自称・プロの社会人戦士(40代)を振り返る~福祉番組で障害者ヘイトの投書
暮らしペンネーム・必殺仕事人(40代)
「障害者は私たちプロの社会人戦士から見たら目障りかつ邪魔以外何物でもありません。お願いですから障害者はこの世からすべて消えてください」
これはNHKの「ハートネットTV(2017年7月26日放送回)」にて読み上げられた投書です。もう2年半前の話になるのですが、番組のスクリーンショットがたまに掘り起こされて不定期的に話題がぶり返す奇妙な生命力を持ったワンシーンとなっています。
相模原障害者殺傷事件についてもう一度考えるというテーマのもと進んでいた番組の中で飛び出した、社会人戦士と名乗る40代からの魂の叫び。後で画像だけ見ても「40代にもなってこれか」と一笑に付して終わりそうなものですが、リアルタイムの生放送中では怖気を感じた人も多かったことでしょう。必殺仕事人(40代)さんだけが植松被告に迎合する投書を出して読み上げられて訳でもないので、当事者が「まだこんな思想の奴らがウヨウヨと…」と不安がるのも無理からぬことです。
生産性と迷惑を憂う社会人戦士
社会人戦士ほどのインパクトはありませんが、番組内では障害者否定という意味ではよく似た投書がいくつか取り上げられていました。ふざけた名乗りが無い分生々しさが増しており、当事者や関係者の不安を煽る内容となっております。
「健常者でも生きるのが精一杯なのに、生産性のない障害者の面倒など見られるか!そんな余裕など国にはない!」
「職場で『まぁ親兄妹もホッとしただろ』と言っている同僚がいた。障害者就労で働いている自分は厄介がられていると自覚させられた」
これにスタジオでは「どうしてここまで言えるのか。逆に可哀想だ」「日頃抑えている差別感情を爆発させている」と反応が出ます。特に「生産性」という単語については「稼ぐとか産むとかだけが指標というのは違う気がする。」「精神的な生産性、例えば一緒にいると安心するとかはある。寧ろ本当の情とは生産性と関係ないフィールドで芽生えるものだ」といい反応でした。
番組への感想も様々で、斜に構えた所では「さすがに露骨すぎる。何かあるな…?番組進行上の“ツカミ”に使うためのサクラだろう!」というものもありました。番組を組むまでの工程は分からないのでその辺りは何とも言えません。
それはそいつ個人の問題だろう
自称社会人戦士のようなことを考えることだけならば、目につく場所で吐き出しさえしなければ大したことはありません。一瞬でも差別的思考が脳裏を横切ることは誰にでもあり得ますし、他人の考えを縛り付けようとするのはナンセンスです。ただその差別感情が、一時の防衛本能によるものか一生モノの信念によるものかでは大違いなのですが。
障害者差別を一生モノにした中で「だって障害者に酷い目に遭わされたんだもん!」という人は(実数は分かりませんが)結構見かけます。J-CASTニュースのコメント欄では「娘は知的障害者に石を投げつけられてから障害者差別に目覚めた!優しい子だったのに植松には賛同している!」というものがありました。別の人から「それは石を投げた奴ひとりが悪いのであって知的障害者全員が悪いわけではない。そう気づかせるのが親であるお前の役目だろうが」とフェイタルな返しを頂戴したようですが。
個人個人の問題としてもなお水掛け論で食い下がられることは十分あり得ます。「反社会勢力でも個人がどうと言えるのか!」「過激思想家でも個人がどうと言えるのか!」といった具合にです。このように信念の矯正というのは非常に難しく人手も時間も要しますので、結局は黙って離れるほかないのが現実でしょう。
極端な結論と言えるのか
当時飛び出した過激かつ極端な投書は「誰もが普段隠している本音」として取り扱われました。あのレベルでなくとも違った形で考えている可能性はゼロではないでしょう。ただそれを日常的に抑え、誰も見ていない所やごく小さな内輪でうまく処理して暮らしています。例の社会人戦士とまではいかずとも、ああいった本能は大なり小なり抱えているものです。
未知への差別感情は中途半端な関わりだと強化される危険すらあります。差別への本能に抗い、ダブルスタンダードも避けるのは容易ではありません。その容易ならざる挑戦への一歩として、「ただそこに居るだけでいい」の原則を借りるのはどうでしょう。
意義や目的や役割など関係なく、ただ生きていることが当然ということです。そこには「認めてやる」という上から目線でなく、「お互い様」の感情に立脚していなくてはならないでしょう。そして、どうしても合わない人や危険すぎる人とは距離を取っていいという保障も忘れてはなりません。理不尽な攻撃や犯罪には毅然とNOを突き付ける訳ですが、両立は可能です。
「限度はあるがお互い様」の精神が今のところ内心の偏見や差別本能に対する最適解になるのではないかと思います。
参考サイト
障害者は“不幸”? 差別や偏見にどう向き合う - 記事|NHKハートネット
https://www.nhk.or.jp
「障がい者はこの世から全て消えて」 NHKで紹介された意見に「辛辣すぎる」の声:J-CASTニュース
https://www.j-cast.com
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