ダウン症児がきっかけで、タイが代理出産を禁止した話

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Photo by Omar Lopez on Unsplash

代理母出産とは、一組のカップルが代理母となる女性へ報酬を支払い、体外受精した受精卵を代わりに育て産んでもらうものです。子どもが欲しいのに出来ない事情を持つカップルにとっては救いとなる一方、倫理や宗教や経済格差といった様々な面で問題視されることも多く、認めるかどうかは国によって違います。なので、合法国の女性を代理母として契約する場合もあります。

タイはかつて、欧米並みの高い医療技術を安価で受けられる絶好の「取引先」とされていました。しかし2015年から代理出産の完全禁止に踏み切り、非合法の側へと転換します。この対応の裏には「ダウン症」があったとされています。

代理出産が禁止となったきっかけは2014年、当時21歳のパタラモン・チャンブアさんがオーストラリアの男女カップルと結んだ代理出産の契約でした。既に2児の母であったパタラモンさんにとって、日本円で約190万近くの報酬は「いい仕事に思えた」そうです。不妊は依頼人妻のほうだったので、依頼人夫と別のタイ人女性の受精卵を移植されたパタラモンさん。やがて双子を妊娠します。

妊娠7か月目、双子の片方である男児がダウン症だと発覚しました。産後にこれを知った依頼人夫婦は中絶を求めたばかりか、なんともう片方の健常な女児だけを連れ帰ってしまいます。ダウン症の男児は、事実上の受け取り拒否となりました。依頼人夫婦についてパタラモンさんは、「健康な子どもが欲しいという依頼人と話がこじれた」「依頼人は男児に目もくれなかった」と振り返ります。

置き去りにされた男児は「ガミー」と名付けられ、パタラモンさんの第3子となりました。ガミーちゃんはダウン症の他にも先天性の肺疾患を抱えており、“負い目”もあるオーストラリアではかつての報酬額を上回る募金が集まったそうです。お陰でガミーちゃんは現在も健やかに育っています。

障害児を拒否して健常児だけ連れ帰った依頼人夫婦は、共通の友人を介してこのように弁明しました。「大病院で出産する約束を破ったから契約は無効」「心肺の疾患を抱えていたので国際移動は困難だと思った。ただダウン症とは知らなかった」「パタラモンさんがガミーちゃんを渡そうとしなかった」「軍事クーデターなど政情不安があり、タイには長居できなかった」

弁明がどうあれ、障害児を置いて健常児だけ連れ帰ったのは事実です。依頼人夫婦の姿勢には当然ながら非難が殺到し、依頼人夫に至っては過去の性犯罪歴をほじくり返される羽目になりました。タイとオーストラリア両国の問題にまで発展しかねない状況の中、タイでは国外から依頼された代理出産を禁止する措置がとられます。ダウン症児をきっかけに、代理出産へのスタンスが明確に決まったともいえます。

かつて代理母が子どもの引き渡しを拒否し親権を主張した「ベビーM事件」というものがありました。タイで起こったこの事例には、実は明確な名前が存在しません。何か名前が付けば、語り継ぐうえでもやりやすいのですが。ちなみに、国外から依頼された代理出産を再解禁する動きも最近ではあるみたいです。

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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