統合失調症の投薬治療~一進一退の減薬体験談

統合失調症

画像:UnsplashChristina Victoria Craftが撮影した写真

筆者は36年前、16歳のときに統合失調症を発症し、長い闘病生活を送ってきました。現在は症状も落ち着き、就労継続支援B型事業所を利用しながら、物書きの端くれとして執筆活動をしています。そんな筆者には、精神科の薬を大量に飲んでいた過去があります。あまりにも多い薬を少しずつ減らすのには、大変な苦労がありました。このコラムでは、筆者の統合失調症の減薬について赤裸々に語ります。

統合失調症発症と大量の服薬

なぜ筆者は、過去に大量の薬を処方されていたのか。それは、「薬が減ると症状があらわれてしまうのでは」という不安があったために、自ら主治医に減らさないでほしいとお願いをしていたからです。しかし、多くの薬を飲んだことで副作用がひどくなり、症状の不具合も出て逆効果となりました。「薬をたくさん飲めば楽になる」という考えについては、今振り返って大きく間違っていたと痛感しています。

それに加えて、そもそも処方量が多いにもかかわらず、薬を指示された量の倍飲んでいました。自分のなかでは「倍飲み」と呼んでいましたが、薬を大量に飲むことをOD(オーバードーズ)といいます。筆者は、倍飲みのほうが自分に馴染みのある表現なのでここでは倍飲みとします。睡眠薬や抗不安薬、精神安定剤などを倍飲みしていたころは、身も心も調子がよくありませんでした。調子が悪いから倍飲みして治そうとしますが、逆に調子が崩れる。調子が悪いから、さらに倍飲みをして治そうとする、という悪循環に陥っていました。

薬は、飲めば飲んだだけ効果があるわけではなく、飲みすぎたら逆効果です。当たり前のことかもしれません。当時の主治医は、このことをきっとわかっていたのではないでしょうか。この患者は、薬に依存している薬物依存状態だと思っていたかもしれません。しかし、本人は多量の薬を必要としており、減らされると不安になる……ということで、やむを得ず処方をしていたのだと思います。

減薬スタートのきっかけと経緯

5年くらい前までは、1日に全部で33錠飲んでいました。診察の帰りには、大きな袋を3つも4つも抱えて帰宅します。他の患者さんたちの多くは小さな袋をもらっていて、自分だけ明らかに異常でした。前途したように、筆者は当時の主治医に「薬を減らさないでください」と懇願していました。自分は、薬に依存していたのだと思います。診察では薬の話しかしません。今思うとそれも異常です。

そんななか、主治医が代わったことを機に減薬を考えるようになりました。新しい主治医と相談しながら、月に1錠、もしくは2錠の減薬をスタート。3ヵ月で1錠減らすというペースのときもありました。薬が減ることで、副作用も楽になりました。そんなペースで2年間減薬して、11錠まで減らせたのです。

しかし、少し減らすペースを急ぎすぎたせいか、再発をしました。幻聴と妄想が強くあらわれました。今度は、「副作用が楽になるからどんどん減らしたい」と思うようになり、ペースを早めてしまったのです。再発したときは、生きた心地がしませんでした。あまりにもつらいので、薬を少しずつ元に戻してもらいましたが、根本的な「症状の回復」までには時間がかかりました。

現在は16錠になり、安定が持続しています。統合失調症の受診とは別で内科にかかったときに漢方薬を処方され、服用するようになりました。漢方薬は、不眠や不安、イライラなどに効くものを2種類服用しています。そのため、西洋薬を1日16錠プラス、漢方薬を1日6包を服用しています。漢方薬については、精神科の主治医に報告して許可をもらっています。病院によっては、漢方と西洋薬を両方処方してくれることもあるようです。

投薬治療と処方を守ることの重要性

基本的なことではありますが、主治医が処方した用法用量を守ることは大切です。症状がよくなったからといって、自分の判断で勝手に薬の量を減らしてしまうと、のちのち再発する危険性が高くなると思っています。筆者の場合、医師と相談しながら薬の量を減らしていたにもかかわらず、症状が悪化したわけです。若いころには、勝手に薬を減らして調子を崩すという過ちをなんども繰り返しました。

また、薬を自分の判断で多く飲むことや、薬を勝手にチョイスして飲むのもよくありません。筆者はこのような自己判断で、強い副作用に苦しみました。処方された薬でよくならないときは、主治医に現状を正直に話すのが賢明です。調子の悪いときに服用する薬、頓服薬(とんぷくやく)を出してもらえることもあります。

薬を自己判断で増やしたり減らしたりすることの危険性を、自分の体験から身に染みて感じました。今後は二度とこのような過ちは犯したくありません。ODや、自己判断での減薬や中断などは、若い人がやってしまいがちな行為のように思いますが、実際に経験しないとわからないことなのかもしれません。長く闘病してきた者からすると、薬に関してはとにかく用法用量を守ってほしいと声を大にして言いたいです。

そして、筆者は現在、「薬は効く」と思って服用しています。「効かない」と思って飲むと本当に効かないように感じるのです。一種の自己暗示かもしれません。副作用が強いときは、処方された薬を飲みたくないと思っていましたが、今はそのような感情はありません。むしろ、飲みたいと思っています。まだ薬に依存している部分もあるので、飲めば確かに安心します。ですが、処方をきちんと守っています。主治医にも薬に依存している感覚があることを伝えています。

まとめ

統合失調症の治療において、服薬は大切だと痛感しています。精神科の薬に対して抵抗のある人や、効果があるのか信じられないという人もまだまだいるかもしれません。しかし、適切な量をきちんと飲むという基本的なことが、いかに回復にとって重要かということを筆者は身をもって理解しました。

病気による不安感を薬への依存で解消しようとしたり、薬を自分の判断で服薬の時間や用量など無視したりするのは危険な行為です。病気や薬と適切に付き合うには、医師との信頼関係や、相談のしやすさといった部分も、治療のカギになるのではないかと思います。


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モンゴロイド

モンゴロイド

1971年生まれの52歳。北関東在住。高校を2校中退し、30年前に閉鎖病棟へ2ヶ月間入院。現在は病気の症状も落ち着き、物書きの端くれとして電子書籍の執筆を6年間継続中。

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