生きるために色々な制度を利用してみた~そして分かった自分を縛っていたもの

発達障害 仕事

unsplash-logo Filip Kominik

前回、40代で初めて自分が発達障害だと分かりほっとした、というお話しをさせていただきました。発達障害だと分かったところで、これからどうしたらいいの?次に浮かんできたのはそんな気持ちです。

今回は収入が無くなった一人暮らしの私が、福祉の制度を利用し、ジタバタしながらも一番大事なことに気づけたお話しをしたいと思います。

働けなくなってすぐに利用できる制度

仕事が無くなったら収入が無くなる。 一番の恐怖はこれではないでしょうか。うつ病ですぐには復職できないと分かり、まず出来ることはこれでした。

  • 傷病手当金の申請
  • 自立支援医療受給者証の取得
  • 国民年金の免除申請

心療内科に通院しだしてから、睡眠薬、抗うつ薬、抗不安薬での治療が始まり、2ヶ月ほどしてからADHDの投薬治療も開始しました。

この頃には既に職場を休職しており、時給で働いていた私は収入が止まりました。そこで、まずは社会保険の「傷病手当金」を申請しました。これは病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されるものです。1日当たりの支給額は、(支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3(支払開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合はこの限りではありません)です。およそ月給の6割程度と思ってよいのではないでしょうか。 そして、通常は給与から社会保険料が引かれる訳ですが、固定給の無い私は、全て会社が立て替える状態になりました。給付金が入金されたら、会社に社会保険料を返さなければなりません。

これは思った以上に大きな負担でした。と言うのも、休職する直前にかなり残業していたので、社会保険の等級が二段階も上がってしまい、給付金は少ないのに社会保険料がやたら高いという厳しい状態になっていたためです。体調を崩した要因の一つが残業なのに、休職してからも苦しめられるとは何とも皮肉な話です。

次に出来ることは「自立支援医療受給者証」を取得することでした。ADHDの投薬が始まってから、その薬価の高さに驚きました。1週間の薬代が5,000円を超え、どんなに効果があったとしても、これはとても続けられないと思いました。途方に暮れていたところ、「自立支援医療制度」というものがあることを知りました。この制度を利用すると、診察、薬代共に3割の自己負担が1割になります。所得によって1ヶ月あたりの負担額の上限もあり、私の場合はこれにも当てはまりそうでした。退職してからは国民健康保険に変更したことで、自己負担額が0になり、とても助かっています(市区町村で違うようです)。

国民年金は、所得が少なく国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、申請して承認されると保険料の納付が免除になります。もちろん受け取れる年金額は少なくなりますが、未納のままにしておくと将来障害基礎年金・遺族基礎年金が受けられない場合や、 老齢基礎年金を受けられない場合もあります。

実際、私の知人は10年以上勤めた会社を病気で退職しましたが、退職後に年金の手続きを全くしていなかったため、その方が亡くなってからご家族は遺族基礎年金を受け取ることができませんでした。将来何が起きるか分かりません。できることはやっておいた方が良いと思います。

元気になってきたから就職活動を始めよう

休職し、投薬と休養により数か月後にはうつの症状もかなり改善されました。ADHDの治療薬も合うものが見つかったことで頭の中が整理されて、少しずつ今後のことを考えられるようになってきました。そして、自分に適性のない今の仕事は辞めようと決心しました。そこで、主治医に「障害者手帳を取得して障害者枠で就職したい」と相談しましたが、答えは「No」。これについてはまた機会があれば書きたいと思います。

退職した私が次に行ったのは以下のようなものです。

  • ハローワーク障害者専門窓口の申込
  • 障害者就業・生活支援センター(しゅうぽつ)の登録
  • 障害者向け職業訓練の受講
  • 就労移行支援事業所へ入所

退職後は、どんな方でもハローワークに失業の手続きに行きますよね。ハローワークには障害者専門窓口というものがあります。こちらに申し込むと、専門の職員、相談員さんが求職申し込みから就職後のアフターケアー、職業紹介、就業指導等をしてくださいます。障害者手帳を所得していなくても申し込むことは可能です。但し、手帳未取得の私は、障害枠での就職活動ができない為、支援の幅はずっと狭くなるように感じました。それでも、障害枠の求人に手帳未取得で応募できるかどうか、などの問合せはしてくださいました。就職活動には結びつきませんでしたが、専門窓口にお世話になったおかげで、障害者就労・生活支援センター(しゅうぽつ)の存在を知りました。また、事務職で社会復帰を考えているならPCの操作を思い出した方が良いと障害者向け職業訓練を勧められ、受講することにしました。

こうして少しずつ知らなかった制度を知ることができ、徐々に世界が広がりました。しかし、どちらも就職活動に関しては基本的に障害者枠での就労を想定されているので、やはり手帳を所持していないと、積極的な支援は望めない様に感じました。利用するなら、受け身にならずに「自分がすること」、「相手にお願いしたいこと」をしっかり見極める必要があると思います。私はしゅうぽつさんには自己分析や応募書類の添削などをお願いし、2ヶ月に一度面談して近況を報告しています。

思考のクセが分かればもっと楽に生きられる

職業訓練で、Webの講義を受講する機会があり、もっと勉強したいと思うようになりました。そこで続けてWebクリエーターの養成講座を受講しようと思ったところ、職業訓練を一度受講すると、終了後1年間は他の職業訓練を受けることが出来ないということを知りました。なんてこった。そういうことは受講前に教えて欲しかったというのが率直な気持ちでしたが、捨てる神あれば拾う神ありです。講師の方から、就労移行支援事業所でプログラミングやWebなどの勉強が出来るところがあると教えていただきました。就労移行支援事業所って何?この時点では存在自体を知りませんでした。

就労移行支援事業所は、一般企業での就労を目指している障害のある人に、必要な知識や能力の向上のための訓練、就職活動の相談支援、定着支援などを行う福祉サービス施設です。すぐにWebの勉強ができる事業所を探し見学に行き、体験学習を経て本利用を開始しました。私のADHDの特性の一つに、思い立ったらすぐに行動しないと気が済まないところがありますが、この時ばかりは良い方向に進んだと思っています。私が登録した事業所は、障害者手帳を取得していなくても利用ができます。しかし、やはり就労に関しては障害者雇用がメインで、一般枠で就労される方は少ないように感じます。その為、「発達障害と診断されたけれど、手帳を取得できない私はグレーゾーン。就職活動も自分でしなければいけないんだから頑張らなくちゃ。」と考えていました。そこで、自分の中で目標を「3ケ月で就職する」ことにし、週5日通所しながらプログラミング、HTML&CSS、Photoshop、Illustratorの講座に参加し、適性があるかどうか見極めようと思いました。そういう訳で、通所し始めてからは、講師の先生や支援員の方と自然に距離を置いていました。「頼らないで自分でやらなきゃ。」と思い込んでいたからです。これでは、適応障害を起こした時と何も変わっていません。案の定、通所して2ヶ月が過ぎた頃、プライベートでもストレスが重なり、就職が決まるどころか再び体調を崩す事態となってしまいました。そして、その原因が「何でも自分でしなければいけない」、「こうあるべき、こうすべき」と考えるからだと気づきました。私を縛り付けていたのはこれだったのです。

この「考え方の癖」に気づいたことは大きな収穫でした。支援員の方に自分の気持ちや現状、就労に対する不安を素直に伝え、改めて支援をお願いしました。そのおかげで、企業自習に参加することができました。講座でも、自分はこういうことが苦手だと先生に伝えて手伝っていただいたり、同じ課題に取り組んでいる他の利用者さんに相談したり、コミュニケーションを取れるようになりました。自分が扉を開けるだけで、同じ教室がこんなにも優しい空間になるんだな、と感じました。   

発達障害と診断されてから、私は何かに突き動かされるように行動していました。それは恐らく自分自身が発達障害を特別視し、「何とかしなくてはいけない。」と思い込んでいたためです。様々な制度を利用し、最終的に就労移行支援事業所に辿り着き、自分が一番自分を分かっていなかったことに気づけました。そして自分が変われば世界が変わる、ということも実感しました。就職をする前にこの事に気づけて本当に良かったと思います。どこで何に繋がるかは分かりません。少しでも気になることがあったら、とりあえず動いてみることをお勧めします。

参考文献

病気やケガで会社を休んだとき/全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp

国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度/国民年金機構
https://www.nenkin.go.jp

障害のあるみなさまへ/ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.go.jp

もけたろう

もけたろう

色々なことに興味があるアラフォー女子。エネルギー源は野球観戦。1年半前にADHD、ASDと診断され、混乱しながらも自分らしい生き方を模索中。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

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