出来る大人は出来る、やれる施設はやれる

暮らし

Photo by Jhon Jim on Unsplash

みな誰しも「デキる大人」でありたいと願っていますし、身近にそういう人がいれば憧れるものです。同じ出身校で成功した人などは分かりやすいでしょう。時としてそれは住む世界が違う雲の上の存在にすら思えますが、憧憬の対象とする人間は確かに同じ現実世界で実在し生きています。簡単に例えるならば、大谷翔平選手はニュース番組の妄想ではなく我々と同じ現実世界で確かに存在している人物だということです。

これは施設や団体にも当てはまります。MBSはかつて、強度行動障害の出る知的障害の男性とその母親を取材し「親元を離れようにも受け入れられる施設が見つからない」という内容でまとめていました。その放送後に、男性の受け入れを申し出る施設が現れ、実際に入所する運びとなったそうです。入所者全員に強度行動障害がみられるというその施設は、現実世界で確かに存在していました。

強度行動障害とは診断名ではなく、自傷他害や器物損壊などの行動が頻発する状態のことです。主に知的障害やASDの中でも、不安や緊張を伝えるのに難がある人間に多く、極端な行動に出ることで周囲との軋轢に繋がります。取材された男性は20代後半で体格もがっしりしており、長いと1時間以上もパニックを起こし続けるのもあって生活の苦労は計り知れません。可能な限り長く見守れるように、父親は自宅に整体院を開き仕事場としています。

しかし、親亡き後に備えて親元を離れて暮らせる目途はつけねばなりません。独立先となる入居型の施設を探すわけなのですが、強度行動障害に対応できる職員の不足を理由に受け入れを拒否され続けました。実に6年もの間、入居できる施設を探し回っていたのですが、全くの脈なしでした。強度行動障害の改善には、正しい伝え方の「学習と理解」をして貰う必要があるのですが、これがまた難しい訳ですね。それまでパニック自体にも対処せねばなりませんし。

そこに転機が訪れます。オオタニ(仮名)という入居型の障害者施設が、受け入れ可能であると名乗り出ました。オオタニは小さいながらも、夜勤に3人ほどのスタッフが控えており、強度行動障害のみられる人だけが入居しています。強度行動障害のみられる人々に特化した入居型の施設は、妄想の産物などではなくしっかり実在していました。

唯一の問題点は所在地でした。男性一家は長野県在住なのに対し、オオタニは大阪市内にあります。その距離は実に300km、車で5時間を要し、おいそれと会いに行けません。しかし、男性は遠い大阪での入所に難色を示さず、施設での暮らしにも最初はぎこちなかったものの案外早く溶け込みました。結局、距離の問題は些細なことだったわけで、寧ろ環境の変化でパニックも減っていったそうです。自分が壊れる前にちゃんとした施設を探し、そこへ預けるのもまた、家族愛の形と言えるでしょう。

距離の問題そのものは無視できず、入居後に母親が直接会えたのは半年後のことでした。しかし現代にはリモート通話というものがあり、それを最近の楽しみとしているようです。

強度行動障害のみられる人とのコミュニケーションに長じ、複数人で夜勤にあたれる「デキる大人」たちがオオタニを形成する核であることは疑う余地もありません。確かに「デキる大人」は少ないでしょうが、現実世界にはしっかりと存在しています。今からでも頑張れば「デキる大人」の仲間入りが出来るかもしれませんよ。

参考サイト

強度行動障害のある28歳息子と初めて離れて暮らす決断
https://news.yahoo.co.jp

強度行動障害の理解(PDF)
https://www.rehab.go.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

TOP

しばらくお待ちください