「再生モノ」作品に触れた時のこと

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Photo by Diana Polekhina on Unsplash

半年ほど前、縁あって映画を2作続けて見せてもらったことがあります。題名はそれぞれ「オレンジ・ランプ」「裸足になって」といい、どちらも大きな傷と喪失から立ち直っていく「再生モノ」でした。

「オレンジ・ランプ」は、39歳で若年性認知症と診断された男・晃一が主人公です。戸惑いや不安、何より認知症という言葉の重みから、最初は職場でも家庭でもフットサルクラブでもギクシャクしてしまいます。しかし、中盤から自助グループに入ったことで晃一たちは一気に安定へ向かいます。同じ自助グループ仲間の家族が「最初は無理心中しようとまで思った」ほどの心境から立ち直った理由を、主人公夫婦に語りかけるシーンは「再生モノ」のメンター(師匠)として模範的でした。

最終的に、晃一は自らの認知症と渡り合いながら人生も生活も再構築して、同じ悩みを抱える人々へ向けて講演する立場にもなりました。この映画にはモデルとなった現実の人物がおり、その人も39歳で若年性認知症と診断されされながら、会社勤めを続けて相談や講演の活動にも取り組んでおられるそうです。

「裸足になって(原題:Houria)」は、アルジェリアでバレエダンサーを志す少女・フーリアが主人公です。彼女は出先で激昂した男に階段から突き落とされ、大怪我を負った上に心的外傷で喋れなくなってしまいます。死んだも同然とまで塞ぎ込んでいたフーリアを救ったのは、同じく様々な問題を抱えたリハビリ仲間の皆でした。ひょんなことからダンスの腕前を見初められたことで、ダンスの指導役となったフーリアは、やがて生きる情熱を取り戻していきます。

しかしフーリアの受難はリハビリ後も続きます。突き落としてきた男は、かつて「恩赦」を受けていたために逮捕も起訴も望めないばかりか、再びフーリアの前に現れて恐怖を蘇らせます。更に、スペインでの立身出世を夢見ていた親友も、密航の過程で帰らぬ人となってしまいます。それでもフーリアは挫けず、手話を盛り込んだ力強いコンテンポラリーダンスを完成させ、それを亡き親友に手向けて映画は終了します。

晃一もフーリアも、病や暴力によって甚大な傷を負い、一度は人生に絶望します。しかし、同じ悩みを持つ仲間や愛する家族らの温かな感情に包まれ、再起への大きな基盤となりました。以前の状態そのままには戻らなくても、2人は自分なりにそれぞれの再生へと歩んでいます。たとえ傷を負う前より生活水準が落ちたままでも、本人は気高く前を向いて生きている……その様子を見て自分も頑張ろうと思えることが「再生モノ」の持つ魅力なのだと感じています。

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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