自閉症スペクトラムに効く読書~楽しく読み、ASDの特性をカバーする

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出典:https://unsplash.com

私は大人になってから本の面白さに気づき、読書を趣味とするようになったのですが、今まで本を読むことによって助けられたと思うことが多くありました。私は自閉症スペクトラム障害(ASD)があり、コミュニケーションが苦手なため、一人で過ごす時間が長くなりがちで、人の心の動きや人生の機微について知る機会が少なく、そのことが生きづらさの原因の一つとなっていたように思います。しかし、良質な本を読むことによって人の心の動きや生き方について学ぶことができ、私自身の生き方も良い方へ変わってきたように思います。

今回はいくつかのテーマについて、私が本を楽しく読む中で、自閉症スペクトラム障害の特性を少しずつカバーできたと思うことについてお話ししたいと思います。

エッセイ

私はエッセイを読むのが特に好きです。エッセイでは著者が日々の生活の中で感じていることや、大切にしている思い出について語られており、同じ著者の作品を多く読むことで、著者に対して深い親しみを感じることができるからです。また、一人の著者について深く知ることは、自閉症スペクトラムがある私にとって、人について理解を深める上で非常に学びが多いと感じています。

エッセイは比較的読みやすい文章であることが多く、また一つの章が数ページであることも多いので、読書にあまり馴染みがない方にもおすすめです。

著者が生きてきた中で何を大切に思っているのか、思い出の中で語られる忘れがたい人についてなど、人生の機微が多く含まれていることが多いため、私はこれまでエッセイから沢山のことを教わってきた気がします。

そして、一人でも多くの著者の思いに共感することができるようになってゆくと、それは現実の世界でも人に共感してゆける力に変わっていったように思います。今では人の話を聞くことが好きになり、どの人の人生にもその人にしかない物語があって素晴らしいと改めて気づけるようになり、そのことで自分の中の世界が大きく開かれた気がしました。

小説

私は、もともとあまり小説は読んでいなかったのですが、尊敬するエッセイストさんが日頃から小説を沢山読んで勉強されていたことを知り、少しでもその方に近づきたいとの思いで小説を意識的に読むようになりました。

実際に読んでみると、とても面白くて引き込まれました。小説では人の心の動きが丁寧に描かれていることが多く、人の性格や考え方の違いについて理解を深めることができました。このことは、今まで深い人間関係をなかなか結べなかった私にとっては非常に大きなことでした。また、多様な人間模様が描かれる中で、生きる上でお手本にしてみたいと思えるような人物像にも出会え、そのような本は私が生きてゆく上でも大きな支えとなっています。

特に興味深く読んでいるのが、障害を持った方がどのように逆境を乗り越え、生きてゆくかというストーリーです。障害の種類は違っても、葛藤を乗り越えて、それぞれに工夫をして自身の障害に対処し、世界について学び、世の中に関わってゆくという姿には大変励まされたことを覚えています。

また物語の背景にある歴史や社会的な事柄についても、物語の中で語られることでより理解が深まり、実感を持って学ぶことができるので、その意味でも小説の力は大きいと感じています。

自伝・伝記

私はもし尊敬する人物が見つかったら、自伝や伝記が存在するのであれば、できるだけ読むようにしています。例えその方の活躍している分野が自分の活動分野と大きく違っていたとしても、学ぶことはとても多いと感じています。

一人の人の生き方について時系列に沿って詳細に知ることができるということは、非常に勉強になります。夢を実現するために、いつ頃からどのような努力をされていたのかについても知ることができ、私自身も前向きに生きるためのエネルギーをいただけることが多いです。

自閉症スペクトラム障害によって対人関係が苦手であった私にとって、多様かつ濃密な人間関係から学びを得るという機会は他の方より少なかったかもしれませんが、自伝などを読んで尊敬する人に少しでも近づきたいという気持ちは、自己成長のためのエネルギーになったのではないかと感じています。

児童書

私は大人になってから本を読むようになったので、残念ながら児童書については適切な時期に読むことができませんでしたが、大人になった今からでも遅くないと思い、読んでみたいと思う作品は積極的に読むようにしています。

児童書には、著者が心から伝えたいと思っている、生きてゆく上で本当に大切にした方が良いと思われることのエッセンスが凝縮されていることが多いので、何かに行き詰まって悩んでいる時などに少し立ち止まって読んでみると、様々な気づきを得ることができ、新たな気持ちで前を向くための力をもらえるような気がします。また児童書は情緒豊かに描かれていることが多いので、読んでいると自然と穏やかな気持ちになり、温かい心を育むのを助けてくれるように感じます。

また、古典的な少女小説についても順次読んでいるのですが、彼女らの個性の素晴らしさは大人になったからこそ分かる気がして、今読めたことに感謝しています。彼女らが多くの困難を乗り越え、自立した大人の女性になってゆく姿には、とても勉強させていただいています。

忙しくせわしない現代社会では、心が疲れてしまうように感じることも多いですが、時折立ち止まって良質な児童小説を読むことにより、気持ちがリフレッシュされ、また想像力も豊かになってゆくように感じます。

まとめ

私は若い頃まで、伝えたい気持ちはあるのに言葉がすらすらと出てこないと感じるなど、コミュニケーションにかなりの不得手を感じていましたが、本をよく読むようになってから、自然と言葉が出てくるようになりました。また、今まで自分一人の閉じた世界にいることが多かった私ですが、著者の思いや物語中の登場人物の生き方を知ることで、視野が大きく広がってゆくのを感じました。

もちろん、本を読むことによって全ての困難を克服できる訳ではないとは思いますが、これからも本を片手に歩んでゆきたいと思っています。このコラムによって、少しでも本を読むことの楽しさについて伝わりましたら幸いです。

olive

olive

自閉症スペクトラム障害とADHDを持ち、現在は自身の特性と向き合い、有効な対処方法を日々模索しています。趣味は読書・音楽鑑賞・散歩など。よろしくお願いいたします。

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