メディアに影響され障害者を急き立てる人々

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Photo by bruce mars on Unsplash

今年の24時間テレビで放映していたドラマは知的障害者がテーマで、合理的配慮の行き届いた職場に就いて前向きになる内容だったと聞きました(詳しい内容は見てないので分かりません)。これを受けた合理的配慮いいね的な反応に混じって、ある憂鬱な意見を見かけました。「知的障害で無職の兄がいる。このドラマに影響された母が『ドラマの中の障害者も頑張ってるんだから、あんたも頑張りなさい』と発破をかけて、不機嫌になった兄が暴れ出した」

また、ASDの小6児童が英検2級(高校卒業相当)に合格した記事では、「発達障害でも特性を活かせばこんな凄いことが出来る!お前らも自分の障害に不貞腐れてないで少しは頑張れ!」という反応が記事そのものよりも目立っていました。これらは励ましているつもりなのか知りませんが、実際のところ障害者を急き立てて追い詰める言葉でしかなく、刃物か銃口を突き付けているに過ぎません。

そもそも、あの小6児童には多くのプラス要素が備わっていたことを理解していますでしょうか。「英語」という社会的に広く認められた技能に多大な興味を示したこと、それを知った父親が英語の塾へ通わせたこと、塾講師が知恵を絞り本人の特性に配慮したことが最終的に英検2級取得へと繋がりました。塾へ通い始めた当初は感情の浮き沈みが激しく、タイマーの音や誤答などでパニックになっていましたが、いつしか間違いや負けから学ぶ余裕を得て、一人で試験に臨めるまでに成長したのだそうです。

当事者の尖った部分が社会のニーズに合致し、理解だけでなく知恵にも優れた周囲に恵まれる、そういった幸運がなければ「天才肌」などと呼ばれません。社会的に評価されうる才能という「補償」を受けた発達障害者は極めて少数です。

それにも関わらず、メディアが流す「輝く障害者像」に影響され、「障害者でもここまでやれるなら、うちの子も頑張れば…」「うちの子には障害がある分、何かしら才能がある筈」などといった幻想に囚われる人が後を絶ちません。これはメディアの影響というよりも、将来を担う人材としての才能や生産性に拘る受け手の問題でしょう。

英検2級に受かった小6児童の父親は、息子の才能が開花しているにも関わらず「今の状態を望んで生まれてきたわけではない。もし変えられるならば、勉強が出来なくても友達と“普通に”コミュニケーション出来る子にしたい」と吐露しています。人間の欲望は際限がないものですね。


参考サイト

発達障がいの小6が英検2級合格 周囲の支えで実力伸ばす 家では「寝言まで英語」
https://news.yahoo.co.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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