」「嬉しい」「心地よい」などと感じなくなった
・頭の中が騒がしくて眠れなくなった、または眠りすぎるほど眠るようになった
・人と話すのが苦痛になり、誰とも話さなくなった
・独り笑い、独り言を言うようになった
・直前のことを思い出せなくなったり、頭が混乱して考えがまとまらなくなった
・部屋に引きこもり、1日中ぼんやり過ごすようになった
・自分の考えていることが周りにもれていると感じる
・ささいなことに過敏になり、注意をそがれたり、興奮するようになった
・誰かから監視されたり、盗聴されたり、ねらわれていると感じる
・1つのことに集中したり、とっさの判断ができなくなった
・何をするのも億劫で、意欲や気力がなくなった
当てはまる項目が多い場合は統合失調症である疑いがあります。保健所や全国にある統合失調症の家族会に相談したり、精神科や心療内科で診断してもらうことをおすすめします。
統合失調症の治療は薬物療法が基本。これに加え、病気回復の程度や状況に応じた治療も行います。代表的なものには、患者の状態に合わせ、心理・精神面を心理的にサポートするカウンセリング。また、福祉施設や病院等において学校生活、家庭生活など、元の環境に戻れるように自立や社会復帰に向けての訓練があります。これらは主治医や家族と相談しながら、焦らず、確実に社会復帰を目指していくことが肝要です。最近の治療傾向としては、入院期間を短縮し、外来通院、自立・社会復帰への訓練などを積極的にすすめ、早めのリハビリテーションを行っていく治療が主流となっています。
統合失調症の人への対応
統合失調症は「怖い」「暴れる」「怠け」などの誤ったイメージをもつ人も少なくありません。統合失調症の病状を改善していくには、家族や周囲が統合失調症を正しく理解することが欠かせません。次の3つを心がけることをおすすめします。
病気の辛さと生活のしづらさを理解する
「気持ちがたるんでいるから病気になるんだ」と理解してもらえないことは、本人にとって辛いことです。
接し方を工夫する
批判を避けて、本人の良い部分を認めて伝えることでお互いのストレスが軽くなります。
身の回りのことを自分でできるようになるようサポートする
低下した社会・生活機能を回復させるため、身の回りのことを自分ですることが治療につながっていきます。
統合失調症は、慢性に経過することが多いので、長期にわたる治療が必要な病気です。自分に合った主治医を見つけ、良い関係を築いていくことがポイントです。診断や治療に疑問や不安が生じた時に、すぐに主治医を変えるのではなく、まず主治医に質問や相談をしてみてください。主治医とよい関係を築き、統合失調症という病気に立ち向かうための仲間を増やしていくことが、よりよい治療へもつながっていきます。