自閉症スペクトラム障害と疲れやすさ
発達障害自閉症スペクトラム障害のある方は、疲れやすい方も多いと思います。私もその一人なのですが、その疲れやすさは一体どこから来ているのかについて考えてみると対策も考えやすくなるかもしれません。今回は私自身の例をもとに、その原因と対策について考えてみたいと思います。
コミュニケーション
自閉症スペクトラム障害の方は、コミュニケーションに難しさを抱えている方が多いため、個人差はありますが、コミュニケーションにはある程度負荷がかかっていると言えると思います。
私自身は、幼い頃から20代前半ごろまではかなりコミュニケーションに負担を感じており、楽しいはずの友達との会話でも、その度に後で疲れ切ってしまっていました。現在はある程度コミュニケーションの技法を身につけているため、以前より大分負担感が軽減されましたが、それでもやはり調子の悪い時は大変労力が掛かると感じることがあります。
またコミュニケーションにおいては、暗黙の了解が必要であることが多いのですが、それが自然には分かりにくいため、初めての場所などではかなり気疲れしてしまうことが多いです。
対処方法としては、地道な作業ではありますが、一つにはコミュニケーションが上手くいくようになる技法を身につけることがあると思います。私の場合は書籍で対人関係スキルや暗黙の了解について丁寧に書かれてあるものを読んで勉強したのですが、これが大変役に立ちました。現在はインターネットでも簡単に調べることができるので、助かっています。
二つ目には、できるだけ理解のある環境で過ごすことが大切だと思います。障害を持っていない方に合わせて努力をし続けることはやはり大変で、どこかで無理が生じてしまいがちです。できれば特性を理解していただける環境で過ごせると、一番ありがたいと思います。
情報量の多さ
情報量の取り込みの多さも、自閉症スペクトラム障害を持っている方は苦手と感じられることが多いと思います。
私の場合、一日の間にあまりに多くの出来事が起こったり、処理しなければならない情報量が多すぎると自分自身の許容量を超えてしまい、五感から取り込まれる外部からの情報を全てシャットアウトしなければ身が持たないと感じることがあります。
そのような時は、家であれば静かに横になるなどして、回復を待ちます。外出先であれば、少しの間一人になれる環境があればありがたいと思います。静かに一人で過ごすことができれば大抵は時間が経てば回復できます。しかし、もしそのような状態が頻繁に起きているということであれば、何らかの対処策を講じる必要があるというサインであると思います。ご自身の環境や仕事内容などが自分に合ったものなのか、調整はできそうか、じっくりと考えてみることをおすすめします。
想定外の出来事
自閉症スペクトラム障害の方は、予測可能なできごとに安心感を覚える方が多いと思いますが、その反対である、想定外の出来事が起こった際には、疲れが生じることが多いです。
私の場合、予定が急に変更になった場合や、応接の場面などで自分の守備範囲以外の対応を迫られた場合、とても困ってしまうことが多いです。臨機応変かつ瞬時に適切な判断をすることが難しいため、そのような際には大変疲れてしまいます。
対処方法としては、第一に、予定変更はできるだけ事前に伝えてもらうようにして頂き、前もって心積もりをする時間をいただけたら、対応できることも多くなると思います。
第二に、想定外と思われる事態に直面した際には、後で良い対応の仕方について振り返り、学習することによって、少しずつ守備範囲を広げてゆくことも有効だと思います。
第三には、臨機応変さには一般常識や対人スキルに関する暗黙知が関係していることが多いため、その場の空気から自然には理解しにくいという特性上、大変地道な作業ですが、自分に合った方法で少しずつそういった知識を学んでゆくことが長期的には有効だと思います。ただ、根気の要る作業ですので、無理のない範囲で焦らずじっくり取り組んでゆくようにしましょう。
第四には、想定外の出来事が相当に負担に感じるという場合は、無理をせず、臨機応変さが頻繁に要求されるような事柄は避けられるよう、環境を整備してゆくことが大事だと思います。その際は、その分得意なことに集中できるようにすると良いでしょう。
感覚過敏
自閉症スペクトラム障害の方だけとは限らないですが、発達障害の方の中には感覚過敏を持っておられる方が多いと思います。感覚過敏があると小さな刺激にも敏感に反応してしまい、疲れてしまうことが多いです。
私の場合は聴覚や視覚、嗅覚などに感覚過敏があり、刺激の多い環境に長時間居ると疲れてしまいます。具体的には視覚過敏の方では、多種多様な視覚情報が飛び込んでくる都会でのウィンドウショッピングや人の混雑、インターネットサーフィンなどが苦手です。
対策としては、やはり苦手としている刺激の多い場所やシチュエーションを避けられたら一番良いと思いますが、もし簡単に避けられそうにない場合には、感覚過敏を和らげるための市販のグッズなどが使えるようでしたら、積極的に試してみると良いかもしれません。さらに、有効なグッズが使えない場合には、時間を区切って取り組んでみる、または周囲に配慮を依頼するなどの対応が必要になってくると思います。
ここまで自閉症スペクトラム障害の方の疲れやすさの原因と対処方法について、お話してきましたが、いかがでしたでしょうか。きっとこの他にも原因や対策の仕方は多くあると思いますが、今回は私の経験をもとに主なものを書かせていただきました。少しでも皆さまのお役に立てましたら嬉しいです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)