当事者が言葉を紡ぎ、当事者に光を灯す~心の暗闇を照らすメディア「AKARI」の編集長とライターに聞く

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当事者による生の声を届け、心の暗闇を照らすWebメディア「AKARI」。編集長の島川修一さん(以下「島」)と、ライターのPinkさん(以下「P」)、翼祈(たすき)さん(以下「翼」)にインタビュー取材をしました。

文章好きが集う

──AKARIを立ち上げたきっかけは何ですか
島「当時は私が担当してませんでしたが、立ち上げは2017年です。元々、『リストカットの代わりに赤いマジックで線を引くことで腕を切らないで済む』というライフハックを利用者さんから共有があり、そういった情報をより知ってもらおうという話から始まったと聞いています」

──サイトの特徴を教えてください
島「弊社のビジョンとして、『生きづらさや働きづらさのない世の中を作る』というのがあり、当事者のために情報を発信する媒体としてAKARIを立ち上げました。同じ悩みを持つ人に向けて発信しているのが特徴と言えますね。他にも同様の取り組みはありますが、ほとんど立ち上げては消えている現状がある中で、存続しているのは稀です。最近はうちを参考にしていると言ってくれている「musubi」というサイトが精力的に活動されていますね」
musubi 公式サイト:https://musubi.media/

──どのようにライターを募集し、どのようにライターとなったかを教えてください
島「特別に募集しているというより、AKARIの活動に興味を持って自然に集まる感じです。活動について説明はしていますが、それでやってみたいとなる方が多いですね」
P「ライターを志望したきっかけは、元々文章を書くのが好きだったのと、就労移行支援事業所で月に一度、広報誌を作っていたので、経験などを活かせると思ったからです」
翼「私は2007年からSNS、2009年からブログで文章を書き続けてきました。働き出してから10年も経ってなくてずっと引きこもりでしたが、文章を書くことはすなわち『世の中と繋がる手段』と『書いたことで誰かに喜んでいただけること』だと思っていたので、文章を書くのはその当時から好きでした。前職で5年勤めて限界を感じていた時、TANOSHIKAでライター募集を知って1年ほど準備した末に転職しました。書くことが楽しいあまり、島川さんからは放っておいても書き続けてくれるとまで言われている人間なので、書くことで元気になれますし、仕事を休むこともほとんどありません。仕事としてライターは向いていると思います」

──コラムのネタ探しや基準はどうしていますか
島「自死を助長する内容でなければ無制限で、あとはどのくらいの人が読んでくれるかを検索ボリュームなども意識しながらリサーチしてネタ集めをしてもらっている感じです。Googleアラートという、特定のキーワードに関連する記事をGmailで送ってくれるツールを利用したり、各自でSNSやニュースサイトを巡回したり、普段話している内容をそのまま記事にしたりしている方もいます」
P「まずは自分の障害や周りのことから入りました。それも限りがあるので、ニュースサイトを巡回して気になった内容について書いていくのが最近の入り口ですね」
翼「私は毎日決まった時間にSNSにあるその日のニュースから検索して、関連記事を集めていますね。AKARIは『障害・病気・難病』『それらの治療法や治療薬、研究』『障害福祉・社会福祉・教育』が中心なので、これらを探していって、情報として弱ければより深い内容にするために、更に調べて足していきます。元々調べものが好きなので、2年前からの毎日のルーティンとして身体に馴染んでますし、知らない人でも分かるよう意識して書いています。自分ですら知らない話ばかりですが、元々知っている内容ばかり書くよりもいい経験になります。珍しさと伝えることの大事さを重んじて調べています」

執筆で気持ちの整理

──今まで発信した中で読者への影響や反響はありましたか
P「中学時代の旧友がコロナで亡くなりショックを受け、その後AKARIに書こうと思いました。言葉に書いて出すことで自分の気持ちを消化できました。経験のない人にも伝わるかなというのと、心療内科の先生にも文章を褒められたので、素直な気持ちは伝えられたと思います」
翼「私はAKARIのX(旧Twitter)とインスタのSNSアカウントも管理しておりまして、コメントを見ることもあります。去年、AKARIのXに難病の遠位型ミオパチーの治療薬『アセノベル』が承認されたという記事を書いて、投稿しました。こういう話は拡散すべきと思って積極的に取り組んでいますが、なかなか当事者には届きません。ところが、この当事者がAKARIのXに『希望の光が見えた、嬉しい』と返信したのを見て、こちらも嬉しくなりました。希望となるニュースの発信も大切だなと気付かされる出来事でした」

──AKARIをやってきて良かったことはありますか
島「AKARIの運営だけでなくnoteもやっており、よりライターの内面やパーソナルな部分を掘り下げることで、情報発信に特化したAKARIと差別化しています。有料記事を1人で9000円売り上げたり月2万PV読まれている人も居ます。広報誌の制作も取り組むようになり、AKARIで培った力を活かしてインタビューなどを行なっています。」
P「昨夏からnoteも書き始めており、読まれている層の違いを感じています。ただ、note年内1万PVとかAKARIの上位10記事とか、沢山読まれているライターを見習いながら、数字のために落ち込むのではなくモチベーションを上げていけるようになったのは良い変化だと思います」
翼「最初にnoteを始めたときは、自分の好きな話ばかり書いていましたが、最近はAKARIでも通用する記事を意識して選んで書いています。意識を変えてからはnoteの読者層が変わり、活躍中のWEBライターからフォローやコメントなどといった反応を貰うなど記事の露出も増え、方向転換して良かったなと思っています。AKARIの書き始めは、『最後の感想に自分の体験談や既往歴から入れるように』と、入社して間もない頃から島川さんに言われていたので、書いていて苦しい事もありました。しかし段々と心のトゲが抜けたというか、前向きになれるようになっていって、最後の感想は自分の記事がより活きてきました。最初は自分の体験談を書くことが辛かったことも、今は書き続けてきて良かったです。辛い経験も抱きしめてあげられるようになったのが私の良い変化ですね」

──逆に苦労したことはありますか
島「苦労したのはSEO対策ですね。最初は支援員すら分かっていませんでしたが、勉強して段々理解できるようになりました。自分だけでなく全員に勉強して貰いたいのですが、時間がなかなかとれなくて、去年末に参考書籍を買い、勉強会を開催しました。苦労といえばそのぐらいで、あとは助けてもらって感謝することばかりですね」
P「まず書くことが見つからない時はきついですね。また、一般就労で10年以上働いていた前職と違ってタブレットやweb会議などが初めてづくしで、ツールを覚えるのが大変でした。周りと励まし合える瞬間は嬉しいですし、この歳でも勉強し続けられることは良い事なので、もっとアンテナを張っていきたいです」
翼「島川さんからのAKARIのSNSでの無茶振りです。SNSの更新は主に私がしていますが、突然『これをやって欲しい』と言われて、自分でまずは文章を考えますが、変更希望があって、インスタのストーリーを上げ直す時もあります。どんな球が飛んで来るか分からないところがあって毎回困惑しますが、島川さんの要望に沿った方が良い内容になるので、『どんな球も打ち返すことができるように』と、日々考えながら更新しています」

──AKARIとして目指しているメディア像はありますか
島「理想を追い求めるのではなく、皆がやりたいことを実現出来ていればそれでいいと思います。その為にどうやって溝を埋めていくか、発信したいと思えるメディアであり続けることが目標です。今後もライター同士で高め合う関係を続けていきたいです」

一人でも誰かの灯りとなれたら

──自分の体験談を書こうにも書けない精神状態になったことはありますか
翼「私は様々な経験をしてきました。中学でいじめを受けて、大学では同じ寮の同級生から嫌がらせを受けて1年で中退し、それからすぐにアルバイト探しを続けて、2年間150件以上面接してもほぼ全部落ちて、『もう無理だ』と、身体をベッドから起き上げられないほど心が病んでしまって、そこから約10年引きこもりとなりました。
このままでいいのかともがき続けて、A型事業所で働き始めてから今に至るのですが、最初は自分の経験を話すことが辛かったです。書いたことで入社して1ヵ月半が経つまでは、特に中学校で私をいじめていた同級生が当時の姿で、悪夢として夢にまで出るほどでしたが、最近は自分の悩みを発信することで同じ悩みを持つ人から『自分は一人じゃない』と思ってもらえるのではないかと考えたことで、楽になりました。乗り越えたからこそ執筆できるのではないかと考えています」

──今の話は載せても大丈夫ですか
翼「AKARIにも赤裸々に書いているので載せても大丈夫です。最初の頃は頓服薬を飲むことが増えるほど大変でしたが、辛かった経験を受け入れられるようになると、身体に馴染んできますよね」

──これからの展望や目標はありますか
P「もっと多くの人にAKARIを見て頂けるようにするのが目標です。noteについても、自分も有料記事を書けるようになりたいと常に考えており、その準備を進めている最中です」
翼「あまり知られていなくても大事な情報を選んで書いてますし、『知らなかったけどすごく大事、ためになった』と思って頂けると嬉しいです。自分の体験談を経て色々な話を書けるようになったので、記事を通じて誰かの心の“灯り”となるよう執筆を続けていきたいです」
島「AKARIに関しては今の形を保ちつつ、利益に繋がる活動や外部からの案件などにも取り組んでいきたいです。それぞれが月1万でも稼げたら卒業後に副業でもできますし、WEBライターを本気で目指す方もおりますので、様々な機会を提供していきたいです。僕は独立も考えていますが、僕が去った後でも互いに高め合える環境を築き、成長へ繋げていけたらなと思います。去年から絵本もkindleで出版する企画も始めており、このような新しい活動も提供していくつもりです」

AKARI 公式サイト
https://akari-media.com/

TANOSHIKA広報誌
https://tanoshika.jp/magazine/

絵本の販売プロジェクト「TOBIRAプロジェクト」
https://www.amazon.co.jp/


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障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

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