ADHDと向き合う若者たちの物語〜映画『ノルマル17歳。-わたしたちはADHD-』北宗羽介監督インタビュー

エンタメ 発達障害

©2023八艶/トラストフィールディング


学校も見た目も、ADHDの特性すらも違う2人の少女が偶然出会ってからの青春友情譚を描いた映画『ノルマル17歳。-わたしたちはADHD-』が4月5日から東京・アップリンク吉祥寺で公開され、順次全国公開されます。北宗羽介監督にインタビューしました。


北宗羽介監督

長編作品制作の挑戦


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──ADHDをテーマにしたきっかけは何ですか
「10年ちょっと前から俳優の演技指導などをやってきた中で、対人関係の苦手な人や時間にルーズな人が増えてきたなと思いました。精神的なテーマを扱う作品が多かったのもありますが、以前から発達障害に興味を持っていまして、同時に青春映画も撮りたいと思っていました。若い人の考えも取り入れたくて企画を公募すると、大阪に住む若い女性が『自分の経験を基にした、ADHDの少女2人が出会うストーリー』を提案してきました。彼女は長編を書いた経験がなくほぼ新人だったのですが、違ったADHD特性を持つ見ず知らずの女子高生2人が偶々出会い、友情を育み生きづらさを共有して積極的に生きていくというプロットを持っていたので、映画に出来ると思いスタートしました。最初は小規模でやる予定でしたが、後で文化庁からの助成金が出たので、企画をより大きくしたのが全体の流れです」

──ADHDにも色々ありますが、違いの表現で気を付けたことはありますか
「脚本担当の知人がADHDで、その人に良くしてやれなかった経験があったそうです。自分の経験に加え、ADHDについて調べ直しながら脚本を作っていきました」

──実体験に基づく脚本を監督も一緒に書かれた訳ですね
「脚本担当にとって初めての長編だったので、映画として成り立たせるために支援しながら、彼女の書きたいストーリーのベースを守っていった形になります」

──主演をどう選んだか、役に何を授けたかったか教えてください
「当初の企画では自社制作の低予算映画として作る予定だったので、有名な女優は起用出来ないと思っていました。それで全国からオーディションを開催して主役を選んだ訳です。基準としては単純に芝居の上手さを最優先とし、選んでいったのですが、発達障害を持つ人も何人か応募していました。ですが当事者には難しい所があり、一人は学習障害で台詞を覚えるのが大変で、もう一人はADHDなどの方でしたが、当日に道中でナンパされてパニックになったまま会場に来られませんでした」

普通を掲げる人々へのメッセージ


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──グループ関係など女性特有の生きづらさもよく描かれていました
「今回の映画は、主人公2人とも親の理解に乏しい設定で、親の思い込む『普通』の枠に押し込められる広汎な苦しみは描きたかったです。自分たちが思う『普通』を他人に押し付けてはいけないという教訓も込められていますね」

──理解のない周囲を描くことに関して、どのように掘り下げるつもりでしたか
「僕自身が昔から落ち着きがないと言われることがあり、他人と同じことをするのが嫌な少年でした。常識や固定観念の中で生きる人々が好きではなく、そういう概念を崩していくのが僕の映画人としての理念で、今回の『ノルマル17歳。』も当てはまります」
「正式なタイトルは最後まで決まっていませんでした。脚本担当もタイトルを考えてなかったんですね。そこで、ADHDを越えて『普通』そのものをテーマにするために『ノルマル』という名前を付けました。現代人は、コンプライアンスだの昔よりも考えが固まっている傾向があり、人間の実態よりも凝固した常識を重んじる傾向があります。故に発達障害が注目されてきて、余裕もなくなってきました。あの親たちは『普通』を誇張した成れの果てを表現したものでもありますね」

──ADHDを中心として描く上でのこだわりなどを教えてください
「ADHDやASDを扱った映画は昔からありますが、天才やギフテッド的な描き方が散見されていました。それ自体は悪くないのですが、才能にフォーカスしていて障害の全体像がぼやけている嫌いがあります。凄い才能こそ無くても、一つに集中できることは個性として成り立ちます。その際立った個性を活かしていけるような社会になればいいなと思います。メイクの才能や拘りがあっても、社会で通用するかは分かりません。しかし受け皿さえ整っていれば才能は開花するでしょう。他人と違った感性や集中力は強みとなるので、受け容れられる社会の体制が欲しくなりますね。幅広く受け入れる環境が必要です」

──青春ドラマの要素もあって、普通のエンタメとしても楽しめると思います
「映画として面白い事を前提として考えています。ドキュメンタリーなら事実なのでそれで意義があるのでしょうけれども、飽くまでフィクションなので物語として面白く最終的にはいい方向に向かっていくように意識しました。最後に主人公二人に幸せになってほしいと」

ADHDへの理解や支援、どう広げる?


©2023八艶/トラストフィールディング

──今回のメッセージには、ADHDへの理解や支援の必要性も含まれていましたか
「ADHD含め発達障害について、周囲が理解して適切に対応できることを啓蒙できればいいなと考えていますね。マクロ視点では、自分たちが持っている普通や常識の枠を一度外してみて、それぞれの価値観という当たり前のことを知ってもらい、器の大きく緩やかな社会になってほしいというメッセージも込めています」

──本人なりの対処法も意識して描かれたものですか
「何とかしたいという気持ちはある筈です。映画なら陰でどう努力しているか映像で分かるので、より感情移入しやすくなると思います。見た目はチャラチャラしていて信用ならないのが、裏では努力しているという表現などですね」

──障害か甘えかの判断は本人ですら難しいところがあります
「以前インタビューした中年男性の方は、つい去年にADHDの診断を受けたそうです。両親も似たような特性で却って気付かれず疑問にも思わず育ちました。それでもコミュニケーション能力は高かったので、社会人として不都合なく生きてきたのですが、ある拍子に発達障害を疑われて、実際にそう診断された訳ですね。同棲している彼女がいたようですが、『あなたは診断から変わってしまった。前の方が良かった』と言われたそうです。診断を機に、甘えが出たのかもしれません。彼自身は知らない方が良かったと言っていました」

理解して器を広げて欲しい


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──12月の先行公開での反応は如何でしたか
「愛媛での先行公開は、時間と予算が若干足りず細部に不完全な所があったので、公開までに直しています」

──特に印象的な反応はありましたか
「意外なことに、小学生の子が見に来てくれたんですよね。それで、普通にストーリーも理解していただきました。小学生にも伝わるというか、子どもだからこそ伝わる側面もあったのでしょう」

──学校教育に対して望むことはありますか
「日本発達障害ネットワークの市川理事長とお話しした時にも上がったのですが、重度は支援学級で対応できるでしょうが実際のところはグラデーションで分かりづらいです。グラデーション部分の人たちは通常学級に入ることになり、知識のない担任がつくと不十分な側面がでてきます。それを制度としてどのように対応できるかですね。先生や他の保護者への理解を勧めないと、グレーの生きづらさは改善されません」

──グレーだからこそ生きづらい側面もありますよね
「その通りで、天才でも重度でもないグレーな人に焦点を当てました。手帳が出てないからこその苦悩ですね」

──最後に伝えたいメッセージ、ADHDへの理想的なサポート、変わって欲しい認識などを聞かせてください
「ADHDに限らず、人間が多様であることが当たり前です。それらを受け入れる器というのが広まっていかないといけませんね。個人の好き嫌いは別にして、当人の人権や存在を理解し受け入れる、色々な人がありのまま存在する広い心の社会に向かっていけばいいなと思っています」

映画『ノルマル17歳。-わたしたちはADHD-』公式サイト
https://normal17.com/

映画『ノルマル17歳。-わたしたちはADHD-』本予告

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

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注意欠陥多動性障害(ADHD)

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