障害者は月7万円得しているという「インセル的思考」

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まるで、腹に巻いたオモチャの変身ベルトを鳴らしているかのように、アンチ障害者が蒸け上がっていることがネット言論の世界では往々にしてあります。そんな彼/彼女らの間で信じられているのが、「障害者は月7万得している」という風説です。

どうやら障害年金のことを指しているようなのですが、7万という数字の出どころ(おおかた5万~9万なので間をとったのでしょうけれども)は分かりませんし、そもそも障害者手帳があれば全員に降りるほど甘くない制度であることは障害者の間では常識でしょう。

嫌いな層や属性の人間が不正に得をしているという幻想は、言ってしまえば「インセル的思考」です。これは、「奴らは日本の生活保護を勝手に攫って行く」と喧伝する在日ヘイトや、「女性は生理用品や化粧品で常にお金がかかるが、オスどもにはそれがない!」と泣き喚くミサンドリストにも当てはまる思考です。インセル的思考が何なのかと言いますと、概ね下記の通りです。

「筆者もしばらく理解できなかったのだが、ようするにこういうことではないかと思う。
世の中の女性は軽薄で愚かなので、金や権力のあるイケメンに惹かれるばかりで、自分のような風采の上がらない、社会的地位もない男は相手にされない(に違いない)。自分に魅力がないのは遺伝子の問題で、自分に責任はない。
そしてセックスは基本的人権であって、それを阻む女性や、女性の権利を声高に主張するフェミニズムの横行はインセルにとって深刻な人権侵害だ。そもそもこの社会は、チャドやステイシーに有利なようにルールがねじ曲げられていて、インセルに勝ち目はない。インセルを抑圧する社会を打破するために、インセル革命が必要なのだ、と……」

(八田真行さんが現代メディアへ寄稿した記事より引用)

インセルの語源は「不本意な禁欲」を意味するInvoluntary Celibateを略したものです。すなわち、不本意に抑えつけられているという被害者意識で成り立っています。過去に何度か話しましたが、被害者意識は攻撃性に直結しており、自ら傷つけてやろうとするよりも自分が先に被害を受けたと信じるほうが“加害者”としては多数派です。滑稽なことに、アンチ障害者も在日ヘイトもミサンドリストも、身勝手で気色悪いと思っているであろう存在と同じ考え方をしていることになります。

「筆者もしばらく理解できなかったのだが、ようするにこういうことではないかと思う。
世の中の障害者は軽薄で愚かなので、福祉や公的制度を独占するばかりで、自分のような誇りはあっても社会的地位のない健常者は相手にされない(に違いない)。自分が保護されないのは可哀想ランキングの問題で、自分に責任はない。
そして諸々の基本的人権を阻む障害者や、障害者の権利を声高に主張する多様性の横行は健常者にとって深刻な人権侵害だ。そもそもこの社会は、障害者に有利なようにルールがねじ曲げられていて、健常者に勝ち目はない。健常者を抑圧する社会を打破するために、健常者革命が必要なのだ、と……」

しかしこの思考、障害者→健常者や、精神障害者→身体障害者といった方向にも働きかねないので注意が必要です。そもそも、誰もが陥りかねない思考であって、ある意味そこに特別扱いは存在しません。インセル的思考の兆しは「被害者意識」からです。疾患や障害特性からくるものであっても、そうでなければ尚更、自分の被害者意識に疑ってかかるのが自意識の健全性を保つ秘訣と言えるでしょう。

参考サイト

八田さんの原文
https://gendai.media


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遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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