
2022年9月末、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療薬として開発されてきた「AMX0035」が、新薬の社会実装を司るアメリカ食品医薬品局からの承認を受けました。これまで進行を遅らせるしかなく、寝たきりになる運命を粛々と背負わされるだけでしたが、そんなALSとの接し方が変わる第一歩になるかもしれません。
さて、ALSの新薬開発やそれに繋がる研究には当然ながら費用がかかるのですが、幸運なことに「寄付」という援助がありました。まとまった額の寄付へ繋げるには高い周知度が必要です。周知度と寄付額を高めてくれたのは、かつてSNS上で大流行したという「アイスバケツチャレンジ」なのですが、それは一体どういったものだったのでしょうか。
アイスバケツチャレンジとは
「アイスバケツチャレンジ」は、2014年にアメリカで2人のALS患者が始めた運動が発祥とされています。その運動とは「バケツ一杯の氷水を頭からかぶり、その様子を動画に収めてSNSへ発信、次にチャレンジする人を指名する」というものです。
指名された人は「同様に氷水を頭からかぶる」「ALS協会へ寄付する」「氷水も寄付も両方する」のいずれかを24時間以内に選択し、実行の後にまた別の誰かを指名、これを繰り返します。氷水をかぶるのも寄付をするのも任意ですが、チャレンジの輪はアメリカのセレブを通じて世界中へ途切れることなく広がり、日本国内でも多くの著名人がアイスバケツチャレンジを実行しています。
これによって集まった研究資金は1億1500万ドルを超えるとされ、研究や新薬開発における大きな原動力となりました。ALS協会はアメリカ国内に留まらず、世界中の研究プロジェクトや有望な治療法への資金提供もしています。
劇薬には相応の副作用がある
アイスバケツチャレンジは、SNSでの大流行とALS協会への寄付が合わさったことで生まれた奇跡といっていいでしょう。「氷水をかぶって配信する」という手段がALSへの周知度を爆発的に上げ、「ALS協会への寄付」という援助への道筋も示したことで多くの寄付を受けることが出来ました。
ただ、究極にして完璧とは言えない事情もあります。一気に周知度と寄付額を押し上げる「劇薬」には、相応の副作用が存在するのです。
2014年の時点でも存在した「SNS映え」が絡む以上、どこかで必ず過激化するものです。消防車を使おうとした消防士が誤って電線に近づき感電死したり、崖から池へダイブして死亡したりといった事例が、チャレンジの広がりから間もなく出始めました。
こうしたこともあってかアイスバケツチャレンジへの批判もまた多く、指名を受けた著名人なども「寄付だけに留め、次の指名もしない」「趣旨は理解するが参加はしない」「支援を途絶えさせないため、あえて1年遅れでやる」と様々な反応を示しています。
一方で、バケツ一杯の米を寄付する「ライスバケツチャレンジ」に変えるなど建設的なアイデアもまた生まれました。米を寄付する代替案が生まれたのが、水不足から「水の無駄遣いだ」と非難が上がっていた南アジア地域からというのですから、人間の可能性というものを感じさせられます。
そして現在
チャレンジ以前では考えられなかったほどの莫大な資金援助を受け、ALS協会は病気を解明するための研究に本腰を入れ始めました。その成果は2年後の2016年から出ていたようです。
2016年にはプロジェクトMinEによって治療の鍵を握る遺伝子を発見。2018年には慶應義塾大学の研究チームがパーキンソン病の薬を応用する治験を開始し、2年半後にALSの進行を遅らせるという結果が発表されています。
これらを経て、2022年現在には冒頭のように新たな治療薬「AMX0035」が社会実装への第一歩を踏み出しました。SNS映えが関わるということで、どうしても賛否両論や副作用のあった「アイスバケツチャレンジ」ですが、これによって寄付されたお金は今もこうしてALS治療に貢献し続けています。
参考サイト
【アイスバケツチャレンジ】世界でバズった動画が8年越しに実を結ぶ。寄付金で開発されたALS治療薬を承認
https://news.yahoo.co.jp

遥けき博愛の郷
遥けき博愛の郷
大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。
身体障害
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