統合失調症の「幻聴」ってどんな感じ?当事者が語るリアルな声と音

統合失調症

画像:Unsplash@chairulfajar_が撮影した写真

筆者は、36年前、16歳のときに統合失調症を発症しました。長い闘病生活のなかでは、入院や引きこもりなども経験しましたが、現在は就労継続支援B型事業所を利用しながら、物書きの端くれとして活動しています。このコラムでは、統合失調症の代表的な症状「幻聴」について詳しく語ります。症状には個人差がありますが、筆者が感じている幻聴の世界とその捉え方について書いていますので、ひとつの考え方として参考にしていただければ幸いです。

統合失調症の幻聴とは?

統合失調症の幻聴とは、聞こえるはずのない音が聞こえるという症状。筆者の場合、被害妄想から、他人のひそひそ話や悪口などが幻聴としてあらわれます。幻聴のほとんどが自分のことを悪く言う話し声で、ささやき声として聞こえます。たまにハッキリと聞こえることもありますが、ほとんどがささやき声です。しかし、音の出るはずのないところから、まるでスピーカーから発せられるような音が聞こえることもあります。幻聴は、声だけではなくて物音も聞こえます。症状がひどかった頃は、人の足音や銃声のようなものが聞こえたこともありました。

また、筆者の場合は音への敏感さも関係しているのではないかと思っています。健常者の方が「気のせいかな」と受け流すような、かすかな音も察知してしまうのです。察知するだけでなく、「なぜ聞こえるのかな」「何の音だろう」と、こだわってしまう部分があるのだと思います。

実際の声や音と幻聴はどうやって区別する?

実際に聞こえていない音や声に気づいたきっかけは、山の中でした。街中では、周囲に人がいるので、幻聴が聞こえてくると「周りの人が自分の噂をしている」と信じていました。しかし、誰もいない山の中でも人の話し声が聞こえたのです。周りをいくら確認しても誰もいないので「これはおかしい」と思い、自分に聞こえているものは幻聴なのだと気づきました。また、家族の声で「あの子を病院に引き取ってもらおう。隔離して一生、閉じ込めてしまおう」という話し声が聞こえたこともありました。信頼している家族が、そんなことを言うはずがありません。それから、周りを観察するようにしました。冷静に周囲を見渡していると、誰もが忙しく動いています。筆者の悪口を言っているような暇な人などいないということに気付きました。また、芸能人が筆者に罵声を浴びせる声が聞こえたときにも、これは幻聴だとわかりました。芸能人が一般人である筆者のことを知る術もなければ、テレビ番組での会話に登場するほど自分は有名人でもありません。

このような辻褄の合わないこと、現実的におかしなことが続いたので「これは幻聴なのだ」と気づくようになりました。しかし、人の声の幻聴に比べて物音の幻聴は、実際の音との区別が難しいです。幻聴とは、空耳のようなものだと思います。空耳とは、音や声が聞こえたような気がすること。もしくは、聞こえてきた曖昧な音を、脳が補正するのに失敗して間違った理解をしてしまうことともいわれます。正直、自分の聴覚はあてになりません。もちろん、日常生活では名前を呼ばれたり人と会話をしたりしますが、幻聴と実際の声が混じっているので、混乱します。でも、知らない街で突然名前を呼ばれたり、悪口を言われたりするはずがありません。自分は有名人ではないのですから。街ですれ違う人たちが自分に罵声を浴びせるようなことは、非現実なことです。

幻聴は完全に消えるのか

幻聴は、薬を服用すれば消えます。しかし、体調が悪いときや疲労やストレスが溜まったときに、幻聴が聞こえてくることがあります。現在は、幻聴の正体を自分なりに理解したので、やり過ごせるようになりました。一般的な人と変わらない感覚になったと自己分析します。統合失調症の幻聴は、自分の心にある不安や恐怖などの気持ちが、人の声や物音として聞こえてくるのではないでしょうか。

ただ、幻聴は「つらい症状」である一方、少しは聞こえたほうが楽しいとも思っているのです。罵声や悪口の幻聴は当然聞こえないほうがいいですが「かっこいい」「すてき」「がんばれ」「応援しているからな」「すごいね」などのような幻聴が聞こえてくると、ワクワクして楽しくなってきます。このようなポジティブな幻聴は、やはり普段の考え方が前向きでないと聞こえません。罵声や悪口ばかり聞こえている状態のときは、本当につらいと思います。ですが、幻聴が幻聴であることを自覚し、現実に気づいたとき「怖いものではない」「気にする必要はない」といった具合に受け流すことができるようになります。すると、いつしか気持ちが前向きになってくるので、聞こえる幻聴もポジティブなものが多くなります。たとえ幻聴が完全に消えなくても、生活に支障なく過ごせるようになります。

幻聴とうまく付き合う最大のコツ

幻聴とうまく付き合うには、聞こえてくるものを楽しむことではないかと思っています。幻聴や妄想はあってもいいと認め、完全に消そうと躍起になるのをやめるのです。筆者は「幻聴が聞こえるのは、自分が世界の中心にいるからだ」と都合よく考えたりしています。自分の悪口を言う幻聴が聞こえたら「自分は人から話題にされる有名人であり、世の中の皆が筆者の言動の一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)に注目しているのだ」と考えてみるのです。世界を動かしている、いわば神のような存在に思えます。人から注目されているのならば、自分の発言や行動で世の中に影響を与えることができるでしょう。そこでポジティブな気持ちでいれば、ポジティブな世界に変わっていきます。悪い幻聴は無視して受け流し、気にしないようになりました。

幻聴や妄想で自分を傷つけたり、人に危害を加えたりするような場合は問題ですが、人畜無害であれば妄想や幻聴があってもいいと、受け入れるのです。「自分はスターなのだ!」「自分は唯一無二の高貴な存在なのだ」と思っても、誰も傷つきません。幸せな妄想です。ポジティブにものごとを考えたほうが、生きるのが楽しくなります。

世界は音であって、聞こえる幻聴により世界が違ったものに見えます。不穏な音が聞こえると不安や恐怖を感じます。たとえば雷や台風のときの風の音は不穏です。逆に、夏の花火大会の音を聞いているとなんだかワクワクしてきます。人間は視覚情報を主にしてはいるものの、聴覚から入る情報も精神状態を大きく左右します。まるで夢を見ているような世界。悪夢はつらいですが、ポジティブな幻聴が聞こえてくると楽しい夢を体験できます。

まとめ

幻聴は心の声だと気付き、ポジティブな考えを心がけたことで、これまでとは違った前向きな幻聴が聞こえてくるようになりました。悪い幻聴もさほど気にならなくなったのは、歳を重ね、病気の経験値も上がったからだと思います。もし今、若い方で統合失調症の幻聴に悩んでいる方がいるのなら、きっといずれ気にならなくなるから安心してほしい、考え方や捉え方で症状に悩まなくなることもあると伝えたいです。


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モンゴロイド

モンゴロイド

1971年生まれの52歳。北関東在住。高校を2校中退し、30年前に閉鎖病棟へ2ヶ月間入院。現在は病気の症状も落ち着き、物書きの端くれとして電子書籍の執筆を6年間継続中。

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