1歳半検診で発達障害のおそれがあるとわかったら~発達障害は早期発見が大切

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1歳を過ぎても視線を合わさない、指さしをしない子どもに不安を覚える親御さんはいるでしょう。もしかして、我が子は発達障害なのではないか、と。現在では、1歳半検診で発達障害の特徴を診ることはだいぶ可能になりました。子どもの発達障害の早期発見と介入に、自治体は力を入れるようになりました。1歳半検診において明らかにできること、発達障害のおそれがあると分かった時に何ができるのかについて解説します!

1歳半検診で分かること

1歳半検診を含む乳幼児健診は、母子保健法に基づき、市町村が主体となって行います。乳幼児健診の目的は、子どもの発育と健康状態から、身体的・精神的発達の経過を把握し、子どもの発達ならびに子育てをする養育者への必要な支援をすることです。発達障害のある子どもの診断・評価は、早くて3歳から就学時7歳頃に可能だと考えられます※。とはいえ、発達障害は生まれつきの脳機能障害なので、乳児期から発達障害の傾向を見ることはできます。

※(高機能)自閉症や知的障害の場合、3歳になっても話さないか、単語しか発しないことが多く、言葉の理解にも遅れが見られます。就学時には、勉強に困難を示す学習障害や、年齢にそぐわず授業中も落ち着いていられないADHD(注意欠如多動性障害)が明らかになりやすいです。

【1歳半検診では、言語理解と社会性の発達に注目する】
1歳半検診の評価項目や手順は、自治体によって多少の違いがあると思いますが、以下の共通するポイントに注目して、1歳6か月児の発達は評価されます。

①運動・身体能力の発達
モノを手に持つ、歩く、走る、といった運動発達を評価します。1歳半児のほぼ99%は、一人で歩くことができます。独歩ができない場合に限らず、つま先歩きという独特な歩き方にも注意します。発達障害児では、高い頻度でつま先歩きが見られるという報告があります(自閉スペクトラム症児は6割、言語コミュニケーション障害4割、学習障害2割)。

②言葉の発達
話す単語の数や言葉の理解を評価します。1歳半児では、「ワンワン」、「ブーブー」等の簡単な単語を5つ以上話せるようになります(男児8割、女児9割)。語彙(ごい)の数の発達には個人差はかなり大きいので、言語理解が発達していればさほど問題はありません。「アレ取ってきて」、といった大人の簡単な指示を理解し、名前を呼ばれると反応します。主に自閉スペクトラム症の場合、言葉を発しない、簡単な指示や呼びかけに無反応といった特徴が見られます。また単語を発している場合でも、意味を理解せずにでたらめに言っている、オウム返しの可能性にも留意します。

③遊び方の発達
1歳6か月に入ると、ごっこ遊びができるようになります。ごっこ遊びは、身近な大人の行動を模倣(マネ)し、おもちゃをモノや人に見立てて遊ぶことで成立します。養育者との一対一の関係のみならず、第三者やモノ・おもちゃとの三者関係(パパとママと自分、自分とママとモノ)を理解できている証拠です。
発達障害の場合、モノを別のモノや人に見立てて想像すること、周囲に関心をもってマネをすることが難しいです。また、おもちゃの独特な遊び方等も確認できます(車のおもちゃをひたすら並べる続ける等)。

④社会性・コミュニケーションの発達
言語理解と遊び方にも通じる点ですが、1歳半検診では特に社会性の評価を重視します。1歳半児に見られる社会性とは、遊びや言葉のやり取りを通じた、他者との情緒的な関わりや要求を伝える能力です。1歳半に入ると、他者の要求や言葉に関心を示す、逆に自分の要求が他者に伝わってほしい時に見せるアイコンタクト指さしが見られます。名前を呼ばれると自分のことだと理解し、相手に反応を示します。また、愛着を寄せる養育者と同じ方向を見る共同注意や、自分に注意を引きつける注意喚起、養育者の顔色を参考に情緒や行動を変える社会的参照も、この時期に確認できます。発達障害の可能性と経過観察が必要なのは、この時期に入ってもアイコンタクトや共同注意、注意喚起、社会的参照、指さし、呼びかけへの反応が見られないケースです。指さしでは、欲しいもの・興味のあるものを指さすことがない、もしくはでたらめ(右・左が分からない、見てほしいのとは逆方向を指さす等)な様子が見られます。

個人差はありますが、1歳半になると親とそれ以外の他者、モノを使ったコミュニケーションに必要となる、基礎的な言語と社会性が発達します。1歳半検診の時点では、発達障害の確定診断は難しいです。とはいえ、1歳半検診で、発達の気になる点が確認できた場合、丁寧な経過観察と早期介入を検討します。言語理解と社会性の発達が気になるのは、自閉スペクトラム症等の発達障害に限りません。他には子ども自身の気質や他の疾患、養育環境等の背景についても慎重に評価していきます。

早期発見・早期介入の意義

1歳半検診で、発達障害の可能性や経過観察の必要性が分かった場合、その時点から早期の発見と介入に繋げることができます。1歳半検診の結果から、我が子の発達のことで大きな不安やショックを覚える親御さんはいます。ですが、発達障害はなるべく早い段階で発見され、適切な支援を受けることのメリットが大きいです。

早期発見・早期介入のメリット
・子ども本人と養育者にとって必要な支援を、早い段階で見つけ、実行しやすくなります。発達の気になる子どもにとっては発達や生活における困り感、養育者の方にとっては育児負担の軽減に繋がります。

・国や自治体等による療育や発達支援、子育て支援等のサービスを受けやすくなります。発達で気になる点が検診の段階で分かった場合、発達障害の子どもとその家族を支援する公的な支援制度や福祉サービス、助成金等の紹介に繋がります。

・発達途上にある早い段階での支援は、子どもの今後のコミュニケーションスキルや社会性、言語発達の成長により効果的です。発達障害の傾向が見られる子どもも、早い段階でのサポートが豊富な環境で成長していくことで、症状の改善やスキルの獲得が望めます。

・子どもにとっての安心の確保と二次障害の予防に繋がります。発達障害の生きづらさは年齢が上がるにつれて増します。発達障害を見過ごされ、必要な支援を受けていないケースでは、しつけや人間関係、勉強でのつまずき、周囲の無理解が重なることによって、子どもの自尊心と安心感は低下します。その結果、自信喪失や不登校、就職でのつまずき、うつ病等の精神疾患を抱える等の二次障害になります。

1歳半検診の後に利用できる支援

1歳半検診で発達障害のおそれがあると分かった段階で利用できそうな支援は、お住まいの地域独自の取り組みから、市町村が中心となって行う児童福祉系の支援サービス、相談に役立つ専門機関等の存在があります。

・経過観察:
1歳半検診において、発達が気になる点を確認できた場合、その後の子どもの発達を電話の問い合わせや検査等によって見守ります。経過観察の期間や方法については、地域や子どもの特性によって異なります。経過観察を受けることによって、一度きりの1歳半検診では分からなかったことや、今後の発達・子育て支援のアフターフォローに繋がりやすくなります。ただし1歳半検診と経過観察にも、様々な課題や検診を受けた養育者から見たデメリットも報告されています。↓

・過剰診査によって養育者の不安が高まる、または過少診断によって発達障害を見過ごされてしまうこともあります。地域差もありますが、研究によっては経過観察が必要となった子どもの2/3は、2歳頃には正常に発達し、養育者の不安が解消されたケースもあります。検診を実施する専門家がどこまで発達障害の知識と識別に強いのか、その後の対応も地方によって差があります。

・言葉の発達や遊び・行動範囲の広がりを見せる1歳半は、子どもの自立と依存における葛藤や不安が高まる時期です。そんな中、発達の気になる点や子育てについて検診で指摘されることや、地域によっては混雑していて丁寧な相談と対応を受けられなかったという方もいます。そのため、発達障害の早期の発見と介入に留まらず、子どもを育てる親御さんを支え、精神的負担を和らげる対応も優先されるべきだと思います。

・市町村による子育て支援サービス:
地域によっては、子どもを育てる親御さんの相談や支援、居場所づくり等を目的とした、子育て支援教室や育児サークル、遊び方教室、ペアレント・トレーニング等、様々な取り組みがあります。ペアレント・トレーニングでは、発達障害等の子どもに対する親御さんの行動や態度に働きかけます。それによって、発達障害の子ども本人の安心と親御さんの育児負担の軽減、養育態度の改善に繋げます(ペアレント・トレーニングの詳細も、参考文献をぜひ確認してください)。

専門機関による相談支援
市町村は、子育て支援や福祉サービス等に関する身近な相談・申請窓口の役割を果たします。しかし、市町村にサポートを申請する際に必要な書類や意見書の作成や、より専門的な相談や支援に応じてくれる代表的な専門機関は、以下の通りです。
・児童相談所
・発達障害者支援センター
・障害児療育福祉センター
・発達障害の専門医療機関

・児童発達支援:
児童福祉法に基づき、発達の気になる子どもや障害児等の成長・発達のサポートの他、子育てや生活に悩む家族の相談に応じたサポートをするのが、児童発達支援です。児童発達支援の対象は、発達の気になるもしくは障害のある0歳から6歳の未就学児です。児童発達支援を受けるには、市区町村等に必要書類と共に申請し、受給者証をもらう必要があります。手帳を持っていなくても、医師等の専門家による意見書を提出し、支援の必要性が認められれば受けられます。

児童発達支援の詳細は過去のコラムにて↓
https://shohgaisha.com

・保育所等訪問支援:
発達の気になる子ども・障害児が通う保育所等に、専門の支援スタッフが訪問し、必要な支援を行います。具体的には、訪問先の施設における子どもの活動や集団生活への支援、子どもと関わる職員への助言やサポートをします。こちらも、児童福祉法を根拠とする児童発達支援と同様に、申請と利用料の負担が必要になります(制度の詳細は、参考文献で確認してください)。

まとめ

1歳半検診で発達障害のおそれがあると分かった時にできることについて、以下にまとめます。

・1歳半検診では、主に子どもの社会性と言語の発達を診査します。

発達障害の可能性を見る主なポイント
・アイコンタクトをしてくれるか
・呼びかけに反応するか
・指さしをするか
・ごっこ遊びはできるか
・単語を話せる、もしくは単語が少なくても簡単な指示を理解できるか
・独り歩きはできるか、つま先歩き等の独特な動きはないか

発達障害の早期発見・早期介入のメリット
・発達障害のある子どもへの発達支援は、年齢的に早ければ早いほど、社会性やコミュニケーションの改善に効果です。
・早い段階での支援は、発達の気になる子ども本人ならびに家族の安心と負担を和らげます。
・主に児童福祉法や障害者総合支援法、発達障害者支援法等にもとづく多様な支援やサービスに結びつきやすくなります。
・発達障害を見過ごされ、必要な支援を受けられずに育つ場合に生じる、自尊心と安心感の低下、二次障害等の予防に繋がります。

利用できそうな支援・専門機関
・経過観察:検診後の子どもの発達経過を見守ります。
・市町村が独自に実施する発達・子育て支援:①子育て支援教室、②育児サークル、③遊び方教室、④ペアレント・トレーニング等
・より専門的な支援をする機関:①児童相談所、②発達障害者支援センター、③障害児療育福祉センター、④発達障害の専門医療機関
・児童発達支援:発達の気になる・障害のある未就学児の発達と生活への支援・訓練、ならびに子育てをする家族の相談・サポートを行います。
・保育所等訪問支援:発達障害支援の専門スタッフが、子どもの通う保育所等の施設へ訪問し、子どもの集団生活等をサポートします。

いかがでしたでしょうか。1歳半検診を受けること、その時期にある養育者の多くは気が気でなく、不安も強いと思います。実際に1歳半検診で、発達の気になる点等について指摘を受け、大きなプレッシャーも感じているでしょう。ですが発達障害である場合、早い段階での発見と介入によって、子どもと家族が安心して生活し、成長を見守っていくために必要なサポート環境を作りやすくなります。また、発達障害のおそれが杞憂であったとしても、障害の有無を問わず子育てをする家族にとって身近に役立つ情報やサポートを得る機会にも繋がります。

今回のコラムにおいて、1歳半検診では発達のどの部分を診るのか、早期の発見と介入のメリット、発達障害の可能性がある場合に利用できそうな支援について知ることはできたと思います。それによって、発達障害のお子さんを育てるご家族の方が少しでも安心を得られたのであれば幸いです。

参考文献
・「母子保健関連施策」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp

・「乳幼児健診:一歳半健診」パンパース
https://www.jp.pampers.com

・「健診での気づき」発達障害・情報支援センター
http://www.rehab.go.jp

・「健診からつながる発達支援」発達障害・情報支援センター
http://www.rehab.go.jp

・「保育所等訪問支援」障害福祉情報サービス神奈川
http://www.rakuraku.or.jp

・「1歳6ヵ月健診における親と子への発達援助と子育て支援」矢野のり子
https://www.kobe-yamate.ac.jp

・「ペアレント・トレーニングとは」日本ペアレント・トレーニング研究会
https://parent-training.jp

・洲鎌盛一(2013)『乳幼児の発達障害診療マニュアル、健診の診かた・発達の促しかた』医学書院

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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