就労移行支援事業所「スリーピース」へ取材しました

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大阪の北浜と今里に構える就労移行支援事業所「スリーピース」のほうへ取材を行いました。心理学の中でも外的刺激への反応に重きを置いた従来型とは一線を画す、「選択理論」を猛勉強して日々の支援に取り入れている個性的な事業所です。

就労支援を始めるきっかけ

──前のお仕事は何をされていましたか

「建築業界の資格を発行する協会に勤めており、運営を行っていました。直属の上司がうつになったのをきっかけに、就労移行支援について知りました。」

──どういう風に就労移行支援の事業所を探したのでしょうか

「ネットや知り合いからです。協会にも事業所の情報が寄せられていました。その中で『選択理論』について学ぶことが出来、救われました。不幸や落ち込みの元をたどれば身近な人間関係が良くないことに結びつきます。身近な人間関係を良くしていきながら、それを軸に自己犠牲せず自分らしく生きていくのが選択理論です。これに則った就労支援を自分もやりたいと思いました。」

選択理論について

──選択理論とはどういったものでしょう

「よく『お前のせいで私は悲しくなった!』『お前のせいで私は怒っている!』と感情の理由を外部に求めることがありますね。そうした操れない外部に支配されるのではなく、自分が行動を“選んでいる”という意味で“選択”と名付けられたのが選択理論です。」
「例えば駅のホームなんかで肩がぶつかることを想定してください。中には『何ぶつかってんだオメー!』と怒る者もおり、しばしば『アイツがぶつかったから、俺が怒ることになった!』と言います。しかし、ぶつかった相手が強そうで怖い見た目ならどうでしょう。どなり立てるなどせず、大人しく引き下がる筈です。結局、ぶつけられて怒ったのではなく、ぶつかった相手を見て怒るかどうか“選択”しているのです。行動が選べるという自覚を持つことで、自己意思でコントロール出来る分にだけ注力するのが選択理論です。」
「つい他人や環境のせいにしてしまいがちですが、そうではなく置かれた環境の中で選択できるところを見つけ、幸福に近づいていくのです。こういった考えを知るだけでも違ってくると思い、お伝えしています。」

──自己啓発研修で学ばれたそうですね。どのような思いで広めていかれるのでしょうか?

「選択理論そのものはアメリカから世界中に伝わっているものです。本国では受刑者を対象に選択理論アプローチをしてからの再犯率の変化が調査されたことがあります。7~8割と高い再犯率のアメリカで、対象の再犯率はほぼ0%に近いという結果でした。これを日本でも広めれば幸福感は伸びると思い、選択理論を実践して他者や利用者様にアプローチしています。」

──ビジネス面でも役立ちそうな理論ですね

「社内でのスタッフ指導についても、ただ怒鳴っているだけでは響きません。結局は本人の内発的な動機付けでしか変われないので、いかに相手の願望を見出して支援していき主体性を引き出すかです。」

引きこもりから就職して一児のパパへ

──実際にどういったプログラムで選択理論を教えているのですか

「専門の講師による選択理論の講座を月に2回設けています。支援員も全て選択理論を学習しており、資格の取得も奨励しています。」
「厚生労働省の調査によると、障害者の離職理由として最も多いのが低賃金で、次に多いのは職場での人間関係です。人間関係は健常者にとっても悩ましいもので、ゆえに良好な人間関係を築きながら自身も豊かに暮らしていくことが重要となります。常日頃から自分がやろうとする行動や言葉が、相手との距離を近づけるか遠ざけるか考えながら選択していく積み重ねが、自分にとってプラスになっていくことを知ってもらうのが目標の一つです。」
「選択理論では『人間関係を築く7つの習慣と壊す7つの習慣』が纏められており、ネットで検索すればすぐ出てくると思います。例えば、ガミガミ叱ったり褒美で釣ったりする悪い習慣で育つと自信のない子どもになり、逆に良い習慣で育てば自信を持った子どもになります。そうした『自信』というファクターの大切さについても情報提供しています。」

──利用者からの感想や具体的なエピソードなどはありますか

「自分の意志が及ばないところをコントロールしようとしていたことに気付かれる方は多いです。他人を思い通りにする為に怒鳴ったり罵ったりしていた人へ、理論で伝えつつ我々の実践を見せることが、変わる契機となりました。」
「過去、統合失調症で引きこもりだった利用者がおり、彼もここで選択理論を学び実践しました。就職先ではチームリーダーとなり、今では結婚して一児の父にまでなっています。」

──選択によって辛さが悪化するリスクはありませんか

「落ち込むこともまた選択といえますし、それを制止はしません。選択権も答えも全ては自身の中にあり、他人に分かるものではないのです。ネガティブな中でも休息など出来ることがあるなら、止めはしません。」
「逆に『自分は今我慢すべきだ』『人間関係を築くには自己犠牲すべきだ』と思い込んでいる方も見受けられます。そういう方には『仲良くなるのに自己犠牲が必要なのか』などと問いますね。」
「単語だけだと重く聞こえますが、シンプルな事です。今まで無意識に他人や環境のせいにしていたことへ気付ければ、自分の選択権にも気付くことが出来るだけです。説明されれば簡単に理解できる筈です。」
「人によっては理解が難しいこともあります。それでも、安心・安全空間の中で『どうやって自分らしく生きていくか』を考えていくにつれて、すぐ手が出る人さえも落ち着いていきます。教えるというより自己評価を促すと言った方が適切かもしれません。」
「大抵の方は自分の選択権に気付いておらず、気付くだけでプラスになります。親のせい・他人のせい・貧乏のせいにしていたのが、自力で自分を変えていけるようになるわけですから。」

今後の展望

──心理学は日本だとマイナーなので、伝わりにくい面はあると思います。それでも、どのように広めていくつもりですか

「心理学としてのPRはしていません。ただ、よりよい人間関係を築く方法やセルフケアの手段として伝えています。選択理論以外にも、資格取得にもかなり力を入れていますよ。心理学であることはホームページにもあまり載せていませんね。」

──資格を一から取れるのはいいですね

「資格はビジネスマナーなど50種類程度を幅広く揃えています。前職(資格協会)のおかげでそれだけ扱えるようになりました。試験を事業所内で受けられるようにしたりレポート課題で代替したり、安心して資格を取得できる工夫もしています。」

──企業実習先についても差し支えない範囲で教えてください

「主な就職先にAmazon・NTT・日本ハム等があり、載っていない中小企業も多くあります。これについては前職は関係なく、利用者の行きたい求人に応じて連絡し営業する感じですね。『どうして素直な利用者が多いのですか?』と聞かれることもあり、選択理論について話すと納得して頂けます。」

──今後のビジョンについて何か考えはありますか

「既に北浜と今里で2つ事業所を構えていますが、店舗拡大するというビジョンは無いですが、望まれるニーズがそこにある場合は出店することがあるかもしれません。それよりも、これからはそれぞれの質を高めていく方向で考えていきたいです。」

──最後に何か伝えたいことがあれば

「自分らしく働き続けられる将来を本気でお手伝いするということではないでしょうか。」
「どんな人というか、どんな事業所と出会うかが大切だと思います。近いからなどと安易な理由で選ぶ方は多いですが、事業所選びは人生を左右するので、自分が将来何をやりたいかを軸に選んでもらいたいです。我々なら人間関係とセルフケアに特化していると自負しています。」

公式サイト

就労移行支援事業所スリーピース
https://3ps-group.com

身に着けたい7つの習慣|選択理論.jp
http://www.choicetheory.jp

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、障害・病気をもつ方の仕事や暮らしに関する最新ニュースやコラムなどを発信していきます。
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