知識上と経験上での自閉スペクトラム

発達障害

unsplash-logo Caroline Hernandez

5年前に自閉症スペクトラムとの診断を受けてからというもの、合点のいくこととそうでないことが混ざり合ったまま過ごしております。混ざり合った集合体に対する結論は出ないまま、現在もなお新規参戦が絶えず、このカオスに対する結論は先延ばしを重ねています。

自閉症スペクトラムの特徴というのは、「対人コミュニケーションの難」「限定された興味」「固定パターン」が挙げられます。興味のあることに対する知識量は相当のものですが、それが極めて限定的です。そしてある程度整った手順に従い、イレギュラーな事象を激しく嫌悪します。対人コミュニケーションについては、集団より一人を好み、いざ話すとなると忖度の出来無さが露呈します。

教科書的な知識と言えばこの通りです。では、私はどうなのでしょう。

一人を好むし一人になる

対人コミュニケーションの苦手振りは相当なもので、診断においてもこの点が決定的な要素となったように感じています。まず相手の顔を見ることすら難しく、ゆえに顔と名前が一致しません。顔を認識したくないので、かなりの近眼でありながら原則裸眼で生活しています。

5歳頃、急に他人の名前を呼ぶのが怖くなりました。幼稚園の頃は担任が親に「児童相談所で検査を受けてきなさい」と通告するほどだったのですが、当時の検査では「通常学級でも問題ない」という評価で、このまま22まで健常者として生きる事になります。

小学生の頃は話せる友人もいたのですが、進学・進級・発達・加齢・謎の不安と重なるにつれ奥手さが極まっていきます。高校入学時は、同じ中学出身が多いにもかかわらず話せる人間が1人にまで落ち込む悪化ぶりでした。

この体たらくで大学デビューなど出来るはずもなく、図書館常連で過ごしました。飲み会もゼミ全体で行った1回だけで、お笑いライブ目的で行った学園祭も開催まで空虚に時間をつぶす有様です。飲み会はまだしも学園祭ぼっちはさすがに効きました。他にも、喋れない子と思われた経験や班を組めずに単位を落とした講義などもありました。

興味ある知識はあまり……

興味への知識量についてですが、小さい頃はネット環境の不十分だった時代なので全然ついていけませんでした。幼稚園の頃は自他共に認める車好きのレースゲーム好きでしたが、強いCOM戦で勝てるわけでもなく高級外車の名前が言えるわけでもない中途半端な実態でした。

興味の有無が記憶系の科目に影響していたかというとこれもまた微妙でした。確かに興味の薄い日本史や世界史は弱かったですが、更に興味の薄い生物はテストだと国語に次ぐ第二位のポジションを堅持していました。

ネット環境が整ってからは興味を抱いたことを次々調べて知識量を詰め込んでばかりいたのですが、ずっと興味を持っている訳ではなく年月とともに記憶が褪せていきました。

漢検も2級で止まったままですし、英単語も弱くて海外サイトはろくに読めませんし……。知識の詰め込みに対して自閉スペクトラムが助けてくれたことは無いように感じます。

忖度の出来無さと冗談の伝わらなさ

話をしなさ過ぎて、コミュニケーションで用いる想像力が足りているかはよく分かりません。サンプリング数が圧倒的に不足しているのです。冗談や嫌味は逆に分かる方だと自負してさえいます。

忖度不足のエピソードは一つあります。詳細は伏せますが、大学時代に実習がありまして、そこで「本日はわたくしどうでしたか?」と聞かれたので正直にその日あったことを報告しました。すると別の人に「この場面で正確な報告はきつ過ぎる。時には嘘でも『問題ないです』と言わねばならない。」とダメ出しされたのです。

その時は「正直な報告の何がいけないのか」と思ったのですが、「正直と誠実は違う」「正論だから良いという訳ではない」といった言説を見るたびに自分の対応が厳しかった事を知りました。

コミュニケーションにおける想像力は不十分でした。訂正しましょう。

まとめ

自閉スペクトラムが「個性」と「障害」のどちらに傾くかの分水嶺は、本人がその思考特性で損をしているか得をしているかによります。

私の場合、興味にのめり込むことで知見を広げた事はあるものの、学業の助けになったことはほとんどありませんでした。むしろコミュニケーション面での不得手や失敗ばかりが目に付いたように感じます。損をした事が多いので、現状では「障害」なのでしょう。

自分の自閉スペクトラムについて全容を解明しきれていないので、得をするための転用は未だ難しい状況です。生まれつき発達障害があるなら、その「対価」を貰っているはずだと考えてしまうのは人情なのでしょうか。欲しいですよね、障害の対価。

参考文献

自閉症スペクトラムについて|メディカルノート
https://medicalnote.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

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