もし何らかの思想に基づいてインフラが制限されたら
暮らしPhoto by Luis Tosta on Unsplash
インフラ、略さず言えばインフラストラクチャー。生活のあらゆる面で基盤となる施設や設備のことで、特に電気・水道・ガス・通信・交通の「5大インフラ」は1つでも欠けると生活が成り立たないほどの影響力を持ちます。
全ての人にとって必要であるからには、全ての人に行き渡らねばなりません。平時は不具合がないか常にチェックとメンテナンスをし、ダメージを受けたら速やかに復旧に努めるのがインフラ整備です。これに携わる方々は、平和なうちは感謝されにくい割に有事の際は猛烈に罵倒される、ヒーローの負の側面ばかりを背負った孤独な立場ですが、インフラを守る以上は泣き言を吐く暇も権利もありません。
インフラにとって絶対に必要なことは何でしょうか。もちろん頑丈さは大切ですが、もっと根源的な部分です。インフラにとって最も重要なことは「余計な感情や思想を持たないこと」です。労働者の権利を主張するストライキならばまだしも、「自分たち整備業者の大切さを知れ」と一斉にバックレる、「この地域は気に入らないから値段を上げてやる」と差別するなどされるとインフラは瞬く間に崩壊します。
特に後者、余計な思想を持つがあまり料金を跳ね上げ、最悪導線を切ってしまうようなことが起こるのは考えただけでも恐ろしいですね。電気や水道、物流にネット回線と、様々なライフラインがある中で、その企業や業者が何らかの差別思想に基づいて動けば行き着く先は地獄です。
いい大人が、それもライフラインに関わる重要な立場にいる責任の大きい大人がそのような馬鹿げた真似はしないと思われるでしょう。しかし、実際に似た動きがカード決済の世界では起こっています。
VisaやMasterCardのクレジットカードが次々と使えなくなっているのをご存知でしょうか。「DLsite」「マンガ図書館Z」「メロンブックス」など、様々なサービスでVisaでの決済の取りやめ、つまりお金を払う導線が切られる事態が発生しています。Visa日本支社の一存であるとか、下部組織である決済代行会社の突き上げだとか、色々な説があって不透明な部分も多いですが、とにかくカード決済に余計な思想が入り込んで差別的対応が横行しつつあるのは確かなようです。
お金を払う導線を切るのは、物流のラインを切って商品が行き渡らないようにするのと同じことです。他に決済の方法があるなどといった話ではなく、思想ひとつでライフラインを勝手に切ってしまえることのほうが重大な問題です。例えるなら物流業者が「あの地域は“ケガレ”だから配送をやめよう」と言い出すようなものです。
差別思想によってインフラが崩壊するという、人類史の汚点にもなりかねない事態は、現実に起こるかもしれません。Visaでの決済を取り巻く騒動は、思想でインフラを制限することのモデルケース或いは社会実験でもあるように思えます。
参考サイト
オタク業界で相次ぐ「Visa」クレジットカードの使用規制……はたしてSteamは大丈夫?
https://news.yahoo.co.jp