放課後等デイサービスや就労継続支援B型を展開している「すたぁりっと」さんにロングインタビューをしてきました
仕事放課後等デイサービスや就労継続支援B型を事業展開している「すたぁりっと」では障がい者教育、支援、就労と事業を展開しています。また、B型事業所においては高い工賃を実現しています。その秘密を社長の家住教志さんにインタビューをしてきました。
家住教志さん
放課後等デイサービス──
──いつから放課後デイサービス等の未就学児からの支援事業をはじめられたのでしょうか?創業したのは平成28年3月から放課後等デイサービスです。まず中高生の部を作り、その同年の7月には小学生の部を作りました。その翌年の4月に未就学児の施設を作る、という形で上から下がってくるような形で開設しました。なので現在は事業所設立から3年半になります。
──なぜ、放課後等デイサービスを始めようと思われたのですか?
私の子どもが、全ろうの聴覚障がいを持って生まれてきたのが、この事業を始める動機の根本なんです。その時に私も施設選びに凄く苦労し、いろいろ探し回っていたことがあります。そんな中で子どもの将来が心配になってきました。ちょうどその時期に転職しまして、障がいのある方の働くステージは、どういう方が働け、どういう方が働くことが難しいのかを自分の目で見てみようと思いました。それで一般企業の障がい者雇用部門にご縁を頂き、そこで実際に雇用する側に立ってみました。全国の支援学校や福祉施設から採用し、ジョブコーチをやりながら、面接などもしていました。
その時たくさんの施設を見て、色々な方と会う中で課題を見つけたんです。それは、できない部分が棚上げになってしまっている事です。もちろん福祉施設のスタッフさんは皆さん良い人が多く、障がいのある方もみんな凄く生き生きと笑顔で過ごしてらしゃいます。しかし、例えば挨拶一つにしても距離の取り方や、礼儀作法、マナー、言葉遣いなどは「もっと早くからやろうと思えばできるのでは?」「今このタイミング?採用の場面でやるものなのか?」と、疑問に思っておりました。
つまりキャリア教育というところですね。そこが後回しになり、就労のステージで学ぶことになっているので、それを何とかして就学時の段階から育成できないか、と考えました。初めは塾として運営することを考えましたが、より負担を掛けないようにと福祉制度の活用を考えました。そして放課後等デイサービスという事業を見つけ、やってみようと検討したのがきっかけですね。
──実際に始めてみていかがでしたか?
多くの子どもが着実に伸びていきました。中高生向けの施設から大学へいく子が出たり、一般就労にそのまま結びついたりしています。また、私どもの施設に来たときには「この子は絶対就職できない」と、学校からもお墨付きをもらっていたお子さんが、ちゃんと自分の生きる道を見つけたとき、もの凄い力が発揮したんですよ。そこに至るまでに感情のコントロールや、理解力、情報処理など、欠けている部分を伸ばしていきました。これから何のために、どう生きていきたいのかが分からなかったが、段々世界が広がって見えるようになり、「私はやっぱりこれで生きたいんだ」ってことが見つかった時、その子の就職できる力はぐっと伸びたんですね。もうかれこれ2年半ずっと継続勤務しており、給与もどんどん上がり、今は月に14万円くらいですかね。この方が女性で最初の利用者さんでした。その方の後に続いて大学へ行く知的のある方がいらっしゃいました。本来なら大学という選択をする知的の方は少ないのですが、彼は自分のやりたいことを見つけて大学進学の道を選んだんです。
──中高生の方々にも選べる道というものがあるということでしょうか?
はい、私たちの施設には、支援学校の中等部から一般の高校に進学する方が結構多くいらっしゃいます。小学生の時点では周りについて行けず、支援学校に進まれたのですが、支援学校では重度の方に合わせた教育を基本取られており、軽度の方は浮いてしまいます。軽度の方には軽度の方なりの支援が必要です。そういった個々のケースに合わせた支援があれば、一般の学校に進む事ができる方も増えていくと思います。また、中度の方や重度の方も訓練によってコミュニケーション力は確実に上がり、生活介護と言われていた方が一般企業を目指せるところまで成長していっております。自分で考え、行動することに慣れていない方がとても多いです。周囲のサポートが手厚い方ほど、考える前に周囲が物事を進めてしまい、思考する力が育ちにくい環境になってしまうので、私たちの施設ではそこを伸ばしていきます。
B型作業所については──
──いつ頃から就労継続支援B型を始められたのですか?
平成30年の10月からですね。東住吉区の方で一つ目の事業所を立ち上げました。ここの森ノ宮は2つ目になりますね。
──どうしてB型を始められたのですか?
やはり私は障がい者の親としての目線も持っているので、親としてもっと未来を見せてあげたいんです。これだけ広い世界があるのに、引かれたレールの上だけで生きている、力をもてあましている方がたくさんいる。A型では難しくB型では力を持て余してしまう人たちがいる。そんな中で、何かできないかなと思った時に、A型とB型の間のような施設を作れないかと思ったんですね。私たちは知的障害の中度・重度さんでも十分働けるということを経験から知っているので、A型でも運営出来るとは思います。しかし、彼らたちのボトムアップを基準に考えていたこともあり、A型では初めの受入基準が高くなってしまうため、B型でステップアップできる仕組みを作っていくことにしました。
──一般のB型事業所よりかなり工賃が高いですが、なぜですか?
高くできるというより、高くしなければならないんですよね。先ほど申し上げたように、環境設定さえあれば彼らは働く力はあるんです。でもそこがないから困っていたり埋もれてしまってたりするわけです。では、それを何とか出来ないか、高い工賃を払いながらステップアップできるものって何かないかと考え、思い至ったのが清掃業だったんですよ。 清掃業であれば、学校でも結構練習をしていたり、ほうきとちりとりの使い方は小中学校でも高校でも絶対やるんですよね。ということは誰でもできる業務なんです。
では実際にどうやって進めようかと考えたとき、マンション共用部の清掃に特化することに目をつけました。マンションの清掃会社さんも人材が不足しており、高齢の方が沢山清掃しているのを目にするかと思います。しかし、マンション共用部の清掃サービスを行っていこうとすると、高齢の方が一人で清掃現場を回ることになります。そこで私たちは福祉サービスを活用して、その業務をやろうと考えたんです。でも、それだけでは高い工賃は払えないんですよね。業務委託契約の方法や、協力企業さんといかにタイアップしていくのかを考え、無理せず潤沢に仕事がある状態を作って行く必要がありました。
また、利用される方がステップアップしていくには、明確な目標設定が必要です。何ができて、何を伸ばしたら次のステージに行けるのか、そういう設計をちゃんとやらなければなりません。私たちは利用者さんに対して、人事制度に近い評価基準を設けました。人事制度、企業との強力な繋がり、業務委託契約の手法など、様々な仕掛けをし、何とか実現するところまできました。
現在、東住吉区と中央区(森ノ宮)の事業所はこのモデルでやっているんですが、5万円から8万円のステージの方がどんどん増えて来ているので、一通りの成果はあるかなと思います。
──すたぁりっとさんの今後の展望をお聞かせ下さい。
放課後等デイサービスでは、利用する方が企業で働いていけるよう育成を行っております。企業目線から見ても、優秀な人材に育っていると評価いただけております。しかし、もし本当に優秀な人材であれば、自社で雇用すべきだと思うんです。以前「この子はまだ支援しておきたいな」と思う子や、「今企業に行ったらつぶされてしまうかな」という子を雇用してみたんですよ。雇ってみたところ、最初はまだまだバイトにも到達しない子だったんですが、採用して2年経った今、いなくなったら困る人になりました。もの凄く戦力になっていて、月額で17万、18万くらいお給料を取れています。そういう子をどんどん増やしたいなと思っています。
──周りの方のサポートというか、教育される環境とか、教育される方のお気持ちとかが良かったんじゃないんですか。
そうですね、支援の現場としてはすぐ動けるスタッフが本来は欲しいわけです。つまり、スタッフを育成することが課題なわけですね。じゃあ、育成って何だってところなんですよね。人材育成ってサービスの内容次第だと思うんです。サービスの内容に対応できるかできないか、これだけなんですよね。
私たちが元々やっていた事業は放課後等デイサービスで、専門性がかなり必要なうえ、実際に障がいのある方を訓練していくわけですので、障がいのある方が指導する側に回るのは結構ハードルが高いんです。今後も他の子たちをそのステージに引っ張ってあげれるかというと、そんなに沢山は難しいでしょう。 放課後等デイサービスで障がい者雇用をしていくことも大事なんですけども、B型での雇用を進められるようにしたいと考えております。清掃作業を障がいのある方に指導することが我々職員の業務ですが、先に利用された方が、後から入って来た利用者さんに対して、「こうやるんだよ」と教えてあげることは職員でなくてもできると思います。先に入った方は、自分がやってきたことを伝えればよいので。 でもそれができれば職員一歩手前です。職員はもう少し障害のある方へのサポートを個別に勉強していきますが、基本的には清掃を彼らたちができるようサポートをしていく業務が中心となります。
私たちの施設では、利用者の方に対して人事制度の仕組みを設けております。まず施設利用開始し、仕事の精度が上がると工賃も上がっていきます。2万円、5万円、8万円、12万円の工賃テーブルを設けておりますので、どのステージから始めるか試用期間的な時間を設け、相談の上設定していきます。8万円のステージでは、作業精度を高めた方か、3~4名のリーダーとして後輩に清掃を教えられる方のいずれかになります。ここまでくるともう職員の一歩手前ですね。そうすると、その人たちはもう私たちに必要な人材になっているのです。でも、一般的なB型にいる利用者でコアな人が一般企業に就職し、抜けてしまうと施設としては困ってしまいます。結果、囲い込まれ、閉鎖的な形になりがちなんですね。囲い込もうとしてなくても、抜けられちゃうと作業が止まってしまうので、本来あるべき一般企業へ送り出すことができないのでしょう。
それならば、「いい意味」で囲い込んでしまえばいい訳ですよ。いい意味での囲い込みとは「雇用すること」だと思うんです。「雇用して囲い込む」ことは全くもって問題ないですよね。私たちは沢山の方を雇用したいと考えておりますので、新しく事業所を出店し、雇用を進めていきたいと考えております。また、事業所の工賃が高いので、事業所を増やすことで収入が上がる人たちをぐっと増やすことができるわけです。利用者さんが1施設20人だとしたら、20人の収入が上がり、雇用も生まれます。そういう仕組みを増やしていこうとしているのが、今の状況です。
──これからもっと展望が開けていったらいいですよね。
ちょっと続けてもいいですか。
何で増やしたいかってところには続きがありまして、増やせば雇用も生まれるし、収入も上がる人が増える、それだけではないのです。ある程度の規模感を持って上場したいんですよ。なぜ上場したいかと申しますと、障がいのある方が中心になって活躍する企業として上場したいのです。それが世の中に認められたとき、やっと彼らたちのステージが開けると思っております。例えば、私たちの施設にいる方を雇用したい企業さんが現れたとします。そのとき、彼らたちを雇用する際の求人条件を吊り上げることができると考えております。なぜなら、私たちが雇用したい方でもあるはずですので、私たちよりも条件が低い場合は送り出さず、条件の交渉をすることができると思っております。
また、私たちの会社で働く方は、障がいの有無に関わらずフラットな関係なんですよね。人事制度は障がいの有無に関係なく評価される仕組みですので、活躍する方が増えていくと、障がいのある方が障がいの無い方の面接官になることも起こってきます。これが対等なんですよ。こういう状況になることが私たちの夢でもあり、実現したいとこなんです。
話は変わるのですが、実は私たちは会社とは別法人をもう一つ作りました。保護世帯にある方で、働きたい方の世帯分離をしやすい状況を作ろうと思っております。世帯が保護世帯だと家が借りれないんですよ。親が保証人になれないので。また、児童養護施設の方や、B型で収入がある方も家を借りることが困難になります。賃貸契約はハードルが高くてできない方が多いですが、それを可能にするモデルを弊社と不動産会社、訪問看護・ヘルパーを繋ぐ会社と一緒に立ち上げました。「私たちが借りて、貸してあげる」というもので、しっかりと制度として運用することが出来るようになりました。
──展望ですね、すばらしいと思います。ありがとうございます。
コラムを読んでくれている方へのメッセージ──
──コラムを見て頂いてる方へのメッセージ等ありますか?
メッセージがいっぱいあって選べないな。
一つだけ選ぶとしたら「チャンスは必ずある」ですね。
そのチャンスを僕らが作るから、付いてきて!一緒に行こうぜ!というメッセージですね。「一緒に行こうよ、チャンスは作るから、のってくれ」と。
──良い言葉ですね。
家住社長のお話しはいかがだったでしょうか。事業そのものの展望だけでなく、関わる人の幸せを考えた経営だと、私見ですが感じました。福祉に関わる人であれば、興味を引くお話だったと思います。
すたぁりっとのホームページは以下から
https://starlit-group.net
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